


相続税対策の失敗は、対策をしなかったことよりも「よかれと思ってやったことが裏目に出る」形で起きます。この記事ではそれを落とし穴と呼びます。
毎年こつこつ続けた贈与が一括で課税されたり、建てたアパートが空室のままだったりというケースです。
そして失敗のほとんどは、実行した時点では気づけません。分かるのは相続が起きて申告する段階か、その後の税務調査のときです。
ただし落とし穴は、空いている場所が決まっています。生前贈与・不動産・養子縁組と生命保険・遺言と分割の4か所です。
この記事では12の失敗事例を、遺産1億円・配偶者と子2人という同じ条件に置き直し、それぞれいくら損するかを計算しました。
金額の幅は13万円から1,250万円まであります。全部を同じ重さで心配する必要はありません。
本記事では、失敗が3つの型に分かれること、自分が当てはまるかの12項目の判定、失敗ごとの損失額と直し方、気づいたあとどこまで取り戻せるかまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

12の落とし穴を並べると、原因は3か所に集まります。税金だけを見て現金を用意していないこと、目の前の相続だけを見て次を見ていないこと、そして税務署の見方と自分の見方がずれていることです。どの型に当たるかが分かると、直す順番も決まります。
いちばん多いのがこの型です。現金を不動産に変えると評価額は下がりますが、納税に使えるお金も同時に減ります。
相続税は原則として現金で、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に納めます。不動産は売ろうとしてもすぐには現金になりません。
この記事の条件では相続税は315万円です。これを現金で用意できるかどうかが、対策の前提になります。
【型1に当たる失敗】
納められないと延滞税がかかります。この記事の条件で本税1,000万円を1年遅れると28万円です。
配偶者には手厚い軽減があります。法定相続分か1億6,000万円までは相続税がかかりません。
そのため配偶者に寄せると目の前の相続税は下がります。ところがその財産は、配偶者が亡くなったときにもう一度課税されます。
この記事の条件で比べると、配偶者に全部渡すと一次と二次の合計が770万円、半分にすると395万円です。差は375万円になります。
| 配偶者の取得割合 | 一次相続 | 二次相続 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 全部(100%) | 0万円 | 770万円 | 770万円 |
| 半分(50%) | 315万円 | 80万円 | 395万円 |
表の見方:赤い行は一次相続が0円です。そこだけ見ると得に見えますが、合計では黄色の行のほうが安くなります。
重要ポイント:配偶者の軽減を限界まで使うと、かえって高くつくことがあります。判断するには二次相続まで計算する必要があります。
計算ロジック:遺産1億円・配偶者と子2人、基礎控除4,800万円で計算しています。二次相続は配偶者が取得した額をそのまま子2人が相続する前提です。配偶者自身の財産は含めていません。
3つ目は、対策そのものが税務署に認められない型です。やってはいけないと言われるものの多くが、ここに集まります。名義を変えただけで実態が伴っていない場合に起きます。
子の名義で口座を作っても、通帳と印鑑を親が持ち、子が存在を知らなければ、その預金は親の財産として扱われます。
同じことが毎年の贈与や養子縁組でも起きます。形だけ整えても、実際にお金や権利が動いていなければ否認されます。
【型3を避けるために残しておくもの】
4か所にある12の失敗事例を、3つの型に振り分けたのが次の表です。自分が心配している対策がどこに当たるかを確認してください。
| 起きる場所 | 失敗 | 型 | 損失額の目安 |
|---|---|---|---|
| 生前贈与 | ①名義預金 | 型3 | 78万円 |
| 生前贈与 | ②定期贈与とみなされる | 型3 | 207万円 |
| 生前贈与 | ③持ち戻しで戻される | 型2 | 26万円 |
| 生前贈与 | ④精算課税で評価が下がった | 型2 | 121万円 |
| 不動産 | ⑤アパートの空室 | 型1 | 40万円 |
| 不動産 | ⑥行き過ぎた節税の否認 | 型3 | 660万円 |
| 不動産 | ⑦二次相続で集中する | 型2 | 375万円 |
| 養子・保険 | ⑧養子縁組の否認 | 型3 | 70万円 |
| 養子・保険 | ⑨孫養子の2割加算 | 型2 | 13万円 |
| 養子・保険 | ⑩生命保険の受取人ミス | 型2 | 121万円 |
| 遺言・分割 | ⑪遺留分の侵害 | 型1 | 1,250万円 |
| 遺言・分割 | ⑫納税の遅れ | 型1 | 28万円 |
表の見方:左から「どこで起きるか」「何が起きるか」「3つの型のどれか」「いくら損するか」の順です。赤い2行が金額の大きい失敗です。
