


地主の相続税で最初に決めるべきなのは、対策の中身ではなく順序です。土地の使い方を変える前に、いまの財産がどう評価されるかを確認します。
同じ1億円の土地でも、自分で使えば1億円、アパートを建てれば8,200万円、人に貸していれば4,000万円で評価されます。
つまり地主の相続税は、持っている土地の量ではなく使い方の組み合わせで決まります。同じ面積でも、貸しているか自分で使っているかで税額が変わります。
土地3億円と預貯金3,000万円を子2人が相続する場合、自用地評価のままなら相続税は8,120.0万円です。評価減を積み上げると2,500.0万円まで下がります。
ただし評価が下がった土地は売りにくくなります。底地は評価額が自用地の4割まで下がる一方で、買い手が借地人か専門業者に限られます。
納税資金を作るなら、底地を整理して売れる土地に変えることになります。国税庁は借地権と底地の等価交換に固定資産の交換の特例を使えると示しています。
この記事では、最初に確認すべきこと、財産タイプ別の評価額、底地を整理する3つの方法、使える特例の判定、納税資金の作り方、分けにくい土地の分け方、対策の順序、陥りやすい失敗、相続が起きた後にできることまでを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

対策を始める前に自分の土地がどの分類に入るかを整理してください。分類が決まれば、使える対策も自動的に絞られます。
地主の相続税は土地の使い方で決まります。何をするかより先に、いま何を持っているかを把握することが出発点です。この整理ができていないと、対策の順序を間違えます。
土地の数が多い地主ほど、最初の整理に時間をかける価値があります。一覧を作るだけで、対策の候補は自然に絞られます。
必要なのは土地の一覧と、それぞれの使い方が分かる資料です。登記情報だけでは、どう評価されるかまで分かりません。
| 確認すること | 調べ方 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 所有している土地の一覧 | 名寄帳(市区町村の窓口) | 把握していない土地が出てくることがある |
| それぞれの使い方 | 賃貸借契約書・登記事項証明書 | 使い方で評価額が4割まで変わる |
| 借地権割合 | 路線価図(国税庁のホームページ) | 底地の評価額を左右する |
| 地積と形状 | 公図・測量図 | 面積の上限を判定するのに必要 |
| 預貯金などの納税資金 | 残高証明書 | 納税資金が足りるかどうかを判定する |
重要ポイント:名寄帳を取るとその市区町村にある自分の不動産をまとめて確認できます。相続で取得したまま把握していない土地が見つかることも珍しくありません。複数の市区町村に土地があるなら、それぞれで取得してください。
注意点:賃貸借契約書が見つからない、または古くて内容が分からないという地主は多くいます。契約内容が不明だと評価の前提が固まらないため、早い段階で借地人と内容を確認しておいてください。地代の額と契約期間、更新の時期を確認しておけば評価も交渉も進みます。
土地の使い方によって使える対策と使えない対策が分かれます。すでに評価が下がっている土地に、さらに評価減を重ねることはできません。
| 土地の使い方 | 評価の状況 | 主に検討する対策 |
|---|---|---|
| 自分の自宅として使っている | 自用地評価(減額なし) | 小規模宅地等の特例(330平方メートル・80%減) |
| 人に貸している(底地) | 貸宅地評価(借地権割合分が減る) | 等価交換・借地人への売却・第三者売却 |
| アパートを建てて貸している | 貸家建付地評価 | 小規模宅地等の特例(貸付事業用200平方メートル・50%減) |
| 駐車場にしている | 構築物がなければ自用地評価 | アスファルト舗装・立体駐車場化・アパート建築 |
| 使っていない更地 | 自用地評価(減額なし) | 売却・活用・納税資金への充当 |
| 子に無償で貸している | 自用地評価(使用貸借) | 賃貸に切り替えるか、贈与を検討 |
表の見方:減額されていないのは自宅・更地・青空駐車場・使用貸借の土地です。この4つが対策の対象になります。
重要ポイント:すでに評価が下がっている底地は節税ではなく流動化が課題になります。評価額は低いのに売りにくいため、納税資金の面で問題になります。相続税は評価額で計算されるのに、売却額はそれを下回るためです。
相続税の財産評価を下げる方法を財産の種類別にまとめた記事があります。

