


内縁の妻や事実婚のパートナーには、相続権がありません。何年一緒に暮らしていても、法定相続人には入らないためです。
遺言を書けば財産は渡せます。ただし渡ったあとにかかる相続税は、法律婚の配偶者とまったく違う計算になります。
配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えず、さらに税額が2割増しになります。
見落とされやすいのが債務控除です。住宅ローンが残っていても、葬式費用を払っていても、財産から引けないことがあります。
この記事では財産7,000万円・債務1,200万円という同じ条件で、4つのケースの税額を計算しました。
法律婚なら0円のところ、内縁のままだと528万円になります。ただし遺言の書き方を変えるだけで220万円下がります。
本記事では、相続権の有無、財産を渡す5つの方法とかかる税金、使えない控除7つ、法律婚と比べた税額、債務控除を使う唯一の方法までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

相続の話は、誰が法定相続人かという1点から始まります。同居の年数がどれだけ長くても、内縁のパートナーはそこに入りません。法定相続人の範囲は民法が決めており、そこに「事実上の配偶者」という枠がないためです。
ただし例外や、認められる権利もあります。まず押さえるべき3点に分けて見ていきます。
民法890条は「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定めています。ここでいう配偶者は、婚姻届を出した戸籍上の配偶者だけです。
内縁関係は法律上さまざまな場面で配偶者に準じた扱いを受けます。遺族年金は受け取れますし、賃借権も引き継げます。しかし相続だけは、準じた扱いがありません。
| 場面 | 内縁のパートナー | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続権 | なし | 民法890条(配偶者は戸籍上の配偶者) |
| 遺族年金 | あり | 厚生年金保険法3条2項など |
| 賃借権の承継 | あり | 借地借家法36条 |
| 健康保険の被扶養者 | あり | 健康保険法3条7項 |
| 寄与分・特別寄与料 | なし | 民法904条の2・1050条は相続人と親族に限る |
表の見方:相続だけが「なし」になっています。他の制度では認められるため、相続でも何とかなると誤解されやすい部分です。
重要ポイント:介護や家業をどれだけ支えても、寄与分は認められません。寄与分は相続人だけ、特別寄与料は相続人以外の親族だけが請求できる制度で、事実婚のパートナーはどちらにも当たりません。
参照元:e-Gov法令検索 民法(第890条・第904条の2・第1050条)
内縁の相続は、条件によって打つ手が変わります。先に3つを確かめると、この記事のどこを読めばよいかが決まります。
【3つの質問】
| 相続人 | 債務 | 基礎控除超え | とるべき手 |
|---|---|---|---|
| いる | ある | 超える | 包括遺贈を検討する(債務控除が効く) |
| いる | ない | 超える | 特定遺贈でよい。養子縁組も検討 |
| いる | 問わない | 超えない | 遺言だけで足りる。申告も不要 |
| いない | 問わない | 超える | 遺言が最優先。なければ特別縁故者の申立てになる |
| いない | 問わない | 超えない | 遺言だけで足りる |
表の見方:最初に効くのは「相続人がいるか」です。いなければ遺留分を気にせず全部を渡せます。
重要ポイント:黄色の行に当てはまる人がいちばん損をしやすいです。債務があるのに特定遺贈のままだと、この記事の条件で220万円余計に払うことになります。
内縁のパートナーとの間に子がいる場合、話が変わります。父が認知していれば、その子は法定相続人です。
母子関係は出産の事実で当然に生じるため、認知は不要です。問題になるのは父子関係で、認知していなければ相続人になりません。
認知された子の相続分は、婚姻中に生まれた子と同じです。2013年の民法改正で差がなくなりました。
内縁と認められるかどうかを気にする人は多いのですが、相続権の場面では意味を持ちません。認められても相続人にはならないからです。
認定が効いてくるのは遺族年金や賃借権、そして特別縁故者として財産分与を申し立てるときです。後者は相続人が1人もいない場合に限られます。
【内縁と認められる要件】
何年以上という決まりはありません。住民票の続柄を「妻(未届)」にする、健康保険の被扶養者にする、賃貸借契約や生命保険の受取人に指定するといった積み重ねが証明の材料になります。
遺贈の課税と2割加算の仕組みは下記の記事で解説しています。



