


内縁(事実婚)のパートナーには、法律上の相続権がありません。何十年連れ添い、共に財産を築いてきた関係であっても、婚姻届を提出していなければ、遺言書がない限り財産は一切渡りません。
さらに、仮に遺言書で財産を残せたとしても、法律婚の配偶者が受けられる相続税の優遇措置(配偶者控除・小規模宅地等の特例・非課税枠など)が一切使えず、大きな税負担が生じます。
この記事では、内縁・事実婚パートナーの相続税上の立場、法律婚と比べてどれだけ不利になるか、内縁パートナーに財産を残す5つの方法、ケース別のシミュレーション、養子縁組と遺言書の実務設計まで、順序立てて解説します。
対策は相続発生前にしかできないため、早めに全体像を把握して行動することが重要です。
▼ この記事の3行まとめ

内縁・事実婚とは、婚姻の意思を持ち実態として夫婦同様の共同生活を送っているものの、法律上の婚姻届を提出していない関係を指します。日本の相続法・税法では法律婚を基準としているため、内縁パートナーは「他人」として扱われるという厳しい現実があります。
日本の民法では、相続人になれるのは法律上の配偶者と血族(子・父母・兄弟姉妹)に限られます。内縁の配偶者はこのどちらにも当てはまらないため、法定相続人になることができません。被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、内縁パートナーは一切の財産を取得する権利がありません。
| 比較項目 | 法律婚の配偶者 | 内縁・事実婚のパートナー |
|---|---|---|
| 法定相続権 | あり(常に相続人になる) | なし(遺言がなければゼロ) |
| 遺産分割協議への参加 | 参加できる | 参加できない |
| 遺留分(最低限の取得権利) | あり(法定相続分の1/2) | なし |
| 寄与分の請求 | できる | できない |
| 特別寄与料の請求 | できない(相続人のため) | 相続人でないため請求可能(要件あり) |
たとえば、20年間同居し、家事・介護・生活費の分担など「夫婦同然」の生活を送っていても、遺言書がなければ内縁パートナーへの財産移転はゼロです。一方、被相続人と長年疎遠だった法律上の兄弟姉妹が相続人として財産を受け取ることになります。
内縁パートナーに財産を残すためには、生前に必ず遺言書・生命保険・養子縁組などの対策を講じておく必要があります。相続発生後の対策は原則として不可能です。
遺言書で財産を内縁パートナーに残せたとしても、法律婚の配偶者が受けられる税務上の優遇措置が一切使えないため、相続税の負担が大幅に増えます。主な不利は以下の3点です。
| 優遇措置 | 法律婚の配偶者 | 内縁パートナー | 差額の影響 |
|---|---|---|---|
| 相続税の2割加算 | 加算なし | 2割加算あり | 税額が20%増加 |
| 配偶者の税額軽減 | 最大1億6,000万円まで非課税 | 使えない | 数百万〜数千万円の差 |
| 小規模宅地等の特例 | 居住用330㎡まで80%減額 | 原則使えない | 土地評価が大幅に上がる |
| 生命保険・退職金の非課税枠 | 500万円×法定相続人数 | 使えない | 全額が課税対象 |
これらの不利が重なると、同じ財産を受け取るのに、法律婚の場合より相続税が数倍高くなることがあります。遺言書で財産を残せても、税負担を軽減する手段がなければパートナーを苦しめる結果になりかねません。
内縁パートナーへの財産承継は「どうやって渡すか」だけでなく「いかに税負担を下げるか」を同時に設計することが重要です。
内縁・事実婚のカップルの間に生まれた子(婚外子・非嫡出子)は、被相続人である父親が認知することで法定相続人になれます。2013年の最高裁判決および民法改正により、認知された婚外子の相続分は嫡出子(法律婚の子)と同等になっています。
認知の方法には「任意認知」(父親が自ら役所に届け出る)と「強制認知」(裁判による認知)があります。内縁のカップルの子を法定相続人にするためには、必ず父親が生前に認知の手続きを行う必要があります。
| 子の区分 | 法定相続権 | 相続分 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 内縁パートナーとの間の子(認知あり) | あり | 嫡出子と同等 | 父親の認知が必要 |
| 内縁パートナーとの間の子(認知なし) | なし | — | 認知または養子縁組が必要 |