重要ポイント:金額が大きいのは⑥行き過ぎた節税の否認と⑪遺留分の侵害です。どちらも税金の計算ミスではなく、「やりすぎた」ことが原因という共通点があります。
計算ロジック:すべて遺産1億円・配偶者と子2人・配偶者が2分の1を取得する同じ条件で計算しています。基準の相続税は315万円で、各失敗で課税価格がいくら増えるかを出し、その税額差を損失額としました。⑪だけは税金ではなく、請求されて渡す金額です。
節税対策の全体像と二次相続の考え方は下記の記事で解説しています。



落とし穴の一覧を読んでも、自分に関係があるかどうかは分かりません。そこで12の失敗を、はい・いいえで答えられる12の質問に置き換えました。
すでに対策を実行している人は、手元の資料を見ながら順番に確認してください。当てはまった項目が、そのまま確認すべき場所になります。
贈与は書類が残っていないと後から証明できません。通帳と契約書を手元に置いて確認してください。
【生前贈与のチェック】
1つでも当てはまったら、まず通帳の名義と印鑑の保管場所を確かめてください。ここが実態を判断するいちばんの材料になります。
不動産は金額が大きいぶん、失敗したときの損失も大きくなります。固定資産税の納税通知書と賃貸の契約状況を確認してください。
【不動産のチェック】
2つ目が最も危険です。借入で不動産を買い、数年以内に相続が起きた事例では、通達どおりの評価が認められなかったケースがあります。
この2つは手続きが簡単なぶん、設定の確認が抜けやすい場所です。保険証券を出して受取人の欄を見てください。
【養子縁組と生命保険のチェック】
生命保険には500万円×法定相続人の数まで非課税の枠があります。この記事の条件では1,500万円です。相続人でない人が受け取ると、この枠は使えません。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
最後の2つは、税金ではなく人の問題です。金額としてはいちばん大きくなります。
【遺言と分割のチェック】
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に保障されている最低限の取り分です。この記事の条件で子1人の遺留分は1,250万円になります。遺言でゼロと書いても、請求されれば支払う義務が生じます。
チェックした結果を数えてください。数によって、次に取るべき行動が変わります。
| 当てはまった数 | 状態 | 次にすること |
|---|---|---|
| 0個 | 大きな穴はない | 毎年1回、財産の額と家族の状況を見直す |
| 1〜2個 | 直せる段階 | 該当する項目の書類をそろえ、税理士に確認する |
| 3〜5個 | 複数の型が重なっている | 対策全体を組み直す。1つずつ直すと別の失敗を生む |
| 6個以上 | 設計そのものを見直す段階 | 実行済みの対策を止めるかどうかから検討する |
表の見方:数が増えるほど、個別に直すのではなく全体を組み直す必要が出てきます。
重要ポイント:3個以上なら、1つずつ直すのは避けてください。贈与を止めると持ち戻しの計算が変わり、分け方を変えると配偶者の軽減が変わるというように、12の失敗は互いにつながっています。
相続税がかかるかどうかの判定は下記の記事で解説しています。


生前贈与は誰でも始められるぶん、失敗も集中します。共通しているのはお金は動いたが、贈与として認められなかったという形です。名義を変えただけ、毎年同じ額を送っただけでは足りません。ここでは4つの失敗を、それぞれいくら損するかとあわせて見ていきます。
子や孫の名義で口座を作り、そこにお金を移していく方法です。手間がかからないため広く行われています。
ところが通帳と印鑑を親が持ち、子がその口座を知らなければ、税務署はそのお金を親のものと見ます。名義が誰かではなく、誰が管理していたかで判断されるためです。
この記事の条件で1,000万円が戻されると、相続税は315万円から392万円に増えます。差は78万円です。
【名義預金と判定されやすい状態】
直し方:通帳と印鑑をもらった側に渡し、本人が管理する状態にします。過去の分は贈与契約書を作り直すことができないため、いったん親の財産に戻して数え直すほうが安全です。
名義預金と判定された場合の税額は下記の記事で解説しています。
毎年110万円までなら贈与税がかからないため、同じ額を同じ時期に贈り続ける方法がよく使われます。
毎年同じ額を同じ時期に、という形がやってはいけないやり方です。危ないのは、「毎年110万円を10年間贈る」という約束が最初にあったとみなされると、初年に1,100万円を贈ったものとして課税されるからです。
贈与税は207万円になります。毎年110万円ずつなら0円だったものが、まとめて課税されると一気に負担が生じます。
| 扱い | 課税される額 | 税率と控除 | 贈与税 |
|---|---|---|---|
