相続税対策の失敗事例12選|損失額の試算と自分が当てはまるかの判定

相続税_対策_落とし穴_失敗

相続税対策の失敗は、対策をしなかったことよりも「よかれと思ってやったことが裏目に出る」形で起きます。この記事ではそれを落とし穴と呼びます。

毎年こつこつ続けた贈与が一括で課税されたり、建てたアパートが空室のままだったりというケースです。

そして失敗のほとんどは、実行した時点では気づけません。分かるのは相続が起きて申告する段階か、その後の税務調査のときです。

ただし落とし穴は、空いている場所が決まっています。生前贈与・不動産・養子縁組と生命保険・遺言と分割の4か所です。

この記事では12の失敗事例を、遺産1億円・配偶者と子2人という同じ条件に置き直し、それぞれいくら損するかを計算しました。

金額の幅は13万円から1,250万円まであります。全部を同じ重さで心配する必要はありません。

本記事では、失敗が3つの型に分かれること、自分が当てはまるかの12項目の判定、失敗ごとの損失額と直し方、気づいたあとどこまで取り戻せるかまでを解説します。

▼ この記事の3行まとめ

  • 失敗は3つの型しかない。納税資金が足りない/二次相続で高くなる/申告で認められない
  • 損失額は13万円〜1,250万円と幅がある。大きいのは行き過ぎた節税の否認と遺留分の侵害
  • 申告前なら直せるものが多い。申告後でも5年以内なら取り戻せる失敗がある
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相続税対策の失敗は3つの型に分かれる

12の落とし穴を並べると、原因は3か所に集まります。税金だけを見て現金を用意していないこと、目の前の相続だけを見て次を見ていないこと、そして税務署の見方と自分の見方がずれていることです。どの型に当たるかが分かると、直す順番も決まります。

型1|税金は減ったが納税資金が足りない

いちばん多いのがこの型です。現金を不動産に変えると評価額は下がりますが、納税に使えるお金も同時に減ります。

相続税は原則として現金で、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に納めます。不動産は売ろうとしてもすぐには現金になりません。

この記事の条件では相続税は315万円です。これを現金で用意できるかどうかが、対策の前提になります。

【型1に当たる失敗】

  • 不動産に寄せすぎて現金が残らない
  • 納税資金を考えずに分け方を決める
  • 他の相続人が納められず、連帯して納めることになる

納められないと延滞税がかかります。この記事の条件で本税1,000万円を1年遅れると28万円です。

型2|一次相続だけ安くして二次相続で高くなる

配偶者には手厚い軽減があります。法定相続分か1億6,000万円までは相続税がかかりません。

そのため配偶者に寄せると目の前の相続税は下がります。ところがその財産は、配偶者が亡くなったときにもう一度課税されます。

この記事の条件で比べると、配偶者に全部渡すと一次と二次の合計が770万円、半分にすると395万円です。差は375万円になります。

配偶者の取得割合 一次相続 二次相続 合計
全部(100%) 0万円 770万円 770万円
半分(50%) 315万円 80万円 395万円

表の見方:赤い行は一次相続が0円です。そこだけ見ると得に見えますが、合計では黄色の行のほうが安くなります。

重要ポイント:配偶者の軽減を限界まで使うと、かえって高くつくことがあります。判断するには二次相続まで計算する必要があります。

計算ロジック:遺産1億円・配偶者と子2人、基礎控除4,800万円で計算しています。二次相続は配偶者が取得した額をそのまま子2人が相続する前提です。配偶者自身の財産は含めていません。

参照元:国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

型3|実行した対策が申告で認められない

3つ目は、対策そのものが税務署に認められない型です。やってはいけないと言われるものの多くが、ここに集まります。名義を変えただけで実態が伴っていない場合に起きます。

子の名義で口座を作っても、通帳と印鑑を親が持ち、子が存在を知らなければ、その預金は親の財産として扱われます。

同じことが毎年の贈与や養子縁組でも起きます。形だけ整えても、実際にお金や権利が動いていなければ否認されます。

【型3を避けるために残しておくもの】

  • 贈与契約書:毎年、その都度つくる
  • 振込の記録:手渡しではなく口座から口座へ
  • 通帳と印鑑:もらった側が自分で管理する
  • 贈与税の申告書:110万円を超えたら必ず出す
  • 使った形跡:もらった側が実際に使っている

12の失敗がどの型に当たるか

4か所にある12の失敗事例を、3つの型に振り分けたのが次の表です。自分が心配している対策がどこに当たるかを確認してください。

起きる場所 失敗 型 損失額の目安
生前贈与 ①名義預金 型3 78万円
生前贈与 ②定期贈与とみなされる 型3 207万円
生前贈与 ③持ち戻しで戻される 型2 26万円
生前贈与 ④精算課税で評価が下がった 型2 121万円
不動産 ⑤アパートの空室 型1 40万円
不動産 ⑥行き過ぎた節税の否認 型3 660万円
不動産 ⑦二次相続で集中する 型2 375万円
養子・保険 ⑧養子縁組の否認 型3 70万円
養子・保険 ⑨孫養子の2割加算 型2 13万円
養子・保険 ⑩生命保険の受取人ミス 型2 121万円
遺言・分割 ⑪遺留分の侵害 型1 1,250万円
遺言・分割 ⑫納税の遅れ 型1 28万円

表の見方:左から「どこで起きるか」「何が起きるか」「3つの型のどれか」「いくら損するか」の順です。赤い2行が金額の大きい失敗です。

重要ポイント:金額が大きいのは⑥行き過ぎた節税の否認と⑪遺留分の侵害です。どちらも税金の計算ミスではなく、「やりすぎた」ことが原因という共通点があります。

計算ロジック:すべて遺産1億円・配偶者と子2人・配偶者が2分の1を取得する同じ条件で計算しています。基準の相続税は315万円で、各失敗で課税価格がいくら増えるかを出し、その税額差を損失額としました。⑪だけは税金ではなく、請求されて渡す金額です。