| 法律婚の前の子(前の配偶者との子) | あり(被相続人の子として) | 嫡出子と同等 | — |
内縁関係の子が未認知の場合、父親の死亡後は任意認知ができなくなります。認知手続きは父親の生前に必ず完了させてください。

内縁パートナーが遺言や生命保険によって財産を受け取った場合、法律婚の配偶者には認められるさまざまな相続税の優遇措置が適用されません。それぞれの不利の内容と、法律婚との税負担の差を具体的に確認しましょう。
被相続人の配偶者・一親等の血族(子・父母)以外の者が相続または遺贈により財産を取得した場合、相続税額に20%が加算される「2割加算」の制度があります(相続税法第18条)。
内縁パートナーは法律上の配偶者でも一親等の血族でもないため、2割加算の対象になります。
| 財産を受け取る人 | 2割加算の有無 | 税額の違い(計算前の税額100万円の場合) |
|---|---|---|
| 法律婚の配偶者 | なし | 100万円 |
| 子・父母(一親等の血族) | なし | 100万円 |
| 内縁パートナー | あり(+20%) | 120万円 |
| 兄弟姉妹・孫(養子なし) | あり(+20%) | 120万円 |
たとえば遺言で内縁パートナーに5,000万円の財産を遺贈した場合、相続税が仮に400万円になるとすると、2割加算後の納税額は480万円になります。法律婚の配偶者と比べて80万円余分に課税されることになります。
養子縁組によって内縁パートナーを養子にするか、内縁パートナーの子を養子にすることで、この2割加算を合法的に回避できます。詳細は後述の「養子縁組を活用した相続税対策」で解説します。
法律婚の配偶者には「配偶者の税額軽減」という強力な優遇措置があります。配偶者が相続した財産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い金額まで相続税が非課税になります。
内縁パートナーはこの制度の対象外のため、どれだけ多くの財産を遺贈されても全額が課税対象になります。
| 受取額 | 法律婚の配偶者の税額 | 内縁パートナーの税額(子1人の場合) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 0円(控除内) | 約195万円(2割加算後) | 195万円 |
| 5,000万円 | 0円(控除内) | 約468万円(2割加算後) | 468万円 |
| 1億円 | 0円(控除内) | 約1,080万円(2割加算後) | 1,080万円 |
法律婚の配偶者であれば1億6,000万円まで相続税ゼロで受け取れますが、内縁パートナーは数千万円の遺贈でも数百万円の相続税がかかります。長年連れ添ったパートナーへの配慮が、税法上は全く認められていない現状があります。
配偶者の税額軽減は法律婚をしなければ使えません。内縁関係を維持するのか、婚姻届を提出するのかは、相続税の負担も含めて総合的に判断することが重要です。
法律婚の配偶者は、被相続人と同居していた自宅の土地について「小規模宅地等の特例」を適用でき、330㎡まで土地評価額を80%減額できます。配偶者は要件なし(同居・保有継続の条件も不要)で適用可能です。
内縁パートナーは「配偶者」として認められないため、この特例を同様に適用することができません。ただし、内縁パートナーが一定の要件(「家なき子特例」の要件に類似した条件)を満たせば適用できる場合もありますが、実務上は難しいケースが多いです。
| 自宅の土地評価額 | 法律婚の配偶者(特例あり) | 内縁パートナー(特例なし) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円(330㎡以内) | 1,000万円(80%減額後) | 5,000万円(減額なし) | 4,000万円の評価差 |
| 3,000万円(330㎡以内) | 600万円(80%減額後) | 3,000万円(減額なし) | 2,400万円の評価差 |
自宅を内縁パートナーに残したい場合、小規模宅地等の特例が使えない分だけ相続税の負担が大幅に増えます。この問題を解決するためには、生前に婚姻届を提出するか、遺言書の作成に加えて相続税の試算を行い、納税資金を確保しておくことが必要です。
法定相続人が受け取った死亡保険金・死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。しかし内縁パートナーは法定相続人でないため、この非課税枠が適用されません。