対策の順序を決めるには納税資金がいくら足りないかを先に出します。不足額が対策の規模を決めるためです。
土地3億円と預貯金3,000万円を子2人が相続する場合、自用地評価のままなら相続税は8,120.0万円です。預貯金では5,120.0万円足りません。
| 財産 | 評価額 | 納税資金になるか |
|---|---|---|
| 土地(自用地評価) | 3億円 | 売却しないとならない |
| 預貯金 | 3,000万円 | そのまま使える |
| 課税価格の合計 | 3億3,000万円 | - |
| 相続税(子2人) | 8,120.0万円 | 5,120.0万円が不足 |
計算ロジック:基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。課税遺産総額2億8,800万円を法定相続分2分の1ずつで分けて税率をかけると、相続税の総額は8,120.0万円になります。
重要ポイント:不足額が分かるとどの土地を売るか、いくら評価を下げるかの判断ができます。評価を下げる対策だけを積み上げても、納税資金がなければ土地を手放すことになります。

地主の相続税で金額を動かすのは土地の使い方による評価の違いです。路線価が同じでも、使い方で評価額は倍以上変わります。
同じ1億円の土地が、使い方によって4,000万円まで下がります。まず全体像を並べて、自分の土地がどこに入るかを確認してください。個別の計算方法は、それぞれの記事で詳しく解説しています。
自用地評価額1億円の土地を例にします。借地権割合60%・借家権割合30%の地域という前提です。
| 土地の使い方 | 評価の名前 | 評価額 | 計算 |
|---|---|---|---|
| 自分で使っている・更地 | 自用地 | 1億円 | 減額なし |
| 青空駐車場 | 自用地 | 1億円 | 構築物がないため減額なし |
| 子に無償で貸している | 自用地 | 1億円 | 使用貸借は減額なし |
| アパートを建てて貸している | 貸家建付地 | 8,200万円 | 1億円×(1−60%×30%) |
| 人に貸している(底地) | 貸宅地 | 4,000万円 | 1億円×(1−60%) |
表の見方:もっとも下がるのは人に貸している底地で、自用地の4割です。一方で自宅・更地・青空駐車場・使用貸借の土地は減額されません。減額されていない土地こそが、対策で動かせる部分です。
重要ポイント:青空駐車場は土地を貸しているのに自用地評価です。構築物がないため貸家建付地にも貸宅地にもなりません。アスファルト舗装や設備を設ければ扱いが変わります。土地の評価額そのものは変わりませんが、特例の対象になります。
底地の評価額を決めるのはその地域の借地権割合です。割合が高い地域ほど底地の評価額は低くなります。借地人の権利が強い地域ほど、地主の持ち分の価値が小さいという考え方です。
借地権割合は路線価図に記号で示されており、住宅地では60%または70%の地域が多くあります。同じ1億円の土地でも、地域によって評価額が倍以上違います。自分の土地の借地権割合は、路線価図の数字のあとに付く記号で確認します。
| 借地権割合 | 記号 | 底地の評価額 | 自用地に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 30% | G | 7,000万円 | 70% |
| 40% | F | 6,000万円 | 60% |
| 50% | E | 5,000万円 | 50% |
| 60% | D | 4,000万円 | 40% |
| 70% | C | 3,000万円 | 30% |
| 80% | B | 2,000万円 | 20% |
| 90% | A | 1,000万円 | 10% |
計算ロジック:貸宅地の評価額は自用地評価額×(1−借地権割合)です。借地権割合が90%の地域なら、底地の評価額は自用地の1割になります。
注意点:評価額が下がるのは相続税の計算上の話です。借地権割合が高いほど、底地は売りにくくなります。借地人の権利が強いため、第三者にとっての価値が小さくなるためです。
底地・貸宅地の評価方法と修正申告のリスクは、下記の記事で解説しています。

借地権割合の調べ方と4つのパターン別の計算方法は、下記の記事で解説しています。

アパートを建てると土地は貸家建付地、建物は貸家として評価されます。土地と建物の両方で評価額が下がります。
土地の評価は1億円が8,200万円になり、建物も借家権割合の分だけ下がります。加えて建築費で現金が減るため、その分も課税価格が下がります。
ただし空室があると賃貸割合が下がり、減額幅も小さくなります。満室に近い状態を保てるかどうかが、評価にも収益にも効いてきます。立地を確認せずに建てると、空室が続いて逆効果になります。
注意点:相続開始前3年以内に貸し始めた土地は小規模宅地等の特例の対象外になります。相続が近くなってからアパートを建てても、貸付事業用宅地等の50%減は使えません。
賃貸不動産の評価額を下げる方法と改正の注意点は、下記の記事で解説しています。

