広大地評価は2018年に廃止|今の「地積規模の大きな宅地の評価」と規模格差補正率

相続税_広大地_評価

広大地評価は、平成29年12月31日をもって廃止されました。今は「地積規模の大きな宅地の評価」という別の制度に置き換わっています。

どちらが使われるかは、亡くなった日で決まります。平成30年1月1日以後の相続なら、広大地評価は使えません。

新しい制度は、面積の基準がはっきりしました。三大都市圏なら500平方メートル以上、それ以外の地域なら1,000平方メートル以上です。

計算に使うのは規模格差補正率という数字で、路線価に掛けて評価額を下げます。国税庁が示している算式で機械的に出せます。

注意したいのは、同じ土地でも新しい制度のほうが評価額は高く出ることです。

この記事の例(路線価20万円・1000平方メートル)では、広大地評価なら1億1,000万円だったものが1億5,600万円になります。

どちらの制度が使われるかの判定、面積と地区の要件、対象から外れる4つ、規模格差補正率の計算、広大地評価との差までを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 広大地評価は平成29年12月31日で廃止。平成30年1月1日以後の相続は「地積規模の大きな宅地の評価」
  • 面積の基準は三大都市圏500平方メートル以上/それ以外1,000平方メートル以上。市街化調整区域・工業専用地域・容積率400%以上・大規模工場用地は対象外
  • 新制度のほうが評価額は高く出る。この記事の例で4,600万円、相続税で1,060万円の差
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結論|広大地評価は2018年に廃止されている

広大地評価という制度は、平成29年12月31日をもって廃止されました。今も名前は残っていますが、使えるのは過去の相続だけです。

広大地評価に代わって新設されたのが「地積規模の大きな宅地の評価」です。平成30年1月1日以後に相続や遺贈、贈与で取得した土地に適用されます。

判定はシンプルです。亡くなった日がいつかを見るだけで、どちらの制度かが決まります。

この章では、どちらの制度が使われるかの判定、何が変わったのか、今から広大地評価を使える人がいるのかを見ていきます。

どちらの制度が使われるかの判定

基準になるのは、亡くなった日です。土地を買った日でも、申告する日でもありません。

亡くなった日(贈与なら取得した日) 使う制度 補正率
平成29年12月31日まで 広大地の評価(廃止済み) 0.6 − 0.05 ×(地積÷1,000平方メートル)
平成30年1月1日から 地積規模の大きな宅地の評価 規模格差補正率(A×B+C)÷A×0.8

表の見方:黄色の行が現在の制度です。上の行は平成29年12月31日までに亡くなった場合で、今から新たに使う場面はほとんどありません。

重要ポイント:平成29年以前の相続は、更正の請求の期限も過ぎています。申告期限から5年を数えると、平成29年12月に亡くなった場合でも令和5年には期限が切れています。

参照元:国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

何が変わったのか

広大地評価は、要件が言葉で書かれていました。「その地域における標準的な宅地の地積に比べて著しく地積が広大」といった定め方です。

この書き方だと、適用できるかどうかで税務署と見解が分かれます。実際に争いが多く、審判所や裁判まで進む事例がありました。

今の制度では、面積と地区と用途地域で機械的に判定します。三大都市圏で500平方メートル以上か、それ以外で1,000平方メートル以上か。地図と登記簿で確認できる基準になりました。

その代わり、減額の幅は小さくなりました。判定の争いが減った分、下げられる金額も抑えられた形です。

広大地評価と今の制度の性格の違い

  • 【旧・広大地の評価】要件が定性的で判定が難しい。認められれば減額は大きい
  • 【新・地積規模の大きな宅地の評価】面積と地区で機械的に判定できる。減額は小さい
  • 【共通】マンション適地や大規模工場用地は対象外という考え方は引き継がれている

重要ポイント:判定はしやすくなりましたが、下がる金額は小さくなりました。広大地評価の記憶で減額幅を見積もると、実際とずれます。

参照元:国税庁 「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました

今から広大地評価を使える人はいるのか

結論から言うと、ほとんどいません。平成29年12月31日までに亡くなった方の相続に限られるためです。

過去の申告を見直して取り戻す道は更正の請求ですが、期限は法定申告期限から5年です。平成29年12月に亡くなった場合の申告期限は平成30年10月ごろで、そこから5年は令和5年に切れています。

つまり「広大地評価で還付を受けられる」という情報は、今の時点ではほぼ実行できません。古い記事を読んで期待すると空振りになります。

今できるのは、平成30年1月1日以後の相続について地積規模の大きな宅地の評価を使えていたかを確認することです。こちらなら5年以内であれば取り戻せます。

重要ポイント:「広大地評価の還付」を今から狙うことはできません。確認すべきは、平成30年以後の相続で新制度を適用し忘れていないかです。

納めすぎた相続税を取り戻す手続きは、下記の記事で解説しています。

今の制度の面積基準|三大都市圏は500平方メートルから

地積規模の大きな宅地の評価が使えるかどうかは、まず面積で決まります。三大都市圏かそれ以外かで基準が変わります。

三大都市圏なら500平方メートル以上、それ以外の地域なら1,000平方メートル以上です。倍の開きがあります。

三大都市圏の範囲は法律で決まっていて、首都圏・近畿圏・中部圏のそれぞれで指定された区域を指します。

この章では、面積の基準、三大都市圏の範囲、地積をどう測るかを見ていきます。

面積の基準と地域の違い

同じ広さの土地でも、場所によって対象になるかどうかが変わります。700平方メートルの土地は三大都市圏なら対象、それ以外では対象外です。

地域 面積の基準 この記事の例(1000平方メートル)
三大都市圏 500平方メートル以上 対象になる
三大都市圏以外 1,000平方メートル以上 対象になる

表の見方:この記事の例は1000平方メートルなので、どちらの地域でも対象になります。境目になるのは500平方メートルから1,000平方メートルの間です。

地積 三大都市圏の補正率 三大都市圏以外の補正率
500平方メートル 0.80 対象外
700平方メートル 0.78 対象外
900平方メートル 0.78 対象外
1000平方メートル 0.78 0.80
1500平方メートル 0.76 0.77