内縁パートナーを死亡保険金の受取人に指定した場合、受け取った保険金の全額が相続税(みなし相続財産)の課税対象になります。さらに2割加算も適用されるため、法律婚の場合と比べて大きく不利になります。
| 受取人 | 非課税枠 | 1,500万円の保険金を受け取った場合の課税額 |
|---|---|---|
| 法律婚の配偶者(法定相続人3人の場合) | 1,500万円(全額非課税) | 0円 |
| 内縁パートナー | なし(全額課税) | 全額が課税対象+2割加算 |
内縁パートナーを生命保険の受取人に指定する場合、非課税枠が使えない点を踏まえた上で、相続税の納税資金として活用する設計にすることが重要です。

相続権がない内縁パートナーに財産を渡すための方法は5つあります。それぞれ効果・メリット・デメリット・税務上の取り扱いが異なるため、状況に応じて組み合わせることが最善です。
最も確実で基本的な方法が、遺言書による「遺贈」です。遺言書に「内縁パートナーの氏名に〇〇(財産の内容)を遺贈する」と記載することで、法的に財産を渡すことができます。法定相続人でない内縁パートナーへの財産承継は、遺言書なしには実現しません。
| 遺言書の種類 | メリット | デメリット | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 無効になるリスクが最も低い。原本が公証役場に保管される | 費用がかかる(財産額による) | ◎(強く推奨) |
| 自筆証書遺言 | 費用がかからない | 形式不備で無効になるリスクがある。紛失・改ざんのリスク | △ |
| 自筆証書遺言(法務局保管制度) | 法務局が保管するため紛失リスクなし | 形式不備のチェックは限定的 | ○ |
遺言書で全財産を内縁パートナーに遺贈する場合、法定相続人(子・父母など)の「遺留分」を侵害すると、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分は法定相続分の1/2で、これを下回る相続人に対して遺贈することは避けるべきです。
遺言書は最も重要な対策ですが、遺贈を受けた内縁パートナーは2割加算の対象になります。遺言書の作成と同時に、相続税の試算と納税資金の確保を行ってください。
生前贈与は、内縁パートナーへの財産移転として有効な手段です。年間110万円以下の贈与は贈与税がかかりません(暦年贈与の非課税枠)。毎年計画的に贈与することで、相続財産を少しずつ減らすことができます。
重要なポイントは、2024年の税制改正で「相続発生前7年以内の贈与を相続財産に加算する」ルール(生前贈与加算)が強化されましたが、この加算は相続人への贈与にのみ適用されます。内縁パートナーは相続人ではないため、何年前の贈与でも相続財産への加算は行われません。
| 比較項目 | 相続人への生前贈与 | 内縁パートナー(相続人以外)への生前贈与 |
|---|---|---|
| 生前贈与加算 | 相続発生前7年以内の贈与が加算される | 加算されない(何年前でも) |
| 贈与税の非課税枠 | 年間110万円まで非課税 | 同じく年間110万円まで非課税 |
| 相続税申告への影響 | 加算分が課税遺産総額に含まれる | 影響なし |
内縁パートナーへの生前贈与は、相続人への贈与と異なり相続財産への加算がありません。長期にわたって計画的に贈与することで、相続発生時の財産を効率的に移転できます。
生命保険の死亡保険金の受取人に内縁パートナーを指定することで、確実に財産を渡すことができます。保険金は遺産分割の対象外のため、他の相続人が受け取りを妨げることができません。ただし非課税枠は適用されず、保険金の全額が相続税の課税対象になります。
一時払い終身保険を活用する場合、被相続人が加入して内縁パートナーを受取人に指定することで、被相続人死亡時に即座に保険金が支払われます。遺産分割協議が不要で、10か月以内に比較的迅速に受け取れる点もメリットです。
生命保険は「確実に渡せる」「遺産分割の対象外」という強みがありますが、内縁パートナーは非課税枠が使えません。相続税の納税資金として活用する場合は、税額を事前に試算して必要な保険金額を設定することが重要です。