参照元:国税庁 No.4152 相続税の計算

節税対策の全体像と二次相続の考え方は下記の記事で解説しています。

自分が当てはまるかの判定|12項目のチェック

落とし穴の一覧を読んでも、自分に関係があるかどうかは分かりません。そこで12の失敗を、はい・いいえで答えられる12の質問に置き換えました。

すでに対策を実行している人は、手元の資料を見ながら順番に確認してください。当てはまった項目が、そのまま確認すべき場所になります。

生前贈与についての4項目

贈与は書類が残っていないと後から証明できません。通帳と契約書を手元に置いて確認してください。

【生前贈与のチェック】

  • □ 子や孫の名義の口座を、自分が管理している(通帳・印鑑・キャッシュカードを持っている)→ ①名義預金
  • □ 毎年、同じ金額を同じ時期に贈与している → ②定期贈与
  • □ 贈与契約書を作っていない年がある → ①②の両方
  • □ 相続時精算課税を選んだあと、贈与した財産の価値が下がった → ④精算課税の評価下落

1つでも当てはまったら、まず通帳の名義と印鑑の保管場所を確かめてください。ここが実態を判断するいちばんの材料になります。

不動産についての3項目

不動産は金額が大きいぶん、失敗したときの損失も大きくなります。固定資産税の納税通知書と賃貸の契約状況を確認してください。

【不動産のチェック】

  • □ 賃貸物件に空室がある、または入居率が下がっている → ⑤空室
  • □ 借入をして不動産を買い、その時期が相続の直前だった(高齢・借入・短期保有が重なる)→ ⑥行き過ぎた節税の否認
  • □ 財産のうち不動産の割合が7割を超えている → ⑦二次相続の集中

2つ目が最も危険です。借入で不動産を買い、数年以内に相続が起きた事例では、通達どおりの評価が認められなかったケースがあります。

養子縁組と生命保険についての3項目

この2つは手続きが簡単なぶん、設定の確認が抜けやすい場所です。保険証券を出して受取人の欄を見てください。

【養子縁組と生命保険のチェック】

  • □ 節税を目的として養子縁組をした(同居や扶養の実態がない)→ ⑧養子縁組の否認
  • □ 孫を養子にしている → ⑨2割加算
  • □ 生命保険の受取人が配偶者や子以外になっている(孫・兄弟姉妹・内縁の相手など)→ ⑩受取人ミス

生命保険には500万円×法定相続人の数まで非課税の枠があります。この記事の条件では1,500万円です。相続人でない人が受け取ると、この枠は使えません。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

遺言と分割についての2項目

最後の2つは、税金ではなく人の問題です。金額としてはいちばん大きくなります。

【遺言と分割のチェック】

  • □ 特定の相続人に寄せる遺言を書いた(他の相続人の取り分がごく少ない)→ ⑪遺留分の侵害
  • □ 納税に使える現金がいくら残るかを計算していない → ⑫納税の遅れ

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に保障されている最低限の取り分です。この記事の条件で子1人の遺留分は1,250万円になります。遺言でゼロと書いても、請求されれば支払う義務が生じます。

当てはまった数で変わる動き方

チェックした結果を数えてください。数によって、次に取るべき行動が変わります。

当てはまった数 状態 次にすること
0個 大きな穴はない 毎年1回、財産の額と家族の状況を見直す
1〜2個 直せる段階 該当する項目の書類をそろえ、税理士に確認する
3〜5個 複数の型が重なっている 対策全体を組み直す。1つずつ直すと別の失敗を生む
6個以上 設計そのものを見直す段階 実行済みの対策を止めるかどうかから検討する

表の見方:数が増えるほど、個別に直すのではなく全体を組み直す必要が出てきます。

重要ポイント:3個以上なら、1つずつ直すのは避けてください。贈与を止めると持ち戻しの計算が変わり、分け方を変えると配偶者の軽減が変わるというように、12の失敗は互いにつながっています。

相続税がかかるかどうかの判定は下記の記事で解説しています。

生前贈与の失敗|4つの損失額と直し方

生前贈与は誰でも始められるぶん、失敗も集中します。共通しているのはお金は動いたが、贈与として認められなかったという形です。名義を変えただけ、毎年同じ額を送っただけでは足りません。ここでは4つの失敗を、それぞれいくら損するかとあわせて見ていきます。

①名義預金|子の口座にあっても親の財産と扱われる

子や孫の名義で口座を作り、そこにお金を移していく方法です。手間がかからないため広く行われています。

ところが通帳と印鑑を親が持ち、子がその口座を知らなければ、税務署はそのお金を親のものと見ます。名義が誰かではなく、誰が管理していたかで判断されるためです。

この記事の条件で1,000万円が戻されると、相続税は315万円から392万円に増えます。差は78万円です。

【名義預金と判定されやすい状態】

  • 通帳・印鑑・キャッシュカードを贈与した側が持っている
  • もらった側が口座の存在を知らない
  • 口座から一度も引き出されていない
  • 印鑑が贈与した側の他の口座と同じもの
  • 贈与契約書がない

直し方:通帳と印鑑をもらった側に渡し、本人が管理する状態にします。過去の分は贈与契約書を作り直すことができないため、いったん親の財産に戻して数え直すほうが安全です。

名義預金と判定された場合の税額は下記の記事で解説しています。

②定期贈与|毎年同額だと初年に一括で課税される

毎年110万円までなら贈与税がかからないため、同じ額を同じ時期に贈り続ける方法がよく使われます。

毎年同じ額を同じ時期に、という形がやってはいけないやり方です。危ないのは、「毎年110万円を10年間贈る」という約束が最初にあったとみなされると、初年に1,100万円を贈ったものとして課税されるからです。

贈与税は207万円になります。毎年110万円ずつなら0円だったものが、まとめて課税されると一気に負担が生じます。

扱い 課税される額 税率と控除 贈与税
毎年別々の贈与と認められる 年110万円(基礎控除以下) — 0円
定期贈与とみなされる 1,100万円−110万円=990万円 30%・控除90万円 207万円

表の見方:同じ1,100万円を渡しても、扱いが変わるだけで税額が0円と207万円に分かれます。

重要ポイント:毎年、額と時期をずらし、その都度契約書を作ってください。「10年間で1,100万円」という取り決めを残さないことが要点です。

計算ロジック:直系尊属から18歳以上の子への贈与は特例税率です。(1,100万円−110万円)×30%−90万円=207万円で計算しています。

参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

③持ち戻し|亡くなる前の贈与が課税価格に戻る

贈与が認められても、亡くなる前の一定期間の分は相続財産に戻されます。これを持ち戻しといいます。

期間はこれまで3年でしたが、令和5年度の改正で7年に延びました。延長された4年分は、合計100万円までは戻されません。

この記事の条件で110万円×4年=440万円のうち、100万円を引いた340万円が戻ります。相続税は26万円増えます。

相続が始まった時期 戻される期間 100万円の控除
2026年12月31日まで 3年 なし
2027年1月1日以後 順次のびて最長7年 あり(延長分の合計から)
2031年1月1日以後 7年 あり(延長分の合計から)