表の見方:1,000平方メートル未満の行を見ると、三大都市圏以外は「対象外」になっています。同じ面積でも地域で結論が分かれる帯です。

重要ポイント:500平方メートルから1,000平方メートルの土地は、地域の判定が結論を左右します。ここを取り違えると、使えるはずの減額を落とすか、使えない減額を申告することになります。

計算ロジック:補正率は国税庁 No.4609 の算式(A×B+C)÷A×0.8 で計算しました。Aは地積、BとCは地域と地積の区分ごとに決まっている数値です。小数点以下第2位未満は切り捨てます。

参照元:国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

三大都市圏の範囲

三大都市圏という言葉は日常語と違い、法律で指定された区域を指します。国税庁は3つの法律を挙げています。

三大都市圏の定義(国税庁 No.4609)

  • 【首都圏】首都圏整備法2条3項の既成市街地または同条4項の近郊整備地帯
  • 【近畿圏】近畿圏整備法2条3項の既成都市区域または同条4項の近郊整備区域
  • 【中部圏】中部圏開発整備法2条3項の都市整備区域

都道府県まるごとではありません。同じ県でも、市町村によって入るところと入らないところがあります。

国税庁が市町村ごとの一覧を公表しているので、自分の土地がある市町村名で確認してください。感覚で判断すると外します。

重要ポイント:東京都・大阪府・愛知県なら全部が三大都市圏、ではありません。区域が指定されているので、市町村名で一覧に当てて確かめる必要があります。

一覧では、市町村の全域が入るものと一部だけが入るものが分かれています。「一部」と書かれている市町村なら、土地の所在地がその区域に入っているかまで確認が要ります。

市町村の合併で名称が変わっている場合もあります。一覧に載っている名前と現在の住所表記が一致しないときは、合併前の旧市町村名で探してみてください。

地積はどう測るか

判定に使う地積は、実際の面積です。登記簿の面積とは限りません。

登記簿の数字が実測とずれていることは珍しくありません。測量して実際の面積が大きければ、その数字で判定します。

逆に登記簿より狭かった場合は、狭いほうで判定することになります。基準の500平方メートルや1,000平方メートルをまたぐ土地では、測量の有無が結論を変えます。

複数の筆にまたがっている場合は、評価単位という考え方でまとめてから面積を出します。筆ごとに分けて判定するわけではありません。

重要ポイント:基準の面積に近い土地は、測量する価値があります。数平方メートルの差で対象になるかどうかが変わる場合があるためです。

土地の評価額の出し方の全体像は、下記の記事で解説しています。

対象から外れる4つ|調整区域と容積率に注意

面積の基準を満たしていても、4つのどれかに当てはまると対象から外れます。国税庁が明示している除外の条件です。

ここで誤解が多いのが市街化調整区域です。広大地評価では開発しやすい土地なら適用できるという説明がありましたが、現行制度では原則として対象外になります。

容積率にも基準があります。指定容積率が400%以上(東京都の特別区は300%以上)の地域は外れます。

この章では、4つの除外条件、調整区域の例外、容積率の調べ方を見ていきます。

4つの除外条件

国税庁 No.4609 が挙げている4つを並べます。どれか1つに当てはまれば、面積の基準を満たしていても使えません。

対象から外れるもの 中身 例外
市街化調整区域にある宅地 市街化を抑える区域なので開発が制限される 都市計画法34条10号・11号により宅地分譲の開発行為ができる区域は対象になる
工業専用地域にある宅地 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域 なし
指定容積率400%以上の地域にある宅地 高い建物を建てられる地域は分割して分譲する土地ではない 東京都の特別区は300%以上で外れる
大規模工場用地 財産評価基本通達22-2に定めるもの なし

表の見方:赤い1行目だけに例外があります。下の3つは例外がなく、当てはまれば一律で対象外です。一番右の列を見落とすと判定を誤ります。

重要ポイント:市街化調整区域は原則として対象外です。広大地評価の説明を引きずって「調整区域でも開発しやすければ使える」と書かれた情報がありますが、現行制度には当てはまりません。

参照元:国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

市街化調整区域の例外

調整区域のすべてが対象外になるわけではありません。条文には括弧書きで例外が置かれています。

除かれるのは「都市計画法34条10号または11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域」です。この区域にある宅地は、調整区域でも対象になります。

34条10号は地区計画などに適合する開発、11号は市街化区域に隣接し一定の条件を満たす区域での開発を指します。どちらも条例で区域が指定されます。

つまり自分の土地がその区域に入っているかどうかは、市区町村の都市計画の担当課で確認する必要があります。登記簿や路線価図では分かりません。

重要ポイント:調整区域なら自治体に問い合わせてから判定してください。条例で指定された区域かどうかは窓口で確認できます。確認せずに諦めると、使えるはずの減額を落とします。

容積率と用途地域の調べ方

指定容積率と用途地域は、市区町村の都市計画図で確認します。多くの自治体がウェブで公開しています。

指定容積率とは、都市計画で定められた容積率のことです。前面道路の幅で決まる基準容積率とは別の数字なので、都市計画図に書かれている数字を見てください。

1つの土地が容積率の違う2つの地域にまたがることがあります。この場合の判定方法は国税庁が質疑応答事例で示しており、加重平均ではなく所定の考え方で決めます。

用途地域については、工業専用地域だけが除外されます。工業地域や準工業地域は対象になるので、名前が似ていても混同しないでください。都市計画図では色分けされているため、凡例と照らし合わせて確認できます。