土地3億円・預貯金3,000万円・子2人という前提で、評価減を順に適用した場合の税額を並べます。
| 状況 | 課税価格 | 相続税の総額 | 対策前との差 |
|---|---|---|---|
| すべて自用地評価 | 3億3,000万円 | 8,120.0万円 | - |
| 底地1億円が貸宅地評価(4,000万円) | 2億7,000万円 | 5,720.0万円 | −2,400.0万円 |
| さらにアパートの土地1億円が貸家建付地(8,200万円) | 2億5,200万円 | 5,000.0万円 | −3,120.0万円 |
| さらに自宅1億円に小規模宅地等の特例(2,000万円) | 1億7,200万円 | 2,500.0万円 | −5,620.0万円 |
計算ロジック:底地は1億円×(1−60%)=4,000万円、アパートの土地は1億円×(1−60%×30%)=8,200万円、自宅は小規模宅地等の特例で1億円×20%=2,000万円になります。
表の見方:3つを合わせると課税価格が1億5,800万円下がり、税額は5,620.0万円減ります。同じ財産でも、使い方と特例の適用で税額は3分の1以下になります。
重要ポイント:この表はすでに底地とアパートを持っている地主の姿です。これから対策をする場合は、納税資金と流動性を確認したうえで順序を決める必要があります。
土地の評価額の計算手順と使える減額補正は、下記の記事で解説しています。

駐車場として貸している土地は構築物があるかどうかで扱いが分かれます。同じ駐車場でも、舗装の有無で結論が逆になります。
地面が土のままの青空駐車場は、土地を貸しているだけと扱われます。自用地評価のままで減額はなく、小規模宅地等の特例も使えません。アスファルト舗装や車止めなどの構築物を設けると、貸付事業用宅地等として200平方メートルまで50%減額できます。
| 駐車場の状態 | 土地の評価 | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|
| 青空駐車場(地面が土のまま) | 自用地評価(減額なし) | 使えない |
| アスファルト舗装をしている | 自用地評価 | 使える(貸付事業用200平方メートル・50%減) |
| 立体駐車場・機械式 | 自用地評価 | 使える(構築物があるため) |
| コインパーキング運営会社に一括で貸している | 自用地評価 | 構築物の所有者によって判断が分かれる |
重要ポイント:土地の評価額そのものは舗装をしても下がりません。変わるのは小規模宅地等の特例が使えるかどうかです。200平方メートルまで50%減額できるかどうかで税額が動きます。
注意点:舗装をしても相続開始前3年以内に貸し始めた土地は特例の対象外です。相続が近くなってから舗装しても、特例は使えません。