表の見方:今すぐ7年になるわけではありません。2027年から少しずつ延びていきます。

重要ポイント:持ち戻しは避けられませんが、早く始めるほど影響は小さくなります。7年を超えた分は戻されないためです。

参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

④相続時精算課税|贈与時の価額のまま課税される

2,500万円まで贈与税をかけずに渡せる制度です。ただし相続のときに、その財産を相続財産に加えて計算し直します。

このとき使うのは贈与したときの価額です。相続のときに値下がりしていても、高かったときの金額で課税されます。

3,000万円のときに贈与した財産が1,500万円に下がった場合、差の1,500万円に対する相続税121万円が無駄になります。

【値上がりするか値下がりするかで結論が変わる】

  • 値上がりした:贈与時の低い価額で課税されるので得
  • 横ばい:損得なし
  • 値下がりした:高かったときの価額で課税されるので損(この記事の例)

一度選ぶと暦年課税には戻せません。これから値上がりが見込める財産にだけ使うのが原則です。

直し方:選択済みの場合は取り消せないため、この制度で渡す財産をこれ以上増やさない判断になります。令和6年からは年110万円の基礎控除が使えるので、その範囲での贈与は相続財産に戻りません。

参照元:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

生前贈与の4つを並べる

4つの損失額を横に並べると、優先して直すべき順番が見えます。

失敗 原因 損失額 直せるか
②定期贈与 毎年同額・同時期の贈与 207万円 今年から額と時期を変える
④精算課税の評価下落 値下がりする財産に使った 121万円 取り消せない
①名義預金 管理していたのが贈与した側 78万円 通帳と印鑑を渡す
③持ち戻し 亡くなる前の贈与 26万円 早く始めるほど影響が小さい

表の見方:損失額の大きい順に並べています。右端は「今から直せるかどうか」です。

重要ポイント:金額がいちばん大きい②定期贈与は、今年から直せます。一方で④は選んだ時点で取り消せません。直せるものから手を付けてください。

名義預金・贈与・相続時精算課税は下記の記事で解説しています。

不動産・アパートの失敗|3つの損失額と直し方

不動産は評価額を下げる効果が大きいため、相続税対策の中心に据えられることが多い財産です。そのぶん失敗したときの金額も大きくなります。この記事の12の失敗のうち、最も高くつくのも不動産です。空室・否認・二次相続の3つを順に見ていきます。

⑤空室|賃貸割合が下がると減額が縮む

人に貸している土地は、自分で使っている土地より低く評価されます。ただし減額されるのは、実際に貸している部分だけです。

計算では賃貸割合という数字を使います。空室が増えると賃貸割合が下がり、減額も小さくなります。

入居の状態 賃貸割合 土地の評価額 相続税
満室 100% 4,920万円 315万円
半分が空室 50% 5,460万円 356万円

表の見方:同じ建物でも入居の状態で評価額が変わります。差は540万円、相続税で40万円です。

重要ポイント:空室は評価額だけでなく家賃収入も同時に減らします。納税資金が足りなくなる型1の失敗にもつながります。

計算ロジック:貸家建付地の評価額は自用地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で求めます。自用地6,000万円・借地権割合60%・借家権割合30%として、満室なら4,920万円、賃貸割合50%なら5,460万円です。

アパート建築による対策の判断は下記の記事で解説しています。

⑥行き過ぎた節税|通達どおりの評価が認められない

土地や建物は、国税庁が定めた通達にしたがって評価するのが原則です。ところがその通達には、「著しく不適当と認められる場合は国税庁長官の指示で評価する」という定めがあります。

総則6項と呼ばれるものです。通達どおりに計算した金額が認められず、鑑定評価で課税された事例があります。

この記事の例で、通達評価3,000万円が1億円と評価されると、課税価格が7,000万円増え、相続税は660万円増えます。12の失敗のなかで税額の増え方が最も大きい項目です。

【否認されやすい条件が重なっている状態】

  • 高齢になってから、または健康状態が悪くなってから買った
  • 借入をして買った(自己資金ではない)
  • 買ってから相続までの期間が短い
  • 相続の直後に売っている
  • 購入額と通達評価額の差が極端に大きい
  • 節税以外の目的が説明できない

直し方:すでに買っている場合、保有を続けて賃貸として実際に運用することが手当てになります。買ってすぐ売ると、節税だけが目的だったと見られやすくなります。

マンションの評価と改正後の節税効果は下記の記事で解説しています。

⑦二次相続|不動産に集中すると分けられない

財産の大半が不動産だと、分け方の選択肢が狭くなります。現金なら割れますが、建物は割れないためです。

配偶者がまとめて相続すると一次相続は安く済みますが、その不動産は次の相続でもう一度課税されます。しかも配偶者の軽減は二次相続では使えません。

この記事の条件では、一次と二次の合計が770万円と395万円に分かれ、差は375万円です。

  • 共有にする:分けられるが、売るときに全員の同意が要る。次の相続で持分がさらに細かくなる
  • 1人が相続して代償金を払う:分けられるが、払う現金が必要
  • 売って現金で分ける:分けられるが、譲渡所得税がかかる

直し方:生前に不動産の一部を現金に換えておくか、生命保険で代償金の原資を用意しておく方法があります。分けられる形にしておくことが、二次相続の負担を下げます。

配偶者にどれだけ渡すかの判断は下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.4155 相続税の税率

不動産の3つを並べる

3つの損失額を並べます。金額の桁が違う点に注目してください。

失敗 課税価格への影響 損失額 手当て
⑥行き過ぎた節税の否認 +7,000万円 660万円 保有を続けて実際に運用する
⑦二次相続の集中 — 375万円 分けられる形にしておく
⑤アパートの空室 +540万円 40万円 入居率を上げる/立地を選び直す