| 毎年別々の贈与と認められる | 年110万円(基礎控除以下) | — | 0円 |
| 定期贈与とみなされる | 1,100万円−110万円=990万円 | 30%・控除90万円 | 207万円 |
表の見方:同じ1,100万円を渡しても、扱いが変わるだけで税額が0円と207万円に分かれます。
重要ポイント:毎年、額と時期をずらし、その都度契約書を作ってください。「10年間で1,100万円」という取り決めを残さないことが要点です。
計算ロジック:直系尊属から18歳以上の子への贈与は特例税率です。(1,100万円−110万円)×30%−90万円=207万円で計算しています。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
贈与が認められても、亡くなる前の一定期間の分は相続財産に戻されます。これを持ち戻しといいます。
期間はこれまで3年でしたが、令和5年度の改正で7年に延びました。延長された4年分は、合計100万円までは戻されません。
この記事の条件で110万円×4年=440万円のうち、100万円を引いた340万円が戻ります。相続税は26万円増えます。
| 相続が始まった時期 | 戻される期間 | 100万円の控除 |
|---|---|---|
| 2026年12月31日まで | 3年 | なし |
| 2027年1月1日以後 | 順次のびて最長7年 | あり(延長分の合計から) |
| 2031年1月1日以後 | 7年 | あり(延長分の合計から) |
表の見方:今すぐ7年になるわけではありません。2027年から少しずつ延びていきます。
重要ポイント:持ち戻しは避けられませんが、早く始めるほど影響は小さくなります。7年を超えた分は戻されないためです。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
2,500万円まで贈与税をかけずに渡せる制度です。ただし相続のときに、その財産を相続財産に加えて計算し直します。
このとき使うのは贈与したときの価額です。相続のときに値下がりしていても、高かったときの金額で課税されます。
3,000万円のときに贈与した財産が1,500万円に下がった場合、差の1,500万円に対する相続税121万円が無駄になります。
【値上がりするか値下がりするかで結論が変わる】
一度選ぶと暦年課税には戻せません。これから値上がりが見込める財産にだけ使うのが原則です。
直し方:選択済みの場合は取り消せないため、この制度で渡す財産をこれ以上増やさない判断になります。令和6年からは年110万円の基礎控除が使えるので、その範囲での贈与は相続財産に戻りません。
4つの損失額を横に並べると、優先して直すべき順番が見えます。
| 失敗 | 原因 | 損失額 | 直せるか |
|---|---|---|---|
| ②定期贈与 | 毎年同額・同時期の贈与 | 207万円 | 今年から額と時期を変える |
| ④精算課税の評価下落 | 値下がりする財産に使った | 121万円 | 取り消せない |
| ①名義預金 | 管理していたのが贈与した側 | 78万円 | 通帳と印鑑を渡す |
| ③持ち戻し | 亡くなる前の贈与 | 26万円 | 早く始めるほど影響が小さい |
表の見方:損失額の大きい順に並べています。右端は「今から直せるかどうか」です。
重要ポイント:金額がいちばん大きい②定期贈与は、今年から直せます。一方で④は選んだ時点で取り消せません。直せるものから手を付けてください。
名義預金・贈与・相続時精算課税は下記の記事で解説しています。





不動産は評価額を下げる効果が大きいため、相続税対策の中心に据えられることが多い財産です。そのぶん失敗したときの金額も大きくなります。この記事の12の失敗のうち、最も高くつくのも不動産です。空室・否認・二次相続の3つを順に見ていきます。
人に貸している土地は、自分で使っている土地より低く評価されます。ただし減額されるのは、実際に貸している部分だけです。
計算では賃貸割合という数字を使います。空室が増えると賃貸割合が下がり、減額も小さくなります。
| 入居の状態 | 賃貸割合 | 土地の評価額 | 相続税 |
|---|---|---|---|
| 満室 | 100% | 4,920万円 | 315万円 |
| 半分が空室 | 50% | 5,460万円 | 356万円 |
表の見方:同じ建物でも入居の状態で評価額が変わります。差は540万円、相続税で40万円です。
重要ポイント:空室は評価額だけでなく家賃収入も同時に減らします。納税資金が足りなくなる型1の失敗にもつながります。
計算ロジック:貸家建付地の評価額は自用地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で求めます。自用地6,000万円・借地権割合60%・借家権割合30%として、満室なら4,920万円、賃貸割合50%なら5,460万円です。