底地は評価額が自用地の4割まで下がる一方で、売ろうとすると買い手が限られます。評価が低いことと売りやすいことは別だという点が問題になります。
相続税は評価額で計算されるのに、納税資金は実際に売れる金額でしか作れません。この差が地主の相続でもっとも重い問題になります。整理する方法は3つあり、税務上の扱いがそれぞれ違います。どれを選ぶかで手取りも税額も変わります。
底地は地代収入が固定資産税を下回ることも珍しくありません。古い契約のまま地代を見直していない土地で起きやすい状況です。
契約が古いままだと地代が数十年前の水準で止まっていることがあります。評価額は下がっているものの、収益性も流動性も低い財産です。相続のたびに共有者が増えれば、整理はさらに難しくなります。代が変わるほど借地人との関係も薄くなり、交渉が難しくなります。
【底地を放置した場合の問題】
重要ポイント:底地の課題は節税ではなく流動化です。評価はすでに下がっているため、これ以上下げる対策よりも売れる形に変えることを考えます。納税資金を作れるかどうかが、地主の相続では最後の分かれ目になります。
国税庁は、底地の一部と借地権の一部を交換する場合に固定資産の交換の特例を使えると示しています。交換した部分に譲渡所得税がかからないという意味です。
借地権は土地と同じ種類の資産に含まれるためです。交換した部分について譲渡がなかったものとみなされ、譲渡所得税がかからないまま整理できます。売却ではないため、現金を用意する必要もありません。
国税庁が挙げている例は、時価1億円・面積800平方メートル・借地権割合60%の土地で、地主と借地人が等価交換してそれぞれの土地を更地にするケースです。
| 交換前 | 交換後 | |
|---|---|---|
| 地主が持つもの | 800平方メートルの底地 | 320平方メートルの完全な所有権 |
| 借地人が持つもの | 800平方メートルの借地権 | 480平方メートルの完全な所有権 |
| 地主の相続税評価額 | 4,000万円 | 4,000万円(変わらない) |
| 売却のしやすさ | 買い手は借地人か専門業者 | 市場で普通に売れる |
| 譲渡所得税 | - | かからない(交換の特例) |
計算ロジック:借地権割合60%なので、地主の権利は全体の40%にあたる320平方メートル分、借地人の権利は60%にあたる480平方メートル分です。等価で交換するため、評価額は交換前と同じ4,000万円です。
重要ポイント:等価交換は相続税を下げる対策ではありません。評価額は変わらないまま、売れない財産を売れる財産に変える手段です。納税資金を作る目的で使います。生前に交換しておけば、相続後に売却して納税に充てられます。
所得税法58条の特例は要件が細かく定められています。1つでも欠けると譲渡所得税がかかります。交換する前に、6つすべてを満たせるかを確認してください。要件は交換する双方に課されるため、借地人にも説明する必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1年以上所有していること | 交換する双方が1年以上持っていた固定資産であること |
| 交換のために取得したものでないこと | 交換する目的で買った土地は対象外 |
| 同じ種類の資産であること | 土地と土地、建物と建物。借地権は土地に含まれる |
| 同じ用途に使うこと | 譲渡した資産の直前の用途と同一の用途に供する |
| 差額が20%以内であること | 高い方の価額の20%を超えると特例は使えない |
| 確定申告書に記載すること | 特例の適用を受ける旨と各資産の価額を書く |
注意点:もっとも見落とされやすいのが差額が20%以内という要件です。交換する面積の割り振りを誤ると要件を外れ、譲渡所得税がかかってしまいます。
重要ポイント:確定申告書への記載も要件です。交換した年の確定申告を忘れると特例が使えません。交換の時期を決める段階で、申告まで含めた段取りを組んでください。
参照元:国税庁 No.3502 土地建物の交換をしたときの特例
借地人にとって底地を買うことは自分の土地を完全に所有することになるため価値があります。建て替えも売却も自由にできるようになるためです。
第三者に売るより高く売れる可能性があり、交渉相手も1人で済みます。借地人が買い取る資金を用意できるかが分かれ目になります。資金が足りなければ、分割払いや一部だけの売却も検討します。
| 売る相手 | 価格の傾向 | 交渉のしやすさ | 譲渡所得税 |
|---|---|---|---|
| 借地人 | 高くなりやすい | 相手が1人で済む | かかる |
| 第三者(専門業者) | 評価額を下回ることが多い | 業者が対応するので早い | かかる |
| 等価交換 | 売却ではないので価格は発生しない | 借地人の同意が必要 | かからない |
重要ポイント:売却すると譲渡所得税がかかります。所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。相続で取得した土地は被相続人の所有期間を引き継ぐため、多くの場合は20.315%になります。
注意点:相続税の申告期限から3年以内に売れば納めた相続税の一部を取得費に加算できます。相続開始から3年10か月以内が目安です。
借地人が買い取らない場合は底地を専門に扱う業者に売る選択になります。底地だけを買い取る業者が全国にあります。借地人との交渉が不要なため、手続きは早く進みます。
手続きは早く進みますが、価格は相続税評価額を下回ることが多くあります。借地人の権利が残るため、業者にとっての価値が小さくなるためです。
注意点:第三者に売ると借地人との関係は新しい所有者に引き継がれます。借地人に不利益はありませんが、事前に伝えておかないと信頼関係を損ねることがあります。
重要ポイント:3つの方法のうち納税資金を最大化したいなら等価交換のあとに売却です。交換で完全な所有権にしてから売れば、底地のまま売るより高い金額で現金化できます。

小規模宅地等の特例は複数の土地を持っている地主ほど選択が難しくなります。どの土地に使うかを選ばなければならないためです。
3つの種類があり、面積の上限も減額率も違います。どの土地に使うかで税額が変わるため、判定の枠組みを押さえてください。個別の要件は、それぞれの記事で詳しく解説しています。
特例は土地の使い方によって3つに分かれます。自宅・自分の事業・人への貸付の3つです。それぞれ限度面積と減額率が違うため、どれに使うかで税額が変わります。
| 種類 | 対象 | 限度面積 | 減額率 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 自宅の敷地 | 330平方メートル | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 自分の事業に使っている土地 | 400平方メートル | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | アパートや貸駐車場の土地 | 200平方メートル | 50% |
表の見方:もっとも有利なのは80%減額される特定居住用と特定事業用です。貸付事業用は50%減で面積も200平方メートルまでと最も小さくなります。
重要ポイント:自宅と事業用の土地だけなら330平方メートルと400平方メートルを両方まるごと使えます。合わせて730平方メートルまで80%減額できます。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
貸付事業用宅地等を選ぶと他の特例の面積が調整されます。3つを自由に組み合わせられるわけではありません。
自宅と事業用だけなら730平方メートルまで使えますが、貸付事業用を混ぜると200平方メートルの枠内で調整することになります。アパートの土地に特例を使うと、自宅に使える面積が減るという関係です。どちらに使うかは、土地の単価と面積を並べて計算します。
| 選ぶ組み合わせ | 使える面積 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 自宅+事業用のみ | 330+400=730平方メートル | 調整なしで両方まるごと使える |
| 貸付事業用を混ぜる | 200平方メートルの枠で調整する | 自宅に使える面積が減る |
重要ポイント:地主の場合は自宅に330平方メートルまるごと使うほうが有利になることが多いです。80%減と50%減では効果が大きく違うためです。ただし土地の単価によって逆転することもあるため、実際の評価額で比べる必要があります。
貸付事業用宅地等の要件と計算、駐車場の注意点は下記の記事で解説しています。