判定のために集める資料

  • 【都市計画図】用途地域と指定容積率。市区町村のウェブサイトか都市計画課で入手できる
  • 【路線価図】地区区分(普通住宅地区かどうか)と路線価。国税庁のサイトで確認できる
  • 【登記事項証明書・公図】地積と筆の形。法務局で取得する
  • 【測量図】実際の地積。基準の面積に近い土地では必要になる

重要ポイント:判定に必要な資料は4種類で、いずれも自分で取り寄せられます。揃えてから税理士に相談すると、判定が早く進みます。

路線価図の調べ方と見方は、下記の記事で解説しています。

対象になる地区|路線価図の記号で2つだけ

面積と除外条件をクリアしても、もう1つ確認することがあります。路線価図の地区区分です。

対象になるのは普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区の2つだけです。路線価図で路線価の数字を囲んでいる記号の形で分かります。

倍率地域にある土地は地区区分がないので、面積と除外条件を満たしていれば対象になります。

この章では、対象になる地区、路線価図での読み方、倍率地域の場合の評価方法を見ていきます。

対象になるのは2つの地区

路線価図では、土地の地区区分が7種類に分かれています。このうち対象になるのは2つです。

地区区分(路線価図の記号) 対象になるか
普通住宅地区 対象になる
普通商業・併用住宅地区 対象になる
高度商業地区 対象外
繁華街地区 対象外
中小工場地区 対象外
大工場地区 対象外
ビル街地区 対象外

表の見方:黄色の2行だけが対象です。住宅地として分譲する土地が想定されているので、商業地や工場地は外れます。

重要ポイント:広い土地でも、商業地や工場地なら使えません。面積だけで判断せず、路線価図の記号を必ず確認してください。

参照元:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

路線価図での読み方

路線価図では、路線価の数字を囲む記号で地区区分を表します。無印なら普通住宅地区です。

普通商業・併用住宅地区は、数字が楕円で囲まれています。丸や四角、ひし形は別の地区なので、囲みの形を見分けてください。

1つの土地が複数の路線に面していて、地区区分が異なる場合があります。この場合は正面路線の地区区分で判定します。

正面路線は、奥行価格補正率を掛けた後の1平方メートルあたりの価額が最も高い路線です。路線価が高いほうとは限らないので、計算して決めます。

重要ポイント:複数の路線に面している土地は、正面路線の判定から始めます。地区区分だけでなく、この後の計算の基礎になる数字も正面路線から取ります。

倍率地域にある場合

路線価が設定されていない地域は倍率地域です。ここには地区区分がないため、面積と除外条件を満たせば対象になります。

評価の方法は少し複雑です。国税庁は2つの価額を計算して、低いほうを採ると定めています。

1つ目は、固定資産税評価額に倍率を掛けた通常の計算です。2つ目は、その土地が標準的な間口と奥行きを持つとした場合の1平方メートルあたりの価額に、各種の補正率と規模格差補正率を掛けて地積を掛けた価額です。

2つ目の計算では、普通住宅地区の奥行価格補正率を使います。倍率地域でも、計算の中では路線価地域の補正率を借りてくる形です。

重要ポイント:倍率地域では2つ計算して低いほうを選びます。片方だけ計算して終わらせると、下げられる余地を落とす可能性があります。

市街地農地などについても同じ考え方が使われます。その農地が宅地だとした場合に対象になるなら、1平方メートルあたりの価額にこの定めを適用して評価します。

土地の評価額を下げられる余地は、下記の記事で解説しています。

貸している土地に使えるか

アパートの敷地や人に貸している土地でも、面積と地区の要件を満たせば使えます。自分で使っている土地に限られる制度ではありません。

順番は、先に地積規模の大きな宅地の評価で1平方メートルあたりの価額を下げ、そのうえで貸家建付地や貸宅地としての減額を重ねます。2つは別の補正なので、片方だけで終わらせると下げ幅を落とします。

貸家建付地は、自用地としての価額から借地権割合と借家権割合と賃貸割合を掛けた分を差し引く計算です。この「自用地としての価額」を出す段階で規模格差補正率が効きます。

貸宅地の場合も同じです。借地権割合を差し引く前の価額に規模格差補正率を反映させます。広い土地を貸しているなら、両方の確認が要ります。

重要ポイント:貸していても規模格差補正率は使えます。貸家建付地の計算だけで終わらせている申告書は、補正率の欄が空欄のままになっていることがあります。

貸家と貸家建付地の計算方法は、下記の記事で解説しています。

借地権そのものの評価方法は、下記の記事で解説しています。

規模格差補正率の計算|算式とB・Cの数値

対象になると分かったら、規模格差補正率を計算します。この数字を路線価に掛けて評価額を下げます。

算式は(A×B+C)÷A×0.8です。Aは地積、BとCは地域と地積の区分ごとに決まっている数値で、国税庁が表で示しています。

区分は三大都市圏が4つ、それ以外が3つです。地積が大きくなるほどBは小さくCは大きくなる作りで、結果として補正率は緩やかに下がります。

この章では、算式とB・Cの表、実際の計算、評価額への反映のしかたを見ていきます。

算式とB・Cの数値

規模格差補正率は次の算式で求めます。規模格差補正率=(A×B+C)÷A×0.8。小数点以下第2位未満は切り捨てます。

三大都市圏に所在する宅地のB・Cは次のとおりです。普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区で共通の数値になります。