表の見方:⑥だけ桁が1つ大きくなります。空室は運用で改善できますが、否認は覆せません。

重要ポイント:不動産の失敗で最も高くつくのは、買ったこと自体を否認される⑥です。買う前に「節税以外の目的を説明できるか」を確かめてください。

アパート建築とマンションの評価は下記の記事で解説しています。

養子縁組・生命保険の失敗|3つの損失額と直し方

この2つは手続きが簡単です。養子縁組は役所に届けるだけ、生命保険は申込書の受取人欄を書くだけです。簡単なぶん、効果と条件を確かめないまま実行されがちです。3つの失敗はいずれも、制度の数え方を誤ったことから起きます。

⑧養子縁組|数えられる人数に上限がある

養子が増えると法定相続人が増え、基礎控除が600万円ずつ増えます。生命保険の非課税枠も500万円ずつ増えます。

ただし相続税の計算に入れられる養子の数には上限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

この上限を知らずに複数の養子を迎えても、2人目以降は基礎控除の計算に入りません。期待した効果が出ないまま、家族関係だけが複雑になります。

実子の有無 数えられる養子の数 基礎控除への影響
実子がいる 1人まで +600万円が上限
実子がいない 2人まで +1,200万円が上限

表の見方:実際に何人と養子縁組をしても、相続税の計算に入るのはこの人数までです。

重要ポイント:この記事の条件で法定相続人が1人減ると、相続税は70万円増えます。人数の見込み違いは、そのまま税額の見込み違いになります。

⑨孫養子|相続税が2割増える

孫を養子にすると、相続を1回飛ばせます。子から孫へもう一度課税される分を省けるため、効果は大きく見えます。

ところが孫養子が相続した分には、相続税が2割増しで課される決まりがあります(相続税法18条)。

この記事の条件で孫養子が2,000万円を取得すると、按分した税額63万円に2割が乗り、13万円の上乗せになります。

【2割加算の対象になる人・ならない人】

  • 対象になる:兄弟姉妹、甥姪、孫養子、内縁の相手、親族でない人
  • 対象にならない:配偶者、子、親、そして代襲相続人である孫

子がすでに亡くなっていて孫が代わりに相続する場合は、孫養子であっても2割加算の対象外です。同じ孫でも、親が生きているかどうかで扱いが変わります。

直し方:相続を1回飛ばす効果と2割加算を並べて比べます。財産が大きく、子の世代でも相続税がかかる見込みなら、2割増しでも飛ばしたほうが有利になることがあります。

参照元:国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

⑩生命保険の受取人|非課税枠が使えなくなる

死亡保険金には500万円×法定相続人の数まで非課税の枠があります。この記事の条件では1,500万円です。

この枠を使えるのは相続人が受け取った場合だけです。孫や兄弟姉妹を受取人にすると、非課税枠は1円も使えません。

枠が使えないと課税価格が1,500万円増え、相続税は121万円増えます。受取人の欄を書き換えるだけで避けられる失敗です。

受取人 非課税枠 2割加算 課税価格への影響
配偶者・子 使える なし −1,500万円
孫(代襲でない) 使えない あり +1,500万円の差
兄弟姉妹 使えない あり 同上
内縁の相手 使えない あり 同上

表の見方:受取人が相続人かどうかだけで、非課税枠と2割加算の両方が変わります。

重要ポイント:契約した当時のまま受取人を見直していない保険がないか確認してください。離婚や再婚があった場合、前の配偶者のままになっていることがあります。

計算ロジック:非課税枠は500万円×法定相続人3人=1,500万円です。これが使えないと課税価格が同額増え、相続税は315万円から436万円になります。

参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

養子縁組と生命保険の3つを並べる

3つとも、書類を1枚直すか人数を数え直すだけで避けられます。

失敗 原因 損失額 直すのにかかる手間
⑩受取人ミス 相続人でない人を受取人にした 121万円 受取人の変更手続き1回
⑧養子の人数 数えられる上限を知らなかった 70万円 人数を数え直して試算する
⑨孫養子の2割加算 加算を計算に入れていなかった 13万円 効果と加算を比べ直す

表の見方:損失額の大きい順です。右端のとおり、どれも手続き自体は重くありません。

重要ポイント:この3つは実行前に確認すれば、ほぼ確実に避けられます。相続が起きてからでは、受取人も養子の数も変えられません。

孫への相続と2割加算は下記の記事で解説しています。

遺言・分割の失敗|2つの損失額と直し方

最後の2つは税金の計算ではなく、人とお金の段取りの問題です。それでも12の失敗のなかで金額がいちばん大きいのはこの領域です。税額を数十万円削る話をしている横で、千万円単位のお金が動くことがあります。

⑪遺留分|最低限の取り分を侵すと請求される

節税を優先すると、財産を1人に寄せる遺言になりがちです。小規模宅地等の特例を使うために自宅を同居の子へ、事業を継ぐ子へ自社株を、といった形です。

ところが兄弟姉妹以外の相続人には、最低限もらえる取り分が民法で保障されています。これを遺留分といいます。

この記事の条件で子1人の遺留分は1,250万円です。遺言でゼロにしても、請求されれば支払う義務が生じます。

相続人の組み合わせ 遺留分の合計 子1人あたり(子2人の場合)
配偶者と子 遺産の2分の1 8分の1=1,250万円
子のみ 遺産の2分の1 4分の1
配偶者と親 遺産の2分の1 —
親のみ 遺産の3分の1 —
兄弟姉妹が相続人 なし —

表の見方:兄弟姉妹だけに遺留分がありません。それ以外の相続人には必ず取り分が残ります。

重要ポイント:請求されると現金で払うことになります。自宅や自社株を渡したかったのに、結局それを売って払うことになれば元も子もありません。

計算ロジック:遺留分は法定相続分の2分の1です。配偶者と子2人なら子1人の法定相続分は4分の1なので、遺留分は8分の1=1億円×8分の1=1,250万円になります。

【遺留分を侵さないための手当て】

  • 生命保険で原資を作る:受け取った保険金は原則として遺産に含まれないため、払う側の手元に現金を残せる
  • 渡す財産を組み替える:自宅は1人に、現金は他の相続人にというように分ける
  • 付言を添える:なぜその分け方にしたかを遺言に書き添える。法的な効力はないが、請求を思いとどまらせることがある
  • 生前に説明しておく:死後に初めて知る形を避ける