自分の事業に使っている土地の80%減額の要件は、下記の記事で解説しています。

広い土地に使えるのが地積規模の大きな宅地の評価という別の減額です。広い土地は分割しないと使いにくいという事情を反映したものです。道路を入れる分だけ有効に使える面積が減るという考え方です。
三大都市圏では500平方メートル以上、それ以外の地域では1,000平方メートル以上の宅地が対象です。道路を入れなければ分割できない土地は、その分だけ価値が下がるという考え方に基づく補正です。
重要ポイント:この補正は小規模宅地等の特例と併用できます。広い土地を持っている地主は、両方の適用を確認してください。
地積規模の大きな宅地の要件と計算方法は、下記の記事で解説しています。

農地を持っている地主は相続税の納税猶予という別の制度を検討できます。営農を続けることを条件に納税が猶予されます。
猶予されるのは、農地の評価額のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税です。宅地並みに評価される市街地農地では、猶予される金額が大きくなります。一方で営農をやめれば猶予が打ち切られるため、判断は慎重に行います。
| 判定すること | 内容 |
|---|---|
| 営農を続けるか | 続けないなら猶予は使えない。継がない選択も含めて判断する |
| どの地域か | 三大都市圏の特定市街化区域農地は終身営農が要件 |
| 生産緑地の指定があるか | 指定があると猶予の対象になる |
| 誰が農業を継ぐか | 農業相続人がいなければ猶予は使えない |
| 途中で営農をやめた場合 | 猶予された税額と利子税を納めることになる |
重要ポイント:納税猶予は営農を続けることが前提の制度です。途中でやめれば猶予された税額に利子税を加えて納めることになります。継ぐかどうかを先に決めてから使う制度です。
農地の評価方法と納税猶予、継がない選択まで下記の記事で解説しています。

納税猶予の4つの制度の要件と免除条件は、下記の記事で解説しています。


地主の相続で失敗が起きるのは評価を下げる対策だけをして納税資金を用意しないケースです。税額は下がっても、納める現金がなければ土地を手放します。
相続税は現金で納めます。土地がいくらあっても、期限までに現金化できなければ納付できません。対策の順序を決める前に、どの土地を売るかを決めておいてください。売る土地が決まっていれば、評価減の対策も安心して進められます。
現金がなければ売却・延納・物納の3つから選びます。それぞれコストと要件が違います。
| 方法 | 内容 | コスト | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 売却して現金で納める | 期限までに売って納付する | 譲渡所得税がかかる | 売れる土地がある |
| 延納 | 最長20年の分割払い | 利子税がかかる・担保が必要 | 収益物件があり毎年返済できる |
| 物納 | 土地などで納める | 収納価額は相続税評価額 | 延納でも納められない場合の最後の手段 |
重要ポイント:物納の収納価額は相続税評価額です。底地なら自用地の4割の金額でしか引き取られません。市場でそれ以上に売れるなら、売却したほうが手元に残ります。物納は最後の手段だと考えてください。
注意点:物納は延納でも納付が難しい場合に限って認められます。現金があるのに物納を選ぶことはできません。売れる土地があるかどうかも判断材料になります。
物納の要件と延納・売却の3択の比較は、下記の記事で解説しています。