アパート建築による対策の判断は下記の記事で解説しています。
土地や建物は、国税庁が定めた通達にしたがって評価するのが原則です。ところがその通達には、「著しく不適当と認められる場合は国税庁長官の指示で評価する」という定めがあります。
総則6項と呼ばれるものです。通達どおりに計算した金額が認められず、鑑定評価で課税された事例があります。
この記事の例で、通達評価3,000万円が1億円と評価されると、課税価格が7,000万円増え、相続税は660万円増えます。12の失敗のなかで税額の増え方が最も大きい項目です。
【否認されやすい条件が重なっている状態】
直し方:すでに買っている場合、保有を続けて賃貸として実際に運用することが手当てになります。買ってすぐ売ると、節税だけが目的だったと見られやすくなります。
マンションの評価と改正後の節税効果は下記の記事で解説しています。
財産の大半が不動産だと、分け方の選択肢が狭くなります。現金なら割れますが、建物は割れないためです。
配偶者がまとめて相続すると一次相続は安く済みますが、その不動産は次の相続でもう一度課税されます。しかも配偶者の軽減は二次相続では使えません。
この記事の条件では、一次と二次の合計が770万円と395万円に分かれ、差は375万円です。
直し方:生前に不動産の一部を現金に換えておくか、生命保険で代償金の原資を用意しておく方法があります。分けられる形にしておくことが、二次相続の負担を下げます。
配偶者にどれだけ渡すかの判断は下記の記事で解説しています。
3つの損失額を並べます。金額の桁が違う点に注目してください。
| 失敗 | 課税価格への影響 | 損失額 | 手当て |
|---|---|---|---|
| ⑥行き過ぎた節税の否認 | +7,000万円 | 660万円 | 保有を続けて実際に運用する |
| ⑦二次相続の集中 | — | 375万円 | 分けられる形にしておく |
| ⑤アパートの空室 | +540万円 | 40万円 | 入居率を上げる/立地を選び直す |
表の見方:⑥だけ桁が1つ大きくなります。空室は運用で改善できますが、否認は覆せません。
重要ポイント:不動産の失敗で最も高くつくのは、買ったこと自体を否認される⑥です。買う前に「節税以外の目的を説明できるか」を確かめてください。
アパート建築とマンションの評価は下記の記事で解説しています。




この2つは手続きが簡単です。養子縁組は役所に届けるだけ、生命保険は申込書の受取人欄を書くだけです。簡単なぶん、効果と条件を確かめないまま実行されがちです。3つの失敗はいずれも、制度の数え方を誤ったことから起きます。
養子が増えると法定相続人が増え、基礎控除が600万円ずつ増えます。生命保険の非課税枠も500万円ずつ増えます。
ただし相続税の計算に入れられる養子の数には上限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
この上限を知らずに複数の養子を迎えても、2人目以降は基礎控除の計算に入りません。期待した効果が出ないまま、家族関係だけが複雑になります。
| 実子の有無 | 数えられる養子の数 | 基礎控除への影響 |
|---|---|---|
| 実子がいる | 1人まで | +600万円が上限 |
| 実子がいない | 2人まで | +1,200万円が上限 |
表の見方:実際に何人と養子縁組をしても、相続税の計算に入るのはこの人数までです。
重要ポイント:この記事の条件で法定相続人が1人減ると、相続税は70万円増えます。人数の見込み違いは、そのまま税額の見込み違いになります。
孫を養子にすると、相続を1回飛ばせます。子から孫へもう一度課税される分を省けるため、効果は大きく見えます。
ところが孫養子が相続した分には、相続税が2割増しで課される決まりがあります(相続税法18条)。
この記事の条件で孫養子が2,000万円を取得すると、按分した税額63万円に2割が乗り、13万円の上乗せになります。
【2割加算の対象になる人・ならない人】
子がすでに亡くなっていて孫が代わりに相続する場合は、孫養子であっても2割加算の対象外です。同じ孫でも、親が生きているかどうかで扱いが変わります。
直し方:相続を1回飛ばす効果と2割加算を並べて比べます。財産が大きく、子の世代でも相続税がかかる見込みなら、2割増しでも飛ばしたほうが有利になることがあります。
死亡保険金には500万円×法定相続人の数まで非課税の枠があります。この記事の条件では1,500万円です。
この枠を使えるのは相続人が受け取った場合だけです。孫や兄弟姉妹を受取人にすると、非課税枠は1円も使えません。
枠が使えないと課税価格が1,500万円増え、相続税は121万円増えます。受取人の欄を書き換えるだけで避けられる失敗です。
| 受取人 | 非課税枠 | 2割加算 | 課税価格への影響 |
|---|---|---|---|
| 配偶者・子 | 使える | なし | −1,500万円 |