請求には期限があります。遺留分を侵す贈与や遺贈があったことを知った時から1年、相続開始から10年です。

遺留分と相続税の関係は下記の記事で解説しています。

参照元:e-Gov法令検索 民法(第1042条・第1048条)

⑫納税の遅れ|現金を用意していないと延滞税がかかる

相続税は原則として現金で、10か月以内に納めます。対策で不動産を増やすほど、この現金が細くなります。

納められないと延滞税がかかります。本税1,000万円を1年遅れると28万円です(年2.8%で計算)。

さらに厄介なのが連帯納付義務です。他の相続人が納められないと、自分の分を納め終えていても請求されます。

  • 延納:分割払い。担保が要り、利子税がかかる
  • 物納:物で納める。順位と要件が細かく、認められないことがある
  • 売却:現金化できるが、譲渡所得税がかかる。申告期限から3年以内なら取得費加算が使える

直し方:分け方を決める前に、各相続人がいくら納めるかと、手元にいくら現金が残るかを並べます。納税資金の確認は、分割協議より先にやるべきことです。

納税資金が足りない場合の選択肢は下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 No.9205 延滞税について

遺言・分割の2つを並べる

金額の桁が他の失敗と違います。

失敗 性質 金額 起きる時期
⑪遺留分の侵害 税金ではなく相続人への支払い 1,250万円 遺言が開かれたあと
⑫納税の遅れ 延滞税(年2.8%) 28万円 申告期限を過ぎてから

表の見方:⑪は税金ではありません。それでも12の失敗で最大の金額になります。

重要ポイント:節税だけを見て分け方を決めると、この2つを同時に踏みます。税額・分け方・納税資金の3つは、同じテーブルで決める必要があります。

遺留分と納税資金の手当ては下記の記事で解説しています。

失敗に気づいたあと、どこまで取り戻せるか

12の落とし穴のうち、踏んだら終わりというものは多くありません。いつ気づいたかによって、直せる範囲が3段階に分かれます。相続が起きる前、申告する前、申告したあとの3つです。

ここを知らないまま「もう遅い」と諦めると、取り戻せたはずのお金をそのままにすることになります。

相続が起きる前なら、ほとんど直せる

本人が元気なうちは、12のうち10までが手を入れられます。残りの2つは制度上戻せないものです。

  • 直せる:名義預金(通帳と印鑑を渡す)、定期贈与(額と時期を変える)、アパートの空室(入居率を上げる)、生命保険の受取人(変更手続き)、遺言の内容(書き直す)、納税資金(現金を確保する)
  • 戻せない:相続時精算課税の選択(一度選ぶと暦年課税に戻れない)、過去に贈与した分の持ち戻し(時間の経過を待つしかない)

受取人の変更と遺言の書き直しは、費用もほとんどかかりません。チェックで当てはまった人は、ここから着手してください。

申告前に気づいた場合|分け方でまだ調整できる

相続が起きてしまっても、申告書を出す前なら打てる手があります。分け方が決まっていない段階なら、なおさらです。

誰がどの財産を取るかで、使える特例が変わります。自宅を誰が相続するかで小規模宅地等の特例の可否が決まり、配偶者がいくら取るかで二次相続まで含めた合計が変わります。

気づいた失敗 申告前にできること
⑦二次相続の割高 配偶者の取得割合を決め直す。この記事の条件で最大375万円の差
⑪遺留分の侵害 遺言と違う分け方で全員が合意すれば、その分割が優先する
⑫納税の遅れ 納税資金のある相続人に配分を寄せる。延納・物納の申請は申告期限と同じ日まで
①名義預金 相続財産として申告する。隠すと重加算税の対象になる

表の見方:この4つは、分け方を決める段階でまだ動かせます。申告書を出すと固まります。

重要ポイント:名義預金に気づいたら、申告に含めるのが結果的にいちばん安く済みます。隠して見つかると、本来の税額に加えて重加算税がかかります。

申告後でも5年以内なら更正の請求で戻る

申告を終えたあとでも、納めすぎに気づけば返してもらえます。更正の請求という手続きです。

期限は法定申告期限から5年です(国税通則法23条1項)。相続税の申告期限が10か月なので、亡くなってから5年10か月がおおよその目安になります。

戻りやすいのは土地の評価です。形がいびつな土地、道路に接していない土地、線路や高圧線の近くの土地は、標準的な評価のまま申告されていることがあります。

【更正の請求で戻る可能性があるもの】

  • 土地を高く評価しすぎていた(不整形地・私道・広い宅地など)
  • 小規模宅地等の特例を使い忘れていた
  • 配偶者の税額軽減を使い忘れていた
  • 債務や葬式費用を引き忘れていた
  • 財産の一部を二重に数えていた

未分割だった財産が分割された場合は別の規定があり、その事由を知った日の翌日から4か月以内です(相続税法32条)。

直し方:申告書の控えと土地の評価明細書を手元に用意し、別の税理士に見てもらいます。同じ税理士に頼むと、自分の計算を否定することになるため動きにくい面があります。

申告後に評価を見直す手順は下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続

参照元:e-Gov法令検索 国税通則法(第23条 更正の請求)

取り返しがつかないもの

一方で、どの段階でも戻せないものがあります。やってはいけない対策として挙げられるのは、この4つです。先に知っておくと、実行する前の判断が変わります。

【あとから戻せない失敗】

  • ④相続時精算課税の選択:一度選ぶと暦年課税に戻せない。値下がりした分は取り戻せない
  • ⑥行き過ぎた節税の否認:買ったこと自体が問題とされるため、あとからの手当てが効きにくい
  • ⑨孫養子の2割加算:養子縁組を解消しても、相続税の計算では元に戻らないことがある
  • ⑪遺留分の侵害:請求されたら支払う。遺言で排除することはできない

この4つは「実行する前に確かめる」以外に方法がありません。金額も大きいので、着手前の確認がそのまま損失の回避になります。

気づいた時期別にできることの一覧

3つの段階を1つの表にまとめます。自分がいまどこにいるかを確認してください。

気づいた時期 直せる失敗 期限 費用の目安
相続が起きる前 12のうち10 なし 受取人変更は無料、遺言の書き直しは数万円〜
相続後・申告前 ④⑦⑪⑫など分け方で動くもの 申告期限の10か月 税理士報酬のみ
申告後 土地の評価・特例の使い忘れ 法定申告期限から5年 報酬は還付額の一部が一般的
どの段階でも戻せない ④⑥⑨⑪ — —