延納は担保を提供して分割払いにする方法です。不動産が多い地主は最長20年まで延ばせます。
ただし利子税がかかります。毎年の返済に見合う収益があるかどうかが判断の分かれ目です。アパートの家賃収入で返せるなら延納、収益がないなら売却して一括で納めるほうが負担は軽くなります。利子税を20年払い続けるより、譲渡所得税を一度払うほうが安いこともあります。
| 判断の材料 | 延納が向いている | 売却が向いている |
|---|---|---|
| 収益物件があるか | 家賃収入で毎年返済できる | 収益がほとんどない |
| 売りたくない土地か | 手放したくない土地が中心 | 使っていない土地がある |
| 担保を出せるか | 不動産を担保に提供できる | 担保に適した財産がない |
| コスト | 利子税がかかる | 譲渡所得税がかかる |
重要ポイント:延納の期間は不動産などの割合が課税価格の75%以上なら最長20年です。割合が低いほど期間は短くなります。地主の場合は不動産の割合が高いため、長い期間を選べることが多いです。割合は課税価格に対する不動産等の価額で判定します。
注意点:延納を申請するには申告期限までに申請書と担保の書類を提出する必要があります。期限を過ぎてから延納を申し出ることはできません。
売る土地は評価が下がっていない土地から選びます。評価減の効果を捨てずに現金を作れるためです。
評価が下がっている底地や貸家建付地を売ると、相続税を減らす効果を捨てることになります。一方で更地や青空駐車場は評価が下がっていないため、売っても失うものがありません。収益もないため、持ち続ける理由も小さい土地です。
| 優先度 | 売る土地 | 理由 |
|---|---|---|
| 1番目 | 使っていない更地 | 自用地評価で減額がなく、収益もない |
| 2番目 | 青空駐車場 | 自用地評価のまま。収益も小さい |
| 3番目 | 収益性の低い底地 | 地代が固定資産税を下回っているもの |
| 最後 | 自宅・収益性の高いアパート | 特例や評価減の効果が大きい |
重要ポイント:自宅を売ると小規模宅地等の特例が使えなくなります。330平方メートルまで80%減額される効果を失うため、売却の候補としては最後に回します。自宅を残しながら納税する道を先に探します。
参照元:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
注意点:相続税の申告期限までに売る場合、小規模宅地等の特例は申告期限まで所有していることが要件のものがあります。特例を使う土地を期限前に売ると、特例そのものが使えなくなります。
相続が起きてから慌てないためには生前に現金化しておくのが確実です。相続後は期限に追われて安く売ることになります。
【生前にできる納税資金の準備】
重要ポイント:生命保険は遺産分割を経ずに受取人が受け取れます。遺産分割がまとまらなくても納税資金として使えるため、土地が多い地主ほど有効です。受取人を納税する人にしておくと、そのまま納付に充てられます。

地主の相続でもう1つ重いのが土地を相続人でどう分けるかです。評価額が同じでも、使いやすさは土地ごとに違います。
土地は預貯金のように等分できません。分け方を決めないまま共有にすると、次の相続で問題が大きくなります。
とりあえず共有にする分け方は問題を先送りするだけです。解決を次の世代に回すことになります。
売却も建て替えも共有者全員の同意が必要になります。相続のたびに共有者が増えるため、2代先にはいとこどうしの共有になり合意そのものが難しくなります。面識のない相手に印鑑をもらうことになります。
注意点:共有名義の不動産は相続税の評価では減額されません。全体の評価額に持分割合を掛けるだけなので、共有にすることで税額が下がることはありません。
共有名義の不動産の評価と共有を解消する方法は、下記の記事で解説しています。

土地を1人が取得し他の相続人に代償金を払うのが実務的な方法です。土地を分割せずに公平さを保てます。
自宅や収益物件を残したまま、公平さを保てます。ただし代償金を払う資力が必要になるため、納税資金とあわせて資金計画を立てることになります。代償金と相続税の納付が同じ時期に重なるためです。
重要ポイント:代償分割をしても相続税の総額は変わりません。相続人どうしの負担割合が動くだけです。代償金の額を時価で決めた場合は、申告で調整計算を選べます。
代償分割の代償金の決め方と相続税の計算は、下記の記事で解説しています。

分けにくい財産が多い地主ほど遺言の効果が大きくなります。協議に委ねると、まとまらないまま期限を迎えることがあります。土地の数が多いほど、合意までの調整も長引きます。
誰がどの土地を取得するかを決めておけば、相続人が協議で揉めることがありません。小規模宅地等の特例を使える人に自宅を取得させる設計もできます。協議に任せると、特例を使えない人が自宅を取得することもあります。
| 遺言がない場合 | 遺言がある場合 |
|---|---|
| 相続人全員の協議が必要 | 遺言のとおりに分けられる |
| まとまらないと未分割申告になる | 特例をそのまま使える |
| 特例を使えない人が土地を取得することもある | 特例を使える人に取得させられる |
| 共有にして先送りしがち | 共有を避けた分け方を指定できる |
注意点:遺言でも遺留分は侵せません。土地に偏った内容にすると、遺留分侵害額請求で現金の支払いが必要になります。遺留分に相当する現金を用意しておくと揉めにくくなります。生命保険で用意しておく方法もあります。