地積(平方メートル) B C
500以上1,000未満 0.95 25
1,000以上3,000未満 0.90 75
3,000以上5,000未満 0.85 225
5,000以上 0.80 475

表の見方:黄色の行がこの記事の例が当てはまる区分です。地積が大きいほどBは小さくCは大きくなり、結果として補正率は下がります。

三大都市圏以外は500平方メートル台の区分がなく、3区分になります。面積の基準が1,000平方メートル以上なので、それより狭い区分そのものが存在しないためです。

地積(平方メートル) B C
1,000以上3,000未満 0.90 100
3,000以上5,000未満 0.85 250
5,000以上 0.80 500

表の見方:1,000平方メートル未満の行がありません。三大都市圏以外では1,000平方メートル未満の土地が対象にならないためです。

重要ポイント:BとCは地積の区分ごとに変わります。境目をまたぐと数値が変わるので、自分の地積がどの区分に入るかを先に確認してください。

参照元:国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

実際に計算してみる

この記事の例で計算します。三大都市圏の普通住宅地区にある1,000平方メートルの土地です。

項目 数値 説明
A(地積) 1,000平方メートル 実際の面積
B 0.90 三大都市圏・1,000以上3,000未満の区分
C 75 同上
(A×B+C) 975 1,000×0.90+75
÷A 0.975 地積で割る
×0.8(切捨て後) 0.78 規模格差補正率

表の見方:上から順に当てはめていくと、黄色の行の0.78が出ます。これが規模格差補正率です。

重要ポイント:最後の切り捨てを忘れないでください。計算の途中では0.7800という数字が出ますが、小数点以下第2位未満を切り捨てて0.78として使います。

計算ロジック:(1,000×0.90+75)÷1,000×0.8 を計算しています。BとCは国税庁 No.4609 の表から、三大都市圏・1,000平方メートル以上3,000平方メートル未満の区分を取りました。根拠は財産評価基本通達20-2です。

評価額への反映

求めた補正率を評価額の計算に組み込みます。路線価地域では、路線価に各種の画地補正率と規模格差補正率を掛け、そこに地積を掛けた金額が評価額になります。

画地補正率とは、奥行価格補正率や不整形地補正率のことです。規模格差補正率はそれらと別に掛けます。置き換えるのではありません。

この記事の例では、話を分かりやすくするため画地補正率を1.00として計算しています。実際には土地の形に応じた補正が先に入ります。

項目 金額
路線価×地積(補正前) 20万円×1,000平方メートル=2億円
規模格差補正率 0.78
評価額 1億5,600万円
減額される金額 4,400万円(22.0%)

表の見方:補正前の2億円が1億5,600万円になります。下がるのは4,400万円で、割合にすると22.0%です。

重要ポイント:下がるのは2割程度です。「最大65%下がる」といった説明を見かけますが、それは小規模宅地等の特例など他の制度と合わせた数字です。

相続税の総額で見ると、子2人が相続する場合で3,340万円が2,020万円になり、1,320万円減ります。基礎控除4,200万円を引いた後の金額に税率を当てた結果です。

土地の評価で差が出る項目は、下記の記事で解説しています。

旧制度と比べると評価額は上がる|地積が大きいほど差が開く

制度が変わって、同じ土地でも評価額は高く出るようになりました。広大地評価より新しいほうが有利だと思って読むと逆になります。

理由は補正率の作り方です。旧制度の広大地補正率は地積が大きくなるほど大きく下がる設計でしたが、新制度の規模格差補正率は下限が決められています。

この差は地積が大きいほど開きます。この記事の例(1,000平方メートル)でも4,600万円の違いが出て、相続税にすると1,060万円の差になります。

この章では、2つの補正率の比べ方、地積別の金額差、この事実をどう受け止めるかを見ていきます。

2つの補正率の違い

旧制度の広大地補正率は、0.6−0.05×(地積÷1,000平方メートル)という式でした。地積が1,000平方メートルなら0.55になります。

広大地評価に代わった規模格差補正率は、同じ地積で0.78です。0.23の開きがそのまま評価額の差になり、路線価が高い土地ほど金額としては大きく響きます。

旧制度は地積が大きくなるほど補正率が下がり続ける式で、5,000平方メートルなら0.35まで下がりました。上限がなかったため、広い土地ほど減額が効く設計です。

今の制度は最後に0.8を掛ける形なので、どれだけ広くても0.7台で止まります。ここが2つの制度の最も大きな違いになります。

重要ポイント:広い土地ほど、制度変更の影響が大きくなります。旧制度なら半分以下になった土地が、新制度では7割程度にしか下がりません。

地積別の金額差

路線価20万円の土地について、地積を変えて比べました。三大都市圏の普通住宅地区という前提です。

地積 今の補正率 広大地の補正率 今の評価額 広大地の評価額 差
500平方メートル 0.80 0.57 8,000万円 5,750万円 +2,250万円
750平方メートル 0.78 0.56 1億1,700万円 8,437.5万円 +3,262.5万円
1,000平方メートル 0.78 0.55 1億5,600万円 1億1,000万円 +4,600万円
1,500平方メートル 0.76 0.52 2億2,800万円 1億5,750万円 +7,050万円
2,000平方メートル 0.75 0.50 3億円 2億円 +1億円
3,000平方メートル 0.74 0.45 4億4,400万円 2億7,000万円 +1億7,400万円
5,000平方メートル 0.71 0.35 7億1,000万円 3億5,000万円 +3億6,000万円