被相続人に法定相続人が誰もいない場合、内縁パートナーは「特別縁故者」として家庭裁判所に財産分与を申し立てることができます。特別縁故者とは、被相続人と特別の関係にあった人物として、家庭裁判所が財産の全部または一部を分与することを認める制度です。
特別縁故者として認められる主な要件:
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 申立期間 | 相続人不存在が確定した後3か月以内 |
| 認められる条件 | 法定相続人が全くいない場合(または相続放棄等でゼロになった場合) |
| 取得できる財産 | 家庭裁判所が認めた範囲(必ずしも全額ではない) |
| 課税上の取り扱い | 相続税の対象。2割加算あり |
特別縁故者の申立ては、法定相続人がいる場合には利用できません。また申立てが認められる保証もないため、この方法だけに頼ることは危険です。特別縁故者の申立ては補完的な手段と位置づけ、遺言書・生命保険などの確実な対策と組み合わせることが重要です。
養子縁組は、内縁パートナーへの相続税対策として最も効果的な方法の一つです。養子縁組によって、内縁パートナーまたはそのお子さんが法的に「子」(一親等の血族)になることで、2割加算を回避できます。
養子縁組の選択肢は主に2つあります。
| 養子縁組の方法 | 2割加算 | 相続権 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 内縁パートナー自身を養子に | なし(一親等の血族) | あり(子として) | 最も直接的な対策 | 年齢・社会的関係の違和感がある場合も |
| 内縁パートナーの子を養子に | 子はなし(孫養子は2割加算あり) | あり(子として) | パートナーの子に確実に財産を渡せる | パートナー本人への直接の相続権はない |
養子縁組は戸籍に記載されるため、他の相続人(実子など)との関係に影響が生じる場合があります。また離縁(養子縁組の解消)されるリスクも考慮が必要です。養子縁組を行う場合は必ず弁護士・税理士に相談してから進めてください。

対策の有無・種類によって、内縁パートナーへの財産移転に伴う相続税額は大きく変わります。5つのパターンで具体的な税額を確認しましょう。なお試算はすべて概算であり、実際の申告では個別の計算が必要です。
前提条件
結果
遺言書がない場合の最悪のシナリオです。内縁パートナーは長年の生活の場を失うだけでなく、財産も一切受け取れません。このリスクを回避するためには、必ず生前に公正証書遺言を作成することが必要です。
前提条件
計算の流れ(子1人が法定相続人)
遺言で財産を渡せても2割加算により192万円の相続税が発生します。法律婚の配偶者であれば配偶者控除で0円になる場合が多いため、その差は歴然です。
前提条件(同一財産・同一家族構成)
| 比較項目 | 法律婚の配偶者(配偶者1/2取得) | 内縁パートナー(遺言で全額遺贈) |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 4,200万円(相続人2人) | 3,600万円(相続人1人) |
| 課税遺産総額 | 3,800万円 | 4,400万円 |
| 相続税総額 | 約580万円 | 約620万円 |
| 配偶者控除適用後の配偶者分 | 0円 | 対象外 |
| 2割加算 | なし | あり(+20%) |
| 内縁パートナー(配偶者)の実際の納税額 | 0円 | 約744万円(2割加算後) |
同じ財産を受け取っても、法律婚の配偶者は0円・内縁パートナーは744万円の相続税という大きな差が生じます。法律婚との税負担の差を理解した上で、婚姻届の提出を含む選択肢を検討することが重要です。
前提条件
内縁パートナーの生命保険金の課税計算
法律婚の配偶者が同額の保険金を受け取った場合(非課税枠1,500万円適用、配偶者控除適用)は0円になるケースが多く、大きな差があります。
前提条件
計算の流れ
パターン2(遺言のみ・2割加算あり)の192万円と比べて、養子縁組を組み合わせることで大幅な節税が可能です。養子縁組による2割加算の回避は、相続税法上合法的に認められた節税方法です。内縁関係がある場合の有力な対策として検討してください。

内縁パートナーへの財産承継において、遺言書は最も基本かつ重要な手段です。ただし、適切に設計しなければ遺留分の問題が生じたり、無効になるリスクもあります。実務上のポイントを確認しましょう。