表の見方:上に行くほど直せる範囲が広くなります。赤い行が、時期に関係なく戻せないものです。

重要ポイント:申告を終えていても5年以内なら間に合います。「もう申告したから」と諦める必要はありません。

申告後に取り戻す方法は下記の記事で解説しています。

12の失敗の損失額を一覧で比較

ここまで個別に見てきた12の落とし穴を、同じ条件・同じものさしで並べます。金額の幅は13万円から1,250万円まであります。すべてを同じ重さで心配する必要はありません。どこから手を付けるかを決めるための表です。

12の失敗の損失額

遺産1億円・配偶者と子2人・配偶者が2分の1を取得するという同じ条件で計算しています。

失敗 何が起きるか 損失額 詳しく読む
⑪遺留分の侵害 請求されて渡す金額 1,250万円 /223/
⑥行き過ぎた節税の否認 通達評価ではなく鑑定評価で課税される 660万円 /1470/
⑦二次相続の割高 一次で配偶者に寄せすぎる 375万円 /2111/
②定期贈与 毎年同額の贈与が初年の一括贈与と扱われる 207万円 /1306/
④精算課税の評価下落 贈与時の高い価額のまま課税される 121万円 /1233/
⑩生命保険の受取人ミス 非課税枠が使えなくなる 121万円 /525/
①名義預金 子名義の口座1,000万円が相続財産に戻る 78万円 /1293/
⑧養子縁組の否認 法定相続人が減って基礎控除が縮む 70万円 /1452/
⑤アパートの空室 賃貸割合が下がって減額が縮む 40万円 /1159/
⑫納税の遅れ 延滞税(年2.8%・1年) 28万円 /1712/
③持ち戻し 亡くなる前の贈与が課税価格に戻る 26万円 /1094/
⑨孫養子の2割加算 取得した額に2割が上乗せされる 13万円 /1452/

表の見方:損失額の大きい順です。赤が300万円以上、黄色が100万円以上。右端は、その失敗を詳しく扱っている記事の番号です。

重要ポイント:上位3つで全体の7割近くを占めます。下位の項目に時間をかけるより、まず上位3つに当てはまっていないかを確かめてください。

計算ロジック:各失敗で課税価格がいくら増えるかを出し、基準の相続税315万円との差を損失額としています。②は贈与税、⑪は相続人へ支払う金額、⑫は延滞税なので、性質が他と異なります。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。

起きやすさと金額を掛け合わせる

金額が大きくても、めったに起きない失敗なら優先度は下がります。逆に金額が小さくても、ほとんどの家庭で起きるなら先に潰すべきです。

失敗 損失額 起きやすさ 優先度
①名義預金 78万円 高い(税務調査の指摘で最も多い) 最優先
⑦二次相続の割高 375万円 高い(配偶者がいれば必ず論点になる) 最優先
②定期贈与 207万円 中(毎年同額にしていると該当) 高い
⑪遺留分の侵害 1,250万円 中(寄せる遺言を書いた場合) 高い
⑥行き過ぎた節税の否認 660万円 低い(条件が重なった場合のみ) 中
⑩生命保険の受取人ミス 121万円 低い(確認すれば防げる) 中

表の見方:損失額と起きやすさの両方を見て、右端の優先度を付けています。

重要ポイント:金額が小さい①名義預金が最優先なのは、起きる確率が高いからです。相続税の税務調査で指摘される財産を種類別に見ると、現金・預貯金が最も多い割合を占めています。

どこから手を付けるか

ここまでをまとめると、着手の順番は次のようになります。

  • 1番目:通帳と印鑑の管理を確かめる(①名義預金)。書類も費用も要らず、その日に確認できる
  • 2番目:生命保険の受取人を確かめる(⑩)。変更手続きは1回で済む
  • 3番目:贈与の額と時期を変える(②定期贈与)。今年の贈与から直せる
  • 4番目:配偶者にいくら渡すかを試算する(⑦二次相続)。二次相続まで含めた計算が要るため、ここから税理士の領域
  • 5番目:遺言の内容を遺留分と照らす(⑪)。書き直しに費用がかかる

1番目から3番目までは、自分で今日から確認できます。4番目以降は計算が必要になるため、専門家と進めることになります。

そもそも相続税がいくらからかかるかは下記の記事で解説しています。

失敗を防ぐ進め方|いつ何を確認するか

12の落とし穴に共通しているのは、実行した時点では誰も間違いに気づいていないことです。確認する機会を決めておかないと、気づくのは相続が起きたあとになります。着手する前、実行したあと、そして専門家に会ったときの3つの場面でやることを決めておきます。

対策を始める前に確認する7項目

どの対策を選ぶかより先に、いまの状態を数えます。ここを飛ばして手段から入ると、型1と型2の失敗を踏みます。

【着手前に数えておく7項目】

  • 1. 法定相続人の数:戸籍で確定する。基礎控除も生命保険の非課税枠もこの数で決まる
  • 2. 財産の合計:不動産・預貯金・有価証券・生命保険金・借金を足し引きする
  • 3. 現金の割合:相続税を現金で納められるか。この記事の条件では315万円が必要
  • 4. 不動産の割合:7割を超えると分けられなくなる
  • 5. 二次相続まで含めた税額:配偶者がいるなら必ず計算する
  • 6. 相続人ごとの遺留分:寄せる遺言を書くなら先に計算する
  • 7. 相続人どうしの関係:話し合いが成立するかどうか

3と5を計算しないまま対策を始めると、型1と型2に直行します。この2つだけは手段を選ぶ前に出してください。

実行したあと毎年見直す項目

対策は一度やって終わりではありません。財産の額も家族の状況も変わるためです。

毎年1回
贈与の記録を残す
贈与契約書を作り、口座から口座へ振り込みます。額と時期は毎年変えてください。110万円を超えたら贈与税の申告も出します。

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毎年1回
財産の総額を数え直す
不動産の評価額も株価も変わります。基礎控除を超えているかどうかが入れ替わることがあります。

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3年に1回
生命保険の受取人を確かめる
契約した当時のままになっていないかを見ます。離婚・再婚・相続人の死亡があった年は必ず確認します。

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3年に1回
遺言の内容を遺留分と照らす
財産の額が変われば遺留分の金額も変わります。書いた当時は足りていても、いまは侵しているかもしれません。