| 孫(代襲でない) | 使えない | あり | +1,500万円の差 |
| 兄弟姉妹 | 使えない | あり | 同上 |
| 内縁の相手 | 使えない | あり | 同上 |
表の見方:受取人が相続人かどうかだけで、非課税枠と2割加算の両方が変わります。
重要ポイント:契約した当時のまま受取人を見直していない保険がないか確認してください。離婚や再婚があった場合、前の配偶者のままになっていることがあります。
計算ロジック:非課税枠は500万円×法定相続人3人=1,500万円です。これが使えないと課税価格が同額増え、相続税は315万円から436万円になります。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
3つとも、書類を1枚直すか人数を数え直すだけで避けられます。
| 失敗 | 原因 | 損失額 | 直すのにかかる手間 |
|---|---|---|---|
| ⑩受取人ミス | 相続人でない人を受取人にした | 121万円 | 受取人の変更手続き1回 |
| ⑧養子の人数 | 数えられる上限を知らなかった | 70万円 | 人数を数え直して試算する |
| ⑨孫養子の2割加算 | 加算を計算に入れていなかった | 13万円 | 効果と加算を比べ直す |
表の見方:損失額の大きい順です。右端のとおり、どれも手続き自体は重くありません。
重要ポイント:この3つは実行前に確認すれば、ほぼ確実に避けられます。相続が起きてからでは、受取人も養子の数も変えられません。
孫への相続と2割加算は下記の記事で解説しています。


最後の2つは税金の計算ではなく、人とお金の段取りの問題です。それでも12の失敗のなかで金額がいちばん大きいのはこの領域です。税額を数十万円削る話をしている横で、千万円単位のお金が動くことがあります。
節税を優先すると、財産を1人に寄せる遺言になりがちです。小規模宅地等の特例を使うために自宅を同居の子へ、事業を継ぐ子へ自社株を、といった形です。
ところが兄弟姉妹以外の相続人には、最低限もらえる取り分が民法で保障されています。これを遺留分といいます。
この記事の条件で子1人の遺留分は1,250万円です。遺言でゼロにしても、請求されれば支払う義務が生じます。
| 相続人の組み合わせ | 遺留分の合計 | 子1人あたり(子2人の場合) |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 遺産の2分の1 | 8分の1=1,250万円 |
| 子のみ | 遺産の2分の1 | 4分の1 |
| 配偶者と親 | 遺産の2分の1 | — |
| 親のみ | 遺産の3分の1 | — |
| 兄弟姉妹が相続人 | なし | — |
表の見方:兄弟姉妹だけに遺留分がありません。それ以外の相続人には必ず取り分が残ります。
重要ポイント:請求されると現金で払うことになります。自宅や自社株を渡したかったのに、結局それを売って払うことになれば元も子もありません。
計算ロジック:遺留分は法定相続分の2分の1です。配偶者と子2人なら子1人の法定相続分は4分の1なので、遺留分は8分の1=1億円×8分の1=1,250万円になります。
【遺留分を侵さないための手当て】
請求には期限があります。遺留分を侵す贈与や遺贈があったことを知った時から1年、相続開始から10年です。
遺留分と相続税の関係は下記の記事で解説しています。
参照元:e-Gov法令検索 民法(第1042条・第1048条)
相続税は原則として現金で、10か月以内に納めます。対策で不動産を増やすほど、この現金が細くなります。
納められないと延滞税がかかります。本税1,000万円を1年遅れると28万円です(年2.8%で計算)。
さらに厄介なのが連帯納付義務です。他の相続人が納められないと、自分の分を納め終えていても請求されます。
直し方:分け方を決める前に、各相続人がいくら納めるかと、手元にいくら現金が残るかを並べます。納税資金の確認は、分割協議より先にやるべきことです。
納税資金が足りない場合の選択肢は下記の記事で解説しています。
金額の桁が他の失敗と違います。
| 失敗 | 性質 | 金額 | 起きる時期 |
|---|---|---|---|
| ⑪遺留分の侵害 | 税金ではなく相続人への支払い | 1,250万円 | 遺言が開かれたあと |
| ⑫納税の遅れ | 延滞税(年2.8%) | 28万円 | 申告期限を過ぎてから |
表の見方:⑪は税金ではありません。それでも12の失敗で最大の金額になります。
重要ポイント:節税だけを見て分け方を決めると、この2つを同時に踏みます。税額・分け方・納税資金の3つは、同じテーブルで決める必要があります。
遺留分と納税資金の手当ては下記の記事で解説しています。




12の落とし穴のうち、踏んだら終わりというものは多くありません。いつ気づいたかによって、直せる範囲が3段階に分かれます。相続が起きる前、申告する前、申告したあとの3つです。