遺留分とは、法定相続人(配偶者・子・直系尊属)が最低限受け取れる権利のことです。遺言書で全財産を内縁パートナーに遺贈しても、法定相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分の割合:法定相続分 × 1/2
遺留分を侵害しないためには、最低限「遺留分相当額を法定相続人に残し、残りを内縁パートナーに遺贈する」という設計が必要です。
遺留分を超える遺贈は「侵害できない」のではなく「侵害額の請求を受ける可能性がある」という意味です。内縁パートナーとの関係が法定相続人に受け入れられている場合は、法定相続人が遺留分請求をしない合意書(遺留分の放棄)を生前に取り交わすことも選択肢になります。
内縁パートナーへの遺言書は、公正証書遺言の形式で作成することを強く推奨します。自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあり、相続人が内縁パートナーへの遺贈に反対している場合には遺言書の有効性を争われることがあります。
| 比較項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 公証役場で公証人が作成 | 全文を自筆で書く |
| 費用 | 財産額に応じた手数料(数万円〜) | ほぼ無料(法務局保管なら手数料あり) |
| 無効リスク | 非常に低い | 形式不備で無効になるリスクあり |
| 家庭裁判所の検認 | 不要 | 必要(法務局保管の場合は不要) |
| 紛失・改ざんリスク | 原本が公証役場に保管(リスクなし) | あり |
公正証書遺言は証人2人が立会いのもと作成するため、法的な有効性が高く安心です。費用はかかりますが、内縁パートナーへの財産承継という重要な目的に使う遺言書として最適な形式です。
遺言書を作成する際には、「遺言執行者」を指定しておくことが重要です。遺言執行者とは、遺言書の内容を実行する権限を持つ人物です。内縁パートナーへの遺贈を確実に実行するためには、信頼できる人物(弁護士・司法書士・税理士など)を遺言執行者に指定しましょう。
法定相続人が遺言の内容に反対している場合でも、遺言執行者が選定されていれば遺言の執行を妨害されにくくなります。内縁パートナーへの遺贈では、専門家を遺言執行者に指定することをお勧めします。

養子縁組は、内縁パートナーへの相続税対策として2割加算の回避・基礎控除の増加・相続権の付与という3つの効果をもたらします。ただし慎重に設計する必要があるため、メリットとリスクを正確に把握しましょう。
相続税の2割加算は「被相続人の配偶者・一親等の血族以外の者」が対象です。養子縁組によって内縁パートナーまたはその子が「一親等の血族(子)」になれば、2割加算の対象から外れます。
| 養子縁組の前後 | 内縁パートナーの立場 | 2割加算 | 相続権 |
|---|---|---|---|
| 養子縁組前 | 他人 | あり(2割加算) | なし(遺言が必要) |
| 養子縁組後(本人を養子に) | 被相続人の子(一親等) | なし | あり(法定相続人) |
| 内縁パートナーの子を養子に | 内縁パートナーの子が被相続人の子になる | なし(連れ子の養子) | あり(子として) |
また、養子が増えることで法定相続人の数が増え、基礎控除(600万円×法定相続人数)も増加します。実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人に含まれます。
内縁パートナーの子(連れ子)を被相続人の養子にする場合、連れ子が被相続人の「子」として法定相続人になります。この方法は、内縁パートナー本人を養子にする場合と比べて、年齢的な問題(本人より年上または大幅に年下など)がなく、社会的にも受け入れられやすいケースが多いです。
内縁パートナーは直接的な法定相続人にはなりませんが、養子になった子が相続した財産を内縁パートナーの生活資金として使用することで、間接的に内縁パートナーを支援することができます。
「孫を養子にする」場合は2割加算の対象になります(孫養子は一親等の血族に含まれない)。必ず「子(連れ子を含む)を養子にする」形をとってください。
養子縁組は強力な対策ですが、以下のリスクを理解した上で実施する必要があります。
| リスク・注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 離縁(養子縁組の解消)リスク | 養子縁組後に当事者の合意または裁判で離縁できる | 公正証書での合意、遺言書との組み合わせ |