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家族に変化があったとき
全部を見直す
結婚・離婚・出生・死亡・養子縁組があると、法定相続人の数が変わり、基礎控除も非課税枠も遺留分も同時に変わります。

見直しの回数を増やす必要はありません。年に1回、確定申告の時期にまとめて確認するだけで足ります。

税理士に最初に確認する5つの質問

相談したときに何を聞くかで、得られる情報が変わります。「相続税はいくらですか」だけでは、失敗は見つかりません。

【初回の相談で聞くこと】

  • 質問1:いま実行している対策のうち、否認されるおそれがあるものはありますか
  • 質問2:二次相続まで含めると、配偶者にいくら渡すのが有利ですか
  • 質問3:相続税を現金で納められますか。足りない場合はどうしますか
  • 質問4:この分け方で遺留分を侵していませんか
  • 質問5:土地の評価は誰がしますか。現地は見ますか

この5つは、12の失敗の3つの型をそのまま質問にしたものです。答えが返ってこない項目があれば、そこが確認されていない箇所です。

相続税の税務調査では、申告漏れの財産を種類別に見ると、現金・預貯金の割合が最も高くなっています。質問1で名義預金に触れられるかどうかは、実務経験を測るひとつの目安になります。

税務調査で何を見られるかは下記の記事で解説しています。

参照元:国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況

税務調査で何を見られるかは下記の記事で解説しています。

相続税対策の失敗を防ぐなら相続税の対応実績がある税理士へ|一括相談・見積り

12の落とし穴のうち、自分で確認できるのは通帳の管理と保険の受取人までです。二次相続の試算と土地の評価は、計算しないと判断できません。そしてこの2つが、金額としては最も大きく動く場所です。

相続税の対応実績がある税理士が必要な理由

相続税は、税理士なら誰でも同じ結果になる税目ではありません。土地の評価と特例の使い方で納税額が変わるため、相続税の対応実績がある税理士に依頼する必要があります。

【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】

  • 財産の洗い出し:名義預金・貸付金・海外資産など、申告漏れになりやすい財産を経験から拾い出せる
  • 微妙な判断:不整形地・私道・広い宅地など、評価を下げられるかどうかが分かれる土地を見極められる
  • 過大申告の回避:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を、二次相続まで見据えて組み合わせられる
  • やりすぎの判定:この対策は否認されるおそれがあると、実行前に止められる
  • 調査を見据えた申告:あとで税務調査になったときに説明できる形で資料を残せる

金額で言えば、この記事の12の失敗の損失額は合計2,988万円です。最大の1件だけで1,250万円あります。

一括相談・見積りのメリット

同じ条件で複数の事務所に当たると、報酬と提案の両方を並べられます。1つの事務所だけでは、その提案が妥当かどうかを確かめる手がかりがありません。

  • 同じ財産内容に対する複数の見積りを比較し、報酬の相場が分かる
  • 実行済みの対策について、否認のおそれを複数の目で見てもらえる
  • 二次相続まで含めた試算を、事務所ごとに比べられる
  • 土地の評価方針を聞き比べられる
  • 1回のフォーム入力で複数の事務所に当たれるため、期限までの時間を残せる

見積りが揃ったら、金額だけを見比べないでください。次の3点を比べると実務力が見えます。

判定ポイント1:実行済みの対策に意見を言うか
「その贈与のやり方は定期贈与とみられます」のように、すでにやったことへの指摘があるか。
→ 指摘できる事務所のほうが、否認された事例を見ていると判定できます。

判定ポイント2:二次相続まで数字を出すか
配偶者の取得割合ごとに、一次と二次の合計を出してくれるか。
→ 合計で比べる事務所のほうが、目先の税額だけで判断しないと判定できます。

判定ポイント3:土地を誰が見るか
評価を税理士本人が行うのか、現地を見るのかを確認します。
→ 現地を見る事務所のほうが、評価を下げられる要素を拾えると判定できます。

相談しないまま進めるリスク

比較せずに1つの事務所だけで進めた場合、あとから取り返せない損失が出ます。

【相談しないまま進めるリスク】

  • 報酬の相場が分からず、割高な料金のまま依頼してしまう
  • 名義預金や貸付金の見落としが残り、あとで修正申告や加算税の対象になる
  • 使えたはずの小規模宅地等の特例を見送り、過大な税額で申告してしまう
  • 二次相続を計算せずに配偶者へ寄せ、合計で375万円高くつく
  • 遺留分を侵す遺言のまま相続が起き、相続人の間で争いになる
  • 税務調査の連絡が来たときに、相談できる相手がいない

金額にすると次のとおりです。この記事の条件では、二次相続の判断を誤ると375万円、行き過ぎた節税が否認されると660万円、遺留分を侵すと1,250万円です。
この3つだけで2,285万円が、フォーム入力5分をかけるかどうかで決まります。

一括相談・見積りの手順|STEP1〜STEP4

一括見積りサービスを利用した依頼の流れは次の4段階です。

STEP1
相続の概要を整理する
被相続人の資産の内容と概算額、相続人の構成と年齢、遺言の有無をメモにまとめます。すでに実行している対策があれば、それも書き出してください。

⬇

STEP2
一括見積り・相談サービスに依頼する
希望内容(相続税対策の見直し・相続税申告・相続税の節税など)を記入し、複数の税理士(目安3〜5の事務所)への同時打診を依頼します。所有している不動産があれば所在地と広さも記載してください。「財産の種類」「相続人の人数」はできるだけ正確に伝えると見積りの精度が上がります。フォーム記入は5分程度です。

⬇

STEP3
見積りと初回相談を受ける
各事務所から「提案内容」「試算した相続税額」「報酬額」が記載された見積りが届きます。気になる事務所と初回相談を行ってください。

⬇

STEP4
税理士を選定・正式依頼する
「提案内容の質」「説明の丁寧さ」「報酬の納得性」で最適な事務所を選びます。相続開始から7ヶ月以内に決めてください。

初回相談で確認すべきチェックリスト

初回相談は報酬を聞く場ではありません。次の7点をその場で確認してください。

【初回相談で確認すること】

  • □ 相続税申告の年間件数と実績年数を確認した
  • □ 実行済みの対策に否認のおそれがないかを見てもらった
  • □ 二次相続まで含めた試算を出してもらえるかを確認した
  • □ 土地の評価を誰が行い、現地を見るかを確認した
  • □ 遺留分を侵していないかを確認してもらった
  • □ 納税資金が足りるかどうかを確認した
  • □ 税務調査になった場合の対応の有無を確認した