ここを知らないまま「もう遅い」と諦めると、取り戻せたはずのお金をそのままにすることになります。
本人が元気なうちは、12のうち10までが手を入れられます。残りの2つは制度上戻せないものです。
受取人の変更と遺言の書き直しは、費用もほとんどかかりません。チェックで当てはまった人は、ここから着手してください。
相続が起きてしまっても、申告書を出す前なら打てる手があります。分け方が決まっていない段階なら、なおさらです。
誰がどの財産を取るかで、使える特例が変わります。自宅を誰が相続するかで小規模宅地等の特例の可否が決まり、配偶者がいくら取るかで二次相続まで含めた合計が変わります。
| 気づいた失敗 | 申告前にできること |
|---|---|
| ⑦二次相続の割高 | 配偶者の取得割合を決め直す。この記事の条件で最大375万円の差 |
| ⑪遺留分の侵害 | 遺言と違う分け方で全員が合意すれば、その分割が優先する |
| ⑫納税の遅れ | 納税資金のある相続人に配分を寄せる。延納・物納の申請は申告期限と同じ日まで |
| ①名義預金 | 相続財産として申告する。隠すと重加算税の対象になる |
表の見方:この4つは、分け方を決める段階でまだ動かせます。申告書を出すと固まります。
重要ポイント:名義預金に気づいたら、申告に含めるのが結果的にいちばん安く済みます。隠して見つかると、本来の税額に加えて重加算税がかかります。
申告を終えたあとでも、納めすぎに気づけば返してもらえます。更正の請求という手続きです。
期限は法定申告期限から5年です(国税通則法23条1項)。相続税の申告期限が10か月なので、亡くなってから5年10か月がおおよその目安になります。
戻りやすいのは土地の評価です。形がいびつな土地、道路に接していない土地、線路や高圧線の近くの土地は、標準的な評価のまま申告されていることがあります。
【更正の請求で戻る可能性があるもの】
未分割だった財産が分割された場合は別の規定があり、その事由を知った日の翌日から4か月以内です(相続税法32条)。
直し方:申告書の控えと土地の評価明細書を手元に用意し、別の税理士に見てもらいます。同じ税理士に頼むと、自分の計算を否定することになるため動きにくい面があります。
申告後に評価を見直す手順は下記の記事で解説しています。
参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
参照元:e-Gov法令検索 国税通則法(第23条 更正の請求)
一方で、どの段階でも戻せないものがあります。やってはいけない対策として挙げられるのは、この4つです。先に知っておくと、実行する前の判断が変わります。
【あとから戻せない失敗】
この4つは「実行する前に確かめる」以外に方法がありません。金額も大きいので、着手前の確認がそのまま損失の回避になります。
3つの段階を1つの表にまとめます。自分がいまどこにいるかを確認してください。
| 気づいた時期 | 直せる失敗 | 期限 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 相続が起きる前 | 12のうち10 | なし | 受取人変更は無料、遺言の書き直しは数万円〜 |
| 相続後・申告前 | ④⑦⑪⑫など分け方で動くもの | 申告期限の10か月 | 税理士報酬のみ |
| 申告後 | 土地の評価・特例の使い忘れ | 法定申告期限から5年 | 報酬は還付額の一部が一般的 |
| どの段階でも戻せない | ④⑥⑨⑪ | — | — |
表の見方:上に行くほど直せる範囲が広くなります。赤い行が、時期に関係なく戻せないものです。
重要ポイント:申告を終えていても5年以内なら間に合います。「もう申告したから」と諦める必要はありません。
申告後に取り戻す方法は下記の記事で解説しています。



ここまで個別に見てきた12の落とし穴を、同じ条件・同じものさしで並べます。金額の幅は13万円から1,250万円まであります。すべてを同じ重さで心配する必要はありません。どこから手を付けるかを決めるための表です。
遺産1億円・配偶者と子2人・配偶者が2分の1を取得するという同じ条件で計算しています。
| 失敗 | 何が起きるか | 損失額 | 詳しく読む |
|---|---|---|---|
| ⑪遺留分の侵害 | 請求されて渡す金額 | 1,250万円 | /223/ |
| ⑥行き過ぎた節税の否認 | 通達評価ではなく鑑定評価で課税される | 660万円 | /1470/ |
| ⑦二次相続の割高 | 一次で配偶者に寄せすぎる | 375万円 | /2111/ |
| ②定期贈与 | 毎年同額の贈与が初年の一括贈与と扱われる | 207万円 | /1306/ |
| ④精算課税の評価下落 | 贈与時の高い価額のまま課税される | 121万円 | /1233/ |
| ⑩生命保険の受取人ミス | 非課税枠が使えなくなる | 121万円 | /525/ |