| 実子・法定相続人との関係悪化 | 養子が増えることで実子の相続分が減る | 家族への事前説明・遺言書で実子への配慮を明記 |
| 養子縁組の有効性の問題 | 縁組が形式的で実体がないと判断されるリスク | 実質的な親子関係(同居・交流)を維持する |
| 相続税法上の養子人数制限 | 実子がいる場合は1人まで基礎控除に算入 | 1人の養子縁組で計画を立てる |
養子縁組は相続対策として有効ですが、実体のない「租税回避目的のみ」の養子縁組は税務調査で否認されるリスクがあります。実質的な親子関係(交流・扶養など)を伴うことが重要です。

生命保険は遺産分割の対象外のため、内縁パートナーへの確実な財産移転手段として有効です。ただし非課税枠が使えないため、税額の事前試算と納税資金の確保が重要です。
死亡保険金の受取人に内縁パートナーを指定する場合、保険会社によっては「法律上の婚姻関係がない」として受取人指定を拒否されることがあります。多くの保険会社では、内縁関係を証明する書類(住民票の同一住所・2年以上の同居実績など)を提出することで指定できます。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 受取人指定の可否 | 保険会社によって内縁関係の証明書類が必要 |
| 課税区分 | みなし相続財産として相続税の対象(全額課税・非課税枠なし) |
| 2割加算 | 内縁パートナーは法定相続人でないため2割加算あり |
| 受取のタイミング | 遺産分割協議と無関係に受取可能(スピーディ) |
内縁パートナーを受取人とした生命保険を加入する前に、保険会社に内縁関係での受取人指定が可能かどうかを確認してください。また加入時に証明書類の要件を確認しておくことが必要です。
内縁パートナーが受け取る保険金は全額が課税対象のため、法律婚と比べて相続税額が大きくなります。納税資金として活用する場合は、以下の計算で必要な保険金額を逆算して設定しましょう。
必要な保険金額 =(相続税の納税額 ÷(1 − 相続税の実効税率))× 1.2(2割加算分)
たとえば納税額200万円が必要な場合、保険金自体にも相続税がかかるため、単純に200万円の保険金では足りません。
生命保険を納税資金として活用する場合は、保険金にかかる相続税分も含めた保険金額を設定することが必要です。税理士に試算を依頼することをお勧めします。
一時払い終身保険は、まとまった資金を一度に払い込むことで、被相続人死亡時に内縁パートナーへ確実に財産を移転できます。相続発生時に即座に保険金が支払われるため、相続税の納税資金や当面の生活費として活用できます。
一時払い終身保険のメリット:

内縁・事実婚の関係が税務・法律上に認められるためには、一定の要件が必要です。認定基準を理解し、証拠を残しておくことがリスク管理の観点から重要です。
内縁関係として法的・税務的に認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
| 証拠として有効なもの | 内容 |
|---|---|
| 住民票(同一住所) | 長期間の同居を証明する |
| 生計の一体性の証拠 | 共同の銀行口座・共同名義の賃貸契約・光熱費の共同負担 |
| 内縁関係の公証 | 公正証書による内縁関係確認書 |
| 健康保険の被扶養者 | 事実婚として被扶養者登録されている |
| 自治体のパートナーシップ証明書 | 一定の内縁関係を証明できる |
税務調査で内縁関係の実体を問われた際に証明できる書類を生前から整備しておくことが、特別縁故者申立て等の場面で重要になります。
2024年現在、日本では同性婚は法律上認められていません。自治体のパートナーシップ証明書も相続税法上の「配偶者」として認められないため、同性パートナーは内縁の異性パートナーと同様の不利な立場に置かれています。
| 制度 | 同性パートナーへの適用 |
|---|---|
| 法定相続権 | なし |
| 配偶者の税額軽減 | 適用不可 |
| 相続税2割加算 | あり(法定相続人でないため) |
| 遺言書による遺贈 | 可能(内縁と同様) |
| 養子縁組 | 可能(パートナー本人または子を養子に) |