表の見方:黄色がこの記事の例、赤が3,000平方メートル以上です。一番右の列が今の制度で増えた評価額で、地積が大きいほど開いていきます。

重要ポイント:5,000平方メートルでは3億6,000万円の差になります。旧制度の実績や古い記事の数字を見て見積もると、大きく外すことになります。

計算ロジック:新は規模格差補正率(A×B+C)÷A×0.8、旧は広大地補正率 0.6−0.05×(地積÷1,000平方メートル)で計算しました。どちらも路線価20万円に補正率と地積を掛けています。画地補正率は1.00としました。

この事実をどう受け止めるか

評価額が上がったこと自体は変えられません。できるのは、使える減額を1つも取りこぼさないことです。新制度では、その積み重ねの重みが増しました。

規模格差補正率は、奥行きや形による補正とは別に掛けられます。形の悪い土地なら、補正を重ねて下げられます。間口が狭い、奥行きが長い、不整形といった事情はすべて別枠です。

小規模宅地等の特例も別の制度なので、要件を満たせば重ねて使えます。評価額を下げてから、その金額にさらに特例の減額割合を掛ける形です。

広い土地を持っている場合は、分筆や生前の対策も選択肢になります。ただし分け方によっては評価単位が変わり、対象から外れてしまうこともあります。

評価額を下げるために確認すること

  • 【1】規模格差補正率を適用できているか(面積・地区・除外条件)
  • 【2】奥行き・間口・不整形などの画地補正をすべて拾っているか
  • 【3】小規模宅地等の特例を重ねられるか
  • 【4】評価単位の分け方が最も有利になっているか

重要ポイント:制度が不利になった分、他の補正を取りこぼす余裕がなくなりました。土地の形や道路との接し方を1つずつ確認してください。

分筆で評価額がどこまで下がるかは、下記の記事で解説しています。

土地を多く持っている場合の対策の考え方は、下記の記事で解説しています。

判定でつまずきやすい点|共有・複数筆・地域またぎ

面積と地区と除外条件が分かっても、実際の土地は教科書どおりの形をしていません。共有だったり、複数の筆に分かれていたり、地域をまたいでいたりします。

こうしたケースの多くは、国税庁が質疑応答事例で判定方法を示しています。自分で判断せず、示された考え方に当てはめるのが確実です。

特に間違えやすいのが共有の土地です。持分で割った面積で判定すると、対象になる土地を外してしまいます。

この章では、つまずきやすい点の一覧、共有と複数筆の扱い、国税庁のチェックシートの使い方を見ていきます。

つまずきやすい6つの点

実務で判断が分かれやすい場面を並べました。どれも国税庁が質疑応答事例として考え方を公表しているものです。自分の土地が当てはまるかを確認してください。

つまずく点 何が問題になるか 判定のしかた
共有の土地 持分で割った面積で判定するのか 土地全体の地積で判定する。持分で按分しない
複数の筆にまたがる 筆ごとに判定するのか 評価単位でまとめてから地積を出す
用途地域が2つにまたがる 工業専用地域が一部にかかっている 国税庁の質疑応答事例で判定方法が示されている
容積率が違う地域にまたがる どちらの容積率で判定するか 同じく質疑応答事例による
正面路線が2つの地区にまたがる どの地区区分で判定するか 正面路線の地区区分で判定する
市街地農地・山林・原野 宅地でないものは対象外か 宅地だとした場合に対象になるなら適用できる

表の見方:黄色の行が最も間違えやすい共有の土地です。下の5つは、複数の区分や地域にまたがる場合の判定になります。一番右の列が結論です。

重要ポイント:共有の土地は全体の地積で判定します。2人で共有している1,000平方メートルの土地を500平方メートルずつと考えると、三大都市圏以外では対象外という誤った結論になります。

参照元:国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

共有と複数筆の扱い

共有の土地は、持分に関係なく土地全体の地積で判定します。1,000平方メートルの土地を3人で共有していても、判定に使う面積は1,000平方メートルです。

評価額を計算した後で、自分の持分を掛けて申告する財産の額を出します。判定と按分の順番を逆にしないでください。

複数の筆にまたがる土地は、評価単位でまとめます。登記上の筆の区切りではなく、利用の状況が同じ一団の土地として扱える範囲が単位になります。

隣り合った2筆をそれぞれ600平方メートルずつ持っていて、一体で使っているなら1,200平方メートルで判定します。それぞれ別に判定すると、三大都市圏以外では対象から外れます。

判定を誤りやすい組み合わせ

  • 共有持分で按分してから判定した。全体の地積で判定するのが正しい
  • 筆ごとに判定した。一体で使っているなら評価単位でまとめる
  • 登記簿の地積で判定した。実際の面積が基準をまたぐ場合は測量が要る
  • 用途地域の一部が工業専用だからと諦めた。判定方法が質疑応答事例で示されている

重要ポイント:判定と按分は順番が決まっています。先に土地全体で判定し、評価額を出してから持分を掛けます。

国税庁のチェックシートを使う

国税庁は「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシートを公表しています。申告書に添付する様式として用意されているものです。

このシートは判定の手順そのものになっています。上から順に、面積・地区区分・用途地域・容積率・大規模工場用地の各項目を確認していく作りです。

自分で判定するときも、このシートに沿って埋めていくと漏れがありません。各項目でどの資料を見ればよいかも書かれています。

税理士に依頼する場合も、このシートの各項目を確認したかを聞くと判定の丁寧さが分かります。添付を求められる様式なので、扱った経験があれば必ず知っています。

シートには、各項目で「はい」「いいえ」のどちらに進むかが書かれています。1つでも除外に当たれば、そこで判定が終わる作りです。順に追えば、適用できない理由もはっきりします。

重要ポイント:チェックシートは国税庁のサイトで誰でも入手できます。相談する前に自分で埋めておくと、判定が早く進みます。埋められない項目があれば、その資料を先に取り寄せてください。