| ①名義預金 | 子名義の口座1,000万円が相続財産に戻る | 78万円 | /1293/ |
| ⑧養子縁組の否認 | 法定相続人が減って基礎控除が縮む | 70万円 | /1452/ |
| ⑤アパートの空室 | 賃貸割合が下がって減額が縮む | 40万円 | /1159/ |
| ⑫納税の遅れ | 延滞税(年2.8%・1年) | 28万円 | /1712/ |
| ③持ち戻し | 亡くなる前の贈与が課税価格に戻る | 26万円 | /1094/ |
| ⑨孫養子の2割加算 | 取得した額に2割が上乗せされる | 13万円 | /1452/ |
表の見方:損失額の大きい順です。赤が300万円以上、黄色が100万円以上。右端は、その失敗を詳しく扱っている記事の番号です。
重要ポイント:上位3つで全体の7割近くを占めます。下位の項目に時間をかけるより、まず上位3つに当てはまっていないかを確かめてください。
計算ロジック:各失敗で課税価格がいくら増えるかを出し、基準の相続税315万円との差を損失額としています。②は贈与税、⑪は相続人へ支払う金額、⑫は延滞税なので、性質が他と異なります。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。
金額が大きくても、めったに起きない失敗なら優先度は下がります。逆に金額が小さくても、ほとんどの家庭で起きるなら先に潰すべきです。
| 失敗 | 損失額 | 起きやすさ | 優先度 |
|---|---|---|---|
| ①名義預金 | 78万円 | 高い(税務調査の指摘で最も多い) | 最優先 |
| ⑦二次相続の割高 | 375万円 | 高い(配偶者がいれば必ず論点になる) | 最優先 |
| ②定期贈与 | 207万円 | 中(毎年同額にしていると該当) | 高い |
| ⑪遺留分の侵害 | 1,250万円 | 中(寄せる遺言を書いた場合) | 高い |
| ⑥行き過ぎた節税の否認 | 660万円 | 低い(条件が重なった場合のみ) | 中 |
| ⑩生命保険の受取人ミス | 121万円 | 低い(確認すれば防げる) | 中 |
表の見方:損失額と起きやすさの両方を見て、右端の優先度を付けています。
重要ポイント:金額が小さい①名義預金が最優先なのは、起きる確率が高いからです。相続税の税務調査で指摘される財産を種類別に見ると、現金・預貯金が最も多い割合を占めています。
ここまでをまとめると、着手の順番は次のようになります。
1番目から3番目までは、自分で今日から確認できます。4番目以降は計算が必要になるため、専門家と進めることになります。
そもそも相続税がいくらからかかるかは下記の記事で解説しています。


12の落とし穴に共通しているのは、実行した時点では誰も間違いに気づいていないことです。確認する機会を決めておかないと、気づくのは相続が起きたあとになります。着手する前、実行したあと、そして専門家に会ったときの3つの場面でやることを決めておきます。
どの対策を選ぶかより先に、いまの状態を数えます。ここを飛ばして手段から入ると、型1と型2の失敗を踏みます。
【着手前に数えておく7項目】
3と5を計算しないまま対策を始めると、型1と型2に直行します。この2つだけは手段を選ぶ前に出してください。
対策は一度やって終わりではありません。財産の額も家族の状況も変わるためです。
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見直しの回数を増やす必要はありません。年に1回、確定申告の時期にまとめて確認するだけで足ります。
相談したときに何を聞くかで、得られる情報が変わります。「相続税はいくらですか」だけでは、失敗は見つかりません。
【初回の相談で聞くこと】
この5つは、12の失敗の3つの型をそのまま質問にしたものです。答えが返ってこない項目があれば、そこが確認されていない箇所です。
相続税の税務調査では、申告漏れの財産を種類別に見ると、現金・預貯金の割合が最も高くなっています。質問1で名義預金に触れられるかどうかは、実務経験を測るひとつの目安になります。
税務調査で何を見られるかは下記の記事で解説しています。
税務調査で何を見られるかは下記の記事で解説しています。



12の落とし穴のうち、自分で確認できるのは通帳の管理と保険の受取人までです。二次相続の試算と土地の評価は、計算しないと判断できません。そしてこの2つが、金額としては最も大きく動く場所です。
相続税は、税理士なら誰でも同じ結果になる税目ではありません。土地の評価と特例の使い方で納税額が変わるため、相続税の対応実績がある税理士に依頼する必要があります。
【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】
金額で言えば、この記事の12の失敗の損失額は合計2,988万円です。最大の1件だけで1,250万円あります。