地主の相続税対策で順序を間違えると取り返しがつかなくなります。アパートを建ててしまえば、元に戻すことはできません。
評価を下げる対策から始める人が多いのですが、納税資金と分け方を先に決めないと、結果として土地を手放すことになります。守りたかった土地を売るという、逆の結果になりがちです。
確認・納税資金・分け方・評価減の順で進めます。評価減は最後です。
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重要ポイント:評価減を最後にする理由は評価が下がった土地は売りにくくなるためです。納税資金を確保する前にアパートを建てると、納税のために収益物件を売ることになります。収益を失えば、その後の生活設計も崩れます。
順序を間違えやすいのはアパート建築と法人化です。どちらも先にやると後戻りできない対策です。
| 対策 | 先にやると起きること | 正しい順序 |
|---|---|---|
| アパート建築 | 納税資金がなくなり、相続後に売ることになる | 納税資金を確保してから |
| 法人化 | 移転コストがかかり、効果が出るまで時間がかかる | 財産規模と収益を確認してから |
| 更地の売却を後回しにする | 相続後に急いで売って安くなる | 生前に売っておく |
| 底地の整理を後回しにする | 相続後に現金化できず物納か延納になる | 生前に等価交換または売却する |
重要ポイント:アパート建築は相続開始前3年以内だと小規模宅地等の特例が使えません。相続が近くなってから建てても、貸付事業用宅地等の50%減は適用できません。貸家建付地としての評価減は使えるため、効果が半分になるという意味です。
不動産の法人化で相続税が下がるかどうかの判断基準は、下記の記事で解説しています。

地主の相続で実際に起きている失敗を挙げます。いずれも順序を間違えたことが原因です。
【地主が陥りやすい5つの失敗】
重要ポイント:もっとも金額に響くのは相続直前のアパート建築です。貸家建付地としての評価減は使えますが、小規模宅地等の特例の50%減が使えないため、想定していた効果の半分程度になります。

生前に対策をしていなくても申告までにできることがあります。10か月のあいだに判断できることは少なくありません。
土地の評価は判断が分かれる部分が多く、見直しで下がることも珍しくありません。期限があるものから順に確認してください。
評価の見直しは申告前でも申告後でもできます。申告前なら評価に反映させ、申告後なら更正の請求で還付を受けます。
地主の相続では土地の評価額が税額のほとんどを決めます。財産の大半が土地だからです。
形が悪い土地、道路に接していない土地、崖地を含む土地などは評価額を下げられます。広い土地なら地積規模の大きな宅地の評価も使えます。複数の補正を重ねられる土地もあります。
【評価を下げられる可能性がある土地】
重要ポイント:これらの補正は現地を見ないと判断できません。登記情報と路線価だけで計算すると、使えるはずの補正を落とします。地主の相続では、この差が数百万円単位になります。現地調査を業務に含めているかどうかで税理士を選ぶ理由になります。
納税資金が足りない場合は申告期限までに売却するかを判断します。売る時期によって使える特例が変わります。
相続税の申告期限から3年以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。相続開始から3年10か月以内が目安です。売る予定があるなら、この期限を先に控えておいてください。
注意点:小規模宅地等の特例を使う土地は申告期限まで所有していることが要件のものがあります。特例を使う予定の土地を期限前に売ると、特例が使えなくなります。
重要ポイント:どの土地を売るかは特例の適用とあわせて判断してください。売る順番を決めるだけで、納税額が変わることもあります。
相続した不動産を売却したときの税金と特例は、下記の記事で解説しています。

土地が多い地主の相続では10か月で分割がまとまらないことがあります。土地の数が多いほど協議に時間がかかります。
その場合は法定相続分で分けたものとして申告します。ただし未分割では小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えません。
申告書と一緒に申告期限後3年以内の分割見込書を出しておけば、分割後に更正の請求で取り戻せます。土地が多い地主の相続では、この段取りを前提に準備します。
重要ポイント:分割見込書は申告書と同時に出さなければ意味がありません。後から出せるのは税務署長がやむを得ないと認めた場合だけで、出し忘れると原則として特例を使えないまま確定します。税務署から提出漏れを指摘してくれることもありません。
相続が起きてからの10か月で土地の評価と分割の両方を終えることになります。土地が多い地主にとっては短い期間です。
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重要ポイント:土地が多い地主の相続では評価だけで2か月以上かかります。相続開始から3か月を過ぎてから税理士を探し始めると、分割と納税資金の検討に十分な時間が残りません。
参照元:国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
すでに申告を終えていても評価が高すぎた場合は更正の請求ができます。払いすぎた分は還付されます。
期限は申告期限から5年以内です。土地の評価に補正の漏れがあった場合や、広大地や不整形地の判断を誤っていた場合が対象になります。地主の相続では、還付される金額が数百万円になることもあります。
注意点:還付を受けられるかどうかは評価の根拠をどこまで示せるかで決まります。現地の状況や公図を確認したうえでの再評価が必要になるため、不動産の評価に慣れた税理士に依頼することになります。
不動産の評価見直しで還付を受ける方法は、下記の記事で解説しています。