土地の評価で税理士によって差が出る項目は、下記の記事で解説しています。

共有している不動産の評価と持分の扱いは、下記の記事で解説しています。

適用し忘れていたときの取り戻し方|期限は5年

申告を済ませた後で、この制度を使えたと気づくことがあります。納めすぎた相続税は、更正の請求という手続きで取り戻せます。

期限は法定申告期限から5年以内です。相続開始から数えるのではなく、申告期限から数えます。

この制度は比較的新しく、広い土地を扱い慣れていない事務所では適用が抜けていることがあります。申告書を見れば確認できます。

この章では、見落としの確認方法、取り戻す手続きの流れ、戻ってくる金額の目安を見ていきます。

適用し忘れていないかの確認

申告書の控えを開いて、土地の評価明細書を見てください。「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」という様式です。

規模格差補正率を記入する欄があり、ここが空欄なら適用していません。地積が基準を超えているのに空欄なら、確認する価値があります。

確認する項目 見落としのサイン
評価明細書に規模格差補正率の欄があるか 空欄なら適用していない
土地の地積 三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外で1,000平方メートル以上なら対象の可能性
路線価図の地区区分 普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区か
用途地域と指定容積率 工業専用地域でなく、容積率400%未満か
共有や複数筆の扱い 持分で按分してから判定していないか
亡くなった日 平成30年1月1日以後か

表の見方:黄色の行から確認してください。空欄だった場合に、下の5項目を順に見ていくと適用できたかどうかが分かります。

重要ポイント:地積が基準を超えているのに補正率の欄が空欄なら要確認です。除外条件に当たって適用できなかった可能性もありますが、単純に見落としている場合もあります。

取り戻す手続きの流れ

更正の請求は、税務署に対して「納めた税額が多すぎたので直してほしい」と求める手続きです。請求書と、根拠となる資料を添えて提出します。

必要になるのは、評価をやり直した明細、都市計画図(用途地域と指定容積率が分かるもの)、路線価図、測量図や公図などです。

国税庁の適用要件チェックシートも添えると、判定の根拠がそろっていることを示せます。

提出してから税務署が内容を確認し、認められれば納めすぎた分が還付されます。請求から還付までは数か月かかるのが一般的です。

1〜2週間
資料をそろえる
申告書の控え、都市計画図、路線価図、公図を集めます。基準の面積に近い場合は測量図も用意します。

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2〜4週間
評価をやり直す
規模格差補正率を適用して評価額を計算し直します。画地補正も合わせて見直します。

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提出
更正の請求書を出す
請求書に明細と資料を添えて税務署へ提出します。法定申告期限から5年以内が期限です。

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数か月
審査と還付
税務署が内容を確認し、認められると還付されます。納めすぎた分に還付加算金が付きます。

重要ポイント:期限は法定申告期限から5年です。資料集めと評価のやり直しで1〜2か月かかるので、期限の直前に気づいた場合は急いでください。

参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続

戻ってくる金額の目安

この記事の例で考えます。路線価20万円・1,000平方メートルの土地を補正なしで申告していた場合です。

補正前の評価額は2億円、規模格差補正率を適用すると1億5,600万円になります。課税価格が4,400万円下がります。

相続税の総額で見ると、子2人が相続する場合で3,340万円が2,020万円です。1,320万円の差になります。

実際の金額は路線価と地積、相続人の数、他の財産の額によって変わります。ただし広い土地ほど効果は大きくなります。

重要ポイント:地積が大きいほど戻る金額も大きくなります。1,000平方メートルを超える土地を申告した記憶があるなら、評価明細書を確認する価値があります。

計算ロジック:補正前は路線価20万円×1,000平方メートル=2億円、補正後は規模格差補正率0.78を掛けて1億5,600万円です。相続税の総額は基礎控除4,200万円を引いて計算しました。

不動産の評価を見直して還付を受ける手順は、下記の記事で解説しています。

不動産を相続したときの税額の出し方は、下記の記事で解説しています。

小規模宅地等の特例と重ねられる|順番は評価が先

規模格差補正率で評価額を下げたら、そこに小規模宅地等の特例を重ねられます。別の制度なので、要件を満たせば両方使えます。

順番が決まっています。先に土地を評価し、その評価額に対して特例の減額割合を掛けます。逆にはできません。

ただし特例には限度面積があります。自宅の土地なら330平方メートル、貸している土地なら200平方メートルまでです。広い土地では、特例が効くのは一部だけになります。

この章では、重ねたときの金額、限度面積との関係、広い土地で特例をどう配分するかを見ていきます。

重ねるといくらになるか

この記事の例で、亡くなった方の自宅の敷地だったとして計算します。特定居住用宅地等として330平方メートルまで80%減額できる前提です。要件を満たす親族が取得したものとします。

段階 評価額 相続税の総額(子2人)
補正なし 2億円 3,340万円
規模格差補正率を適用 1億5,600万円 2,020万円
小規模宅地等の特例まで適用 1億1,482万円 1,056.3万円

表の見方:上から順に減額が重なります。補正前の2億円が、最終的に1億1,482万円まで下がります。相続税は3,340万円から1,056.3万円になります。

重要ポイント:特例が効くのは330平方メートルまでです。この例では1,000平方メートルのうち3分の1程度にしか掛かりません。広い土地ほど、特例の効果は相対的に小さくなります。

計算ロジック:規模格差補正率を適用した評価額1億5,600万円を地積1,000平方メートルで割り、1平方メートルあたりの価額を出します。これに限度面積330平方メートルと減額割合80%を掛けた4,118.4万円が減額される金額です。