同じ条件で複数の事務所に当たると、報酬と提案の両方を並べられます。1つの事務所だけでは、その提案が妥当かどうかを確かめる手がかりがありません。
見積りが揃ったら、金額だけを見比べないでください。次の3点を比べると実務力が見えます。
判定ポイント1:実行済みの対策に意見を言うか
「その贈与のやり方は定期贈与とみられます」のように、すでにやったことへの指摘があるか。
→ 指摘できる事務所のほうが、否認された事例を見ていると判定できます。
判定ポイント2:二次相続まで数字を出すか
配偶者の取得割合ごとに、一次と二次の合計を出してくれるか。
→ 合計で比べる事務所のほうが、目先の税額だけで判断しないと判定できます。
判定ポイント3:土地を誰が見るか
評価を税理士本人が行うのか、現地を見るのかを確認します。
→ 現地を見る事務所のほうが、評価を下げられる要素を拾えると判定できます。
比較せずに1つの事務所だけで進めた場合、あとから取り返せない損失が出ます。
【相談しないまま進めるリスク】
金額にすると次のとおりです。この記事の条件では、二次相続の判断を誤ると375万円、行き過ぎた節税が否認されると660万円、遺留分を侵すと1,250万円です。
この3つだけで2,285万円が、フォーム入力5分をかけるかどうかで決まります。
一括見積りサービスを利用した依頼の流れは次の4段階です。
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初回相談は報酬を聞く場ではありません。次の7点をその場で確認してください。
【初回相談で確認すること】
見積りは総額だけを見ないでください。内訳が書面になっているかが分かれ目です。
【見積りで確認すること】
税理士の探し方と土地で差が出る項目は下記の記事で解説しています。


通帳・印鑑・キャッシュカードを本人に渡し、本人が管理する状態にします。そのうえで今後の贈与は、契約書を作り口座から口座へ振り込みます。
過去の分は契約書を後から作れません。いったん被相続人の財産として数え直し、申告に含めるほうが結果的に安く済みます。隠して指摘されると重加算税の対象になります。
額と時期を毎年変え、その都度契約書を作っていれば問題ありません。危ないのは「10年間で1,100万円を渡す」という取り決めが最初にあったとみられる場合です。
この記事の条件でそう判断されると、贈与税は0円から207万円になります。同じ金額を渡しても、扱いが変わるだけで結果が分かれます。
相続財産に戻される期間が3年から7年へ、段階的に延びます。2026年12月31日までに相続が始まった場合は3年のままです。
2027年1月1日以後に始まった相続から順次のび、2031年1月1日以後で満7年になります。延長された4年分については、合計100万円までは戻されません。
実態が伴っていないものです。名義だけ変えた預金、毎年同額を同時期に贈り続ける贈与、節税以外の目的を説明できない不動産の購入の3つが代表です。
いずれも税務署に否認されると、対策そのものがなかったものとして課税されます。この記事の⑥では、否認されると相続税が660万円増える計算になります。
評価額を下げる効果自体はあります。ただし実際に貸していることが前提で、空室が増えると減額の幅は縮みます。この記事の条件では賃貸割合が半分になると40万円高くなります。
また高齢になってから借入で買い、短期間で相続が起きた場合は、通達どおりの評価が認められなかった事例があります。節税以外の目的を説明できるかどうかが分かれ目です。
贈与を使うなら早いほど有利です。亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に戻されるため、期間を超えた分だけが効きます。
ただし早く始めればよいというものでもありません。財産の額も家族の状況も変わるので、年に1回は数え直してください。見直さないまま続けた対策が、いつの間にか合わなくなっていることがあります。
手遅れとは限りません。納めすぎていた場合は、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で返してもらえます。
戻りやすいのは土地の評価です。形がいびつな土地や道路に接していない土地が、標準的な評価のまま申告されていることがあります。申告書の控えと評価明細書を用意し、別の税理士に見てもらってください。
通帳と印鑑の管理、生命保険の受取人、贈与の額と時期の3つです。この3つは費用がかからず、自分で今日から確認できます。
配偶者にいくら渡すかの判断と、遺言と遺留分の照合は計算が必要です。ここからは専門家と進めることになります。金額としては、この後半2つのほうが大きく動きます。
相続税対策の失敗は、対策をしなかったことではなく「よかれと思ってやったこと」から起きます。ただし落とし穴のある場所は4か所、型は3つしかありません。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。