同性パートナーへの財産承継は異性の内縁パートナーと同様の対策(遺言書・生前贈与・生命保険・養子縁組)が必要です。同性パートナーへの相続税対策は、内縁パートナーと全く同じ手法が有効です。早期に専門家に相談して対策を講じてください。
内縁関係を解消した場合(別居・破局など)、生前に行った対策(遺言書・生命保険の受取人指定・養子縁組)が問題になる可能性があります。
特に養子縁組は解消に手間がかかるため、内縁関係が将来解消する可能性がある場合は慎重に検討する必要があります。

内縁・事実婚パートナーへの財産承継は、遺言書・養子縁組・生前贈与・生命保険の組み合わせを慎重に設計する必要があります。相続発生後の対策は原則として不可能であり、生前から計画的に対策を実施することが不可欠です。
内縁関係の相続対策は、税理士・弁護士・司法書士の連携が必要なケースが多くあります。「相続税の対応実績があり内縁・事実婚の案件も扱う」専門家を選ぶことが重要です。
| リスクの種類 | 具体的な内容 | 金銭的な影響の目安 |
|---|---|---|
| 遺言書なしで被相続人が死亡 | 内縁パートナーへの財産移転がゼロ | 受け取れるはずだった財産を全額失う |
| 遺言書の形式不備による無効 | 自筆証書遺言の書き方を誤った | 財産移転が実現しない |
| 遺留分を侵害した遺言書 | 相続人から遺留分侵害額請求を受ける | 遺留分相当額を返還する必要あり |
| 2割加算の見落とし | 税額を過少に見積もり納税資金不足 | 相続税の延滞・換価分割が必要になる |
| 養子縁組の誤った設計 | 孫養子で2割加算が外れなかった | 節税効果ゼロで手続きコストだけ発生 |
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 遺言書作成・相続対策の税理士・弁護士報酬 | 30〜80万円程度(財産規模・複雑さによる) |
| 養子縁組による2割加算の回避効果 | 相続税額 × 20%(たとえば税額500万円なら100万円の節税) |
| 遺言書作成による財産承継の実現 | 内縁パートナーに渡せる財産額そのもの(対策なしはゼロ) |
| 生前贈与計画による節税 | 年間110万円×年数分の贈与を相続財産から除外 |
| 遺留分侵害リスクの回避 | 遺留分請求額(法定相続分の1/4〜1/2相当)のリスク回避 |
内縁関係の相続対策は、何も対策しなければ内縁パートナーへの財産移転がゼロになります。専門家への相談は「費用対効果」ではなく「対策の有無」の問題であることを認識してください。
できません。内縁パートナーには法定相続権がなく、遺言書がなければ財産は一切渡りません。遺産分割協議にも参加できないため、他の法定相続人(子・父母・兄弟姉妹)が全財産を相続します。内縁パートナーに財産を渡すためには、必ず生前に遺言書(公正証書遺言を推奨)を作成する必要があります。
原則としてかかります。内縁パートナーは法律上の配偶者でも一親等の血族でもないため、遺贈を受けた場合に相続税額が20%加算されます。ただし、内縁パートナー自身または内縁パートナーの子と養子縁組をしておくことで、2割加算を合法的に回避できます。
使えません。配偶者の税額軽減は法律婚の配偶者にのみ適用される制度です。内縁パートナーは法律上の配偶者と認められないため、この控除を使うことができません。遺贈を受けた場合、遺贈された財産全額に対して相続税が課されます。
法律上、内縁関係の認定に「何年以上」という明確な基準はありません。ただし「婚姻の意思があること」「継続的な共同生活を送っていること」「社会的に夫婦として認識されていること」の3要件を満たす必要があります。期間よりも、住民票・共同の生活実態・周囲の認識などの証拠が重要です。
はい、同じ対策が使えます。同性パートナーも内縁の異性パートナーと同様に法定相続権がなく、相続税の税務上の優遇措置も適用されません。遺言書・生前贈与・生命保険の受取人指定・養子縁組という5つの対策が有効です。自治体のパートナーシップ証明書は相続税法上の「配偶者」とは認められないため、法的対策が必要です。
内縁パートナーの相続税上の立場
財産を残すための5つの対策
今すぐ取るべき行動
※本記事は2025年12月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制は改正されることがありますので、申告前には必ず税理士または税務署へご確認ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。