参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

限度面積との関係

小規模宅地等の特例は、面積に上限があります。自宅の土地は330平方メートルまで80%減、貸している土地は200平方メートルまで50%減です。

地積規模の大きな宅地の評価には面積の上限がありません。土地全体に補正率が掛かります。ここが2つの制度の大きな違いです。

広い土地では、規模格差補正率のほうが金額としては大きく効きます。この記事の例でも、補正による減額が4,400万円、特例による減額が4,118.4万円です。

どちらか一方ではなく両方を使うのが前提です。片方だけで済ませると、下げられる金額を落とします。

重要ポイント:面積の上限があるのは特例だけです。規模格差補正率は土地全体に効くので、広い土地ほど補正の役割が大きくなります。

複数の土地があるときの配分

自宅の土地と貸している土地の両方があると、どちらに特例を使うかを選ぶことになります。限度面積を調整する計算が入るためです。

判断の基準は、1平方メートルあたりの減額される金額です。評価額が高い土地に、減額割合の大きい特例を当てるほうが有利になります。

地積規模の大きな宅地の評価を適用した土地は、1平方メートルあたりの価額がすでに下がっています。その分、特例を当てたときの減額も小さくなります。

つまり広い土地と狭い土地があるなら、狭くて路線価の高い土地に特例を当てたほうが有利になることがあります。両方のパターンで試算して比べてください。

重要ポイント:補正を適用した後の単価で比べてください。補正前の路線価で比べると、有利不利の判定を誤ります。

4つの類型と有利判定の考え方は、下記の記事で解説しています。

貸している土地に使う場合の要件は、下記の記事で解説しています。

広大地評価の相談は相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

広い土地がある相続では、税理士によって提示される評価額が変わります。判定の項目が多く、どこまで拾うかで結果が動くためです。

規模格差補正率を適用できるかどうかだけでなく、画地補正をどこまで見るか、特例をどちらの土地に当てるかでも差が出ます。報酬の違いより、評価額の違いのほうが金額としては大きくなります。

この章では、実務力の見分け方と依頼までの手順を説明します。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

地積規模の大きな宅地の評価は、平成30年に始まった比較的新しい制度です。広い土地を扱った経験がないと、適用そのものを見落とすことがあります。

広い土地の評価で経験が結果を分ける場面

  • 【適用の判定】面積・地区区分・用途地域・容積率・大規模工場用地を漏れなく確認できるか
  • 【調整区域の例外】都市計画法34条10号・11号の区域かを自治体に確認するか
  • 【共有と複数筆】持分で按分せず全体の地積で判定できるか
  • 【画地補正の上乗せ】奥行き・間口・不整形などの補正を規模格差補正率と別に拾えるか
  • 【特例の配分】補正後の単価で有利判定をしているか

金額で見ると差がはっきりします。この記事の例では、規模格差補正率を適用するかどうかで課税価格が2億円と1億5,600万円に分かれます。

相続税の総額では3,340万円と2,020万円になり、1,320万円の差が付きます。報酬の違いではなく、判定と計算で変わる金額です。

税理士を比較するときの3つの判定ポイント

見積りを見比べるとき、報酬額だけでは実務力は分かりません。次の3点を質問すると、広い土地を扱った経験の差がはっきり表に出ます。

判定ポイント1:適用要件チェックシートを使うか聞く国税庁が公表している様式です。使っていると答える事務所は、実際に適用した経験があります。

判定ポイント2:調整区域の確認方法を聞く自治体の都市計画課に問い合わせると答えるか。「調整区域だから対象外」で止まる事務所とは結果が変わります。

判定ポイント3:現地と資料の確認範囲を聞く都市計画図・公図・測量図をどこまで取り寄せるか。路線価図だけで済ませる事務所では画地補正を拾い切れません。

3点とも具体的に答えられる事務所のほうが、広い土地の評価の実務経験が豊富と判定できます。一般的な相続税の説明しか返ってこない場合は経験が浅い可能性があります。

相談しないまま進めるリスク

自分で計算して申告することもできますが、広い土地は確認する項目が多く、取りこぼしが起きやすい分野です。

1つの事務所だけ、あるいは自分だけで進めた場合に起きること

  • 規模格差補正率を適用し忘れる。この記事の例では課税価格が4,400万円違う
  • 調整区域だからと諦める。都市計画法34条10号・11号の区域なら対象になる
  • 共有持分で按分してから判定する。全体の地積で判定すれば対象になることがある
  • 筆ごとに判定する。一体で使っていれば評価単位でまとめられる
  • 画地補正を拾えない。規模格差補正率とは別に掛けられる

重要ポイント:これらはすべて、複数の事務所に見積りを取れば気づけるものです。提示された評価額そのものを見比べてください。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

複数の事務所へまとめて相談する手順です。広い土地がある相続は資料をそろえるのに時間がかかります。相続開始から7か月以内に依頼先を決めておくと余裕を持てます。

STEP1
相続の概要を整理する
亡くなった人の資産の内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無を整理します。土地については所在地と地積、亡くなった日を書き出しておきます。

⬇

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
「広い土地がある相続税申告」を希望内容として明記し、3〜5の事務所へ同時に打診します。土地の所在地・地積・用途地域を書き添えてください。財産の種類と相続人の人数はできるだけ正確に伝えます。フォームの記入は5分程度です。

⬇

STEP3
見積りと初回相談を受ける
提案内容、試算した相続税額、報酬額が記載された見積りが届きます。規模格差補正率を適用する前提か、画地補正をどこまで見込んでいるかを確認します。

⬇

STEP4
税理士を選定して正式に依頼する
提案内容の質、説明の丁寧さ、報酬の納得性で選びます。評価額の試算に差がある場合は、その理由を説明してもらってください。