見積りで確認すべきチェックリスト

見積りは総額だけを見ないでください。内訳が書面になっているかが分かれ目です。

【見積りで確認すること】

  • □ 基本報酬の計算根拠(遺産額×何%か、固定額か)を確認した
  • □ 土地・非上場株式などの加算報酬の条件と金額を確認した
  • □ 生前対策の設計が報酬に含まれるかを確認した
  • □ 二次相続の試算が別料金かどうかを確認した
  • □ 税務調査の立ち会い費用が含まれるかを確認した
  • □ 総額を書面で提示してもらった
  • □ 複数の事務所の見積りと比較したうえで判断した

税理士の探し方と土地で差が出る項目は下記の記事で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子ども名義の口座を解消するにはどうすればよいですか?

通帳・印鑑・キャッシュカードを本人に渡し、本人が管理する状態にします。そのうえで今後の贈与は、契約書を作り口座から口座へ振り込みます。

過去の分は契約書を後から作れません。いったん被相続人の財産として数え直し、申告に含めるほうが結果的に安く済みます。隠して指摘されると重加算税の対象になります。

Q2. 毎年110万円の贈与は続けても大丈夫ですか?

額と時期を毎年変え、その都度契約書を作っていれば問題ありません。危ないのは「10年間で1,100万円を渡す」という取り決めが最初にあったとみられる場合です。

この記事の条件でそう判断されると、贈与税は0円から207万円になります。同じ金額を渡しても、扱いが変わるだけで結果が分かれます。

Q3. 2024年の生前贈与の改正で、過去の贈与はどうなりますか?

相続財産に戻される期間が3年から7年へ、段階的に延びます。2026年12月31日までに相続が始まった場合は3年のままです。

2027年1月1日以後に始まった相続から順次のび、2031年1月1日以後で満7年になります。延長された4年分については、合計100万円までは戻されません。

Q4. やってはいけない相続税対策とは、どんなものですか?

実態が伴っていないものです。名義だけ変えた預金、毎年同額を同時期に贈り続ける贈与、節税以外の目的を説明できない不動産の購入の3つが代表です。

いずれも税務署に否認されると、対策そのものがなかったものとして課税されます。この記事の⑥では、否認されると相続税が660万円増える計算になります。

Q5. アパートを建てる節税は今でも有効ですか?

評価額を下げる効果自体はあります。ただし実際に貸していることが前提で、空室が増えると減額の幅は縮みます。この記事の条件では賃貸割合が半分になると40万円高くなります。

また高齢になってから借入で買い、短期間で相続が起きた場合は、通達どおりの評価が認められなかった事例があります。節税以外の目的を説明できるかどうかが分かれ目です。

Q6. 相続税対策はいつから始めるべきですか?

贈与を使うなら早いほど有利です。亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に戻されるため、期間を超えた分だけが効きます。

ただし早く始めればよいというものでもありません。財産の額も家族の状況も変わるので、年に1回は数え直してください。見直さないまま続けた対策が、いつの間にか合わなくなっていることがあります。

Q7. 申告を終えたあとに失敗に気づきました。もう手遅れですか?

手遅れとは限りません。納めすぎていた場合は、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で返してもらえます。

戻りやすいのは土地の評価です。形がいびつな土地や道路に接していない土地が、標準的な評価のまま申告されていることがあります。申告書の控えと評価明細書を用意し、別の税理士に見てもらってください。

Q8. 12の落とし穴のうち、どれから手を付ければよいですか?

通帳と印鑑の管理、生命保険の受取人、贈与の額と時期の3つです。この3つは費用がかからず、自分で今日から確認できます。

配偶者にいくら渡すかの判断と、遺言と遺留分の照合は計算が必要です。ここからは専門家と進めることになります。金額としては、この後半2つのほうが大きく動きます。

まとめ|失敗は3つの型に分かれ、多くは今からでも直せる

相続税対策の失敗は、対策をしなかったことではなく「よかれと思ってやったこと」から起きます。ただし落とし穴のある場所は4か所、型は3つしかありません。

  • 落とし穴は3つの型に分かれる。納税資金が足りない/二次相続で高くなる/申告で認められない
  • 起きる場所は4か所。生前贈与・不動産・養子縁組と生命保険・遺言と分割
  • 損失額は13万円〜1,250万円。全部を同じ重さで心配する必要はない
  • 最も高くつくのは⑪遺留分の侵害1,250万円と⑥行き過ぎた節税の否認660万円
  • 最優先は①名義預金。金額は78万円だが、起きる確率がいちばん高い
  • 毎年同額の贈与は避ける。定期贈与とみられると贈与税207万円
  • 持ち戻しは3年から7年へ段階的に延びる。延長分は合計100万円まで戻されない
  • 配偶者に寄せすぎない。全部渡すと合計770万円、半分なら395万円で差は375万円
  • 養子の人数には上限がある。実子がいれば1人、いなければ2人まで
  • 生命保険の受取人は相続人にする。相続人以外だと非課税枠1,500万円が使えない
  • 相続前なら12のうち10は直せる。申告後でも5年以内なら更正の請求で戻る
  • 戻せないのは4つ。精算課税の選択・行き過ぎた節税の否認・孫養子の2割加算・遺留分

今すぐ取るべき行動

  • 今日できること:子や孫の名義の通帳と印鑑を誰が持っているかを確かめる。保険証券を出して受取人の欄を見る
  • 今年の贈与から変えること:額と時期をずらし、その都度贈与契約書を作る。口座から口座へ振り込む
  • 不動産がある場合:財産に占める割合を計算する。7割を超えているなら分けられる形に組み替える
  • 配偶者がいる場合:二次相続まで含めた税額を試算する。一次相続だけで判断しない
  • 遺言を書いている場合:各相続人の遺留分を計算し、侵していないか照らす
  • すでに申告を終えている場合:申告書の控えで土地の評価明細書を見る。法定申告期限から5年以内なら見直せる
  • 見積りを取る場合:実行済みの対策を書き出して伝え、否認のおそれがないかを3〜5の事務所に見てもらう

※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。

相続税の一括相談・見積りは相続税理士ナビ
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