地主の相続税は土地の評価と特例の設計で数千万円変わります。複数の税理士から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
地主の相続では土地の評価・特例の選択・納税資金・分け方が同時に絡みます。評価を誤ると、そこから先の金額すべてがずれます。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば土地3億円(自用地評価)と預貯金3,000万円を子2人が相続する家庭を考えます。
A税理士は土地をすべて自用地評価のまま申告しました。課税価格は3億3,000万円で、相続税は8,120.0万円になります。
B税理士は底地を貸宅地評価、アパートの土地を貸家建付地評価とし、自宅に小規模宅地等の特例を適用しました。課税価格は1億7,200万円まで下がり、相続税は2,500.0万円です。5,620.0万円の差が生まれています。
比べるべきなのは土地の評価にどこまで踏み込むかです。評価額が違えば、そこから先の金額はすべて変わります。
判定ポイント1:現地や公図を確認するか見積りに「現地調査」「公図・測量図の確認」が入っているかを見てください。→ 登記情報だけで計算する事務所は、不整形地補正や無道路地の判断ができません。
判定ポイント2:特例の使い分けを提案するか「自宅と賃貸のどちらに特例を使いますか」と聞いてくるかどうかです。→ 面積の調整まで説明できる事務所とそうでない事務所で税額が変わります。
判定ポイント3:納税資金の話が出てくるか評価を下げる提案だけの事務所と、どの土地を売るかまで示す事務所があります。→ 地主の相続では、納税資金の設計まで含めないと最後に困ります。
地主の相続は評価を誤っても税務署から教えてもらえません。
【相談しないまま進めた場合のリスク】
納めすぎた税金を取り戻すには更正の請求が必要で、申告期限から5年を過ぎると請求できなくなります。複数の事務所から見積りを取っていれば、評価の違いはその時点で見えます。
見積りはフォームの記入5分から始められます。
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重要ポイント:STEP1で土地ごとの使い方を整理しておくことが、見積りの精度を大きく左右します。自用地・底地・アパートの土地で評価額が4割まで変わるためです。
土地の評価額と相続人の数で決まります。土地3億円と預貯金3,000万円を子2人が相続する場合、自用地評価のままなら相続税は8,120.0万円です。
底地を貸宅地評価、アパートの土地を貸家建付地評価とし、自宅に小規模宅地等の特例を適用すると2,500.0万円まで下がります。同じ財産でも評価の仕方で5,620.0万円変わります。
自用地評価額に(1−借地権割合)を掛けます。自用地評価額1億円で借地権割合が60%の地域なら、底地の評価額は4,000万円です。
借地権割合は路線価図に記号で示されており、記号Dが60%、Cが70%です。割合が高い地域ほど底地の評価額は低くなります。
売れますが、買い手は借地人か専門業者に限られます。借地人の権利が強く、第三者にとっての価値が小さいためです。相続税評価額を下回る価格になることも珍しくありません。
借地人と等価交換をすれば、評価額は変わらないまま完全な所有権に変えられます。国税庁は借地権と底地の交換に固定資産の交換の特例が使えると示しており、譲渡所得税もかかりません。
下がります。自用地評価額1億円の土地にアパートを建てると、貸家建付地として8,200万円で評価されます。建築費で現金が減る分も課税価格が下がります。
ただし相続開始前3年以内に貸し始めた土地は、小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等の対象になりません。相続が近くなってから建てても、想定していた効果の半分程度にとどまります。
財産の把握と評価の確認、納税資金の確保、分け方の設計、評価減の対策という順序です。評価減は最後に着手します。
評価が下がった土地は売りにくくなるためです。納税資金を確保する前にアパートを建てると、相続後に納税のために収益物件を売ることになります。
地主の相続税は土地の使い方で決まります。ただし評価を下げる対策から始めると、納税資金が用意できないまま相続を迎えることになります。
この記事の要点をまとめます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページや税理士にご確認ください。