重要ポイント:土地の地積と所在地を最初に伝えてください。伝えずに進めると、規模格差補正率を織り込まない見積りが届いて比較になりません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 広大地評価は今も使えますか。

使えません。平成29年12月31日をもって廃止されました。平成30年1月1日以後に相続や遺贈、贈与で取得した土地には「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されます。

平成29年以前の相続について更正の請求で取り戻す道も、法定申告期限から5年という期限をすでに過ぎています。今から広大地評価を新たに使う場面は実質的にありません。

Q2. 広大地評価と地積規模の大きな宅地の評価は何が違いますか。

広大地評価とは判定のしかたと減額の幅が違います。広大地評価は「著しく地積が広大」といった言葉の要件で、適用できるかどうかで争いが起きやすいものでした。

今の制度は三大都市圏500平方メートル以上、それ以外1,000平方メートル以上という面積の基準と、地区区分・用途地域・容積率で機械的に判定します。その代わり減額の幅は小さくなりました。

Q3. 規模格差補正率はどう計算しますか。

(A×B+C)÷A×0.8で求めます。Aは地積、BとCは地域と地積の区分ごとに国税庁が定めた数値です。小数点以下第2位未満は切り捨てます。

この記事の例(三大都市圏・1,000平方メートル)ではB=0.90、C=75なので、(1,000×0.90+75)÷1,000×0.8=0.78になります。

Q4. 市街化調整区域の土地は対象外ですか。

原則として対象外です。ただし例外があります。都市計画法34条10号または11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域は対象になります。

この区域かどうかは条例で指定されており、登記簿や路線価図では分かりません。市区町村の都市計画の担当課で確認してください。

Q5. 共有している土地はどう判定しますか。

土地全体の地積で判定します。持分で割った面積ではありません。1,000平方メートルの土地を2人で共有していても、判定に使うのは1,000平方メートルです。

評価額を計算した後で、自分の持分を掛けて申告する財産の額を出します。判定と按分の順番を逆にすると、対象になる土地を外してしまいます。

Q6. どれくらい評価額が下がりますか。

この記事の例では22.0%下がります。補正前2億円が1億5,600万円になり、4,400万円減る計算です。

「最大65%下がる」といった説明を見かけますが、それは小規模宅地等の特例など他の制度と合わせた数字です。規模格差補正率だけなら2割前後と考えてください。

Q7. 申告で使い忘れていた場合、取り戻せますか。

取り戻せます。更正の請求という手続きで、期限は法定申告期限から5年以内です。相続開始からではなく申告期限から数えます。

申告書の控えにある「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を開き、規模格差補正率の欄が空欄になっていないかを確認してください。地積が基準を超えているのに空欄なら、見直す価値があります。

まとめ|廃止された制度ではなく今の算式で計算する

広大地評価という名前で検索して辿り着いた場合、最初に確認すべきは亡くなった日です。平成30年1月1日以後なら、使うのは別の制度になります。

  • 広大地評価は平成29年12月31日で廃止。平成30年1月1日以後の相続は「地積規模の大きな宅地の評価」
  • 面積の基準は三大都市圏500平方メートル以上/それ以外1,000平方メートル以上。実際の面積で判定し、登記簿の地積とは限らない
  • 対象から外れるのは4つ。市街化調整区域・工業専用地域・指定容積率400%以上(東京都特別区は300%以上)・大規模工場用地
  • 調整区域には例外がある。都市計画法34条10号・11号により宅地分譲の開発行為ができる区域は対象
  • 対象になる地区は2つだけ。路線価地域では普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区。倍率地域は該当すれば対象
  • 規模格差補正率=(A×B+C)÷A×0.8(小数点以下第2位未満切捨て)。この記事の例では0.78
  • この記事の例で2億円が1億5,600万円(22.0%減)。相続税は3,340万円が2,020万円に
  • 今の制度のほうが評価額は高い。同じ土地で広大地評価なら1億1,000万円、差は4,600万円
  • 地積が大きいほど差が開く。5,000平方メートルでは3億6,000万円の違い
  • 共有は全体の地積で判定する。持分で按分してから判定しない
  • 複数の筆は評価単位でまとめる。筆ごとに分けて判定しない
  • 小規模宅地等の特例と重ねられる。この記事の例で最終的に1億1,482万円・相続税1,056.3万円
  • 使い忘れは申告期限から5年以内なら取り戻せる

今すぐ取るべき行動

  • まず日付を確認する場合:亡くなった日が平成30年1月1日以後かを確認する。以後なら地積規模の大きな宅地の評価を検討する
  • 面積を確認する場合:登記事項証明書で地積を見る。基準の500平方メートルや1,000平方メートルに近ければ測量を検討する
  • 地域を確認する場合:国税庁が公表している三大都市圏の市町村一覧に自分の土地の市町村名を当てる
  • 除外条件を確認する場合:市区町村の都市計画図で用途地域と指定容積率を調べる。調整区域なら都市計画課に34条10号・11号の区域か問い合わせる
  • 地区区分を確認する場合:国税庁の路線価図で、路線価を囲む記号を見る。無印なら普通住宅地区
  • 補正率を計算する場合:B・Cの表から自分の地積の区分を選び、(A×B+C)÷A×0.8を計算して小数点以下第2位未満を切り捨てる
  • すでに申告している場合:申告書の控えで評価明細書の規模格差補正率の欄を確認する。空欄で地積が基準を超えているなら見直す
  • 見積りを取る場合:土地の所在地・地積・亡くなった日を最初に伝え、提示された評価額そのものを3〜5の事務所で比べる

※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。

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