相続権がなくても、生前に手を打てば財産は渡せます。方法は5つあり、どれを選んでも渡すことはできます。違いが出るのは税金のほうです。同じ金額を渡しても、方法によってかかる税が変わります。まず5つを並べ、そのあとで税額を比べます。
5つのうち最も確実なのが遺言で、「内縁の妻○○に自宅を遺贈する」と書けば死亡と同時にその財産が移ります。相続人の同意も要りません。
ここで分かれ道があります。財産を特定して渡す「特定遺贈」と、割合で渡す「包括遺贈」です。
この違いが、あとで説明する債務控除の可否を分けます。同じ財産を渡しても、書き方が違うだけで税額が220万円変わります。
| 特定遺贈 | 包括遺贈 | |
|---|---|---|
| 書き方 | 「自宅を遺贈する」と財産を特定 | 「財産の2分の1を遺贈する」と割合で指定 |
| 債務の承継 | しない | 割合に応じて承継する |
| 債務控除 | 使えない | 使える |
| 遺産分割協議への参加 | 不要 | 相続人と同じ立場で参加する |
| 放棄 | いつでもできる | 3か月以内に家庭裁判所へ |
表の見方:包括遺贈は相続人に近い扱いになります。債務を引き継ぐ代わりに、債務控除が使えます。
重要ポイント:多くの遺言は特定遺贈で書かれています。「自宅を遺贈する」という書き方がそれです。借金が残っている家庭では、この1行が税額を左右します。
生きているうちに少しずつ渡していく方法で、年110万円までなら贈与税はかかりません。時間はかかりますが、確実に相手のものになります。
内縁のパートナーへの贈与には、相続開始前の持ち戻しがありません。持ち戻しは相続人と受遺者が対象なので、遺贈を受けない内縁パートナーなら関係しません。
ただし婚姻期間20年以上の夫婦が使える贈与税の配偶者控除(いわゆるおしどり贈与・2,000万円まで)は使えません。戸籍上の婚姻が要件だからです。
参照元:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
保険金は受取人の固有の財産になるため、遺産分割の対象になりません。遺留分の計算からも原則として外れます。
その一方で、500万円×法定相続人の数の非課税枠は使えません。この枠を使えるのは相続人が受け取った場合だけだからです。
保険会社によっては、事実婚のパートナーを受取人に指定できないことがあります。同居年数や生計同一の証明を求められるのが一般的です。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
相続人が1人もいないときに限り、家庭裁判所に財産の分与を申し立てられます。
順番があります。相続人を捜す公告を経て、相続人がいないことが確定してから3か月以内に申し立てます。死亡から数えると1年以上先になります。
注意点として、特別縁故者が財産をもらった場合の申告期限は「分与を受けたことを知った日の翌日から10か月」です。通常の相続とは起算日が違います。
内縁のパートナーと養子縁組をすると、法律上の親子になります。養子は一親等の血族なので、相続税の2割加算がなくなります。
法定相続人が1人増えるため、基礎控除も600万円増えます。この記事の条件では、税額が308万円から160万円に下がります。
【養子縁組を選ぶ前に考えること】
そもそも婚姻届を出せば、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えます。養子縁組を検討する前に、婚姻を選べない事情があるかを確かめてください。
相続人がいる場合、渡せる範囲には上限があります。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があるためです。
この記事の条件では相続人が子1人なので、遺留分は財産の2分の1、3,500万円です。これを超えて渡すと、差額を請求されます。
請求されると、自宅を売って払うことになりかねません。遺留分を侵さない割合にしておくのが、いちばん確実な予防です。
生命保険は原則として遺留分の計算に入りません。保険金は受取人の固有の財産だからです。ただし財産の大半を保険に寄せると、例外的に持ち戻されることがあります。
渡せるかどうかではなく、渡したあとの税金で比べます。
| 方法 | 渡せる時期 | 主な税 | 2割加算 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 遺言(特定遺贈) | 死亡時 | 相続税 | あり | 確実に渡したい。債務がない |
| 遺言(包括遺贈) | 死亡時 | 相続税 | あり | 借金や葬式費用がある |
| 生前贈与 | 生前 | 贈与税 | — | 時間をかけて少しずつ渡す |
| 生命保険 | 死亡時 | 相続税 | あり | 遺留分の争いを避けたい |
| 特別縁故者 | 死亡の1年以上あと | 相続税 | あり | 相続人が1人もいない |
| 養子縁組 | 死亡時 | 相続税 | なし | 税負担を最も下げたい |
表の見方:黄色の2行が税額を下げられる選択肢です。他の方法は渡せますが、税は減りません。
重要ポイント:5つのうち税額を動かせるのは、遺言の書き方と養子縁組の2つだけです。生前贈与も保険も、渡す手段としては有効ですが税は変わりません。
生命保険の受取人と養子縁組の節税は下記の記事で解説しています。



相続税には、税額を下げる控除と特例がいくつもあります。その多くは条文に「相続人」と書かれており、遺贈で財産を受け取る内縁のパートナーは対象から外れます。
7つを順に見ていくと、法律婚との差がどこで開くのかが分かります。後半の2つは、ほとんど語られていない部分です。
法律婚の配偶者なら、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い額まで相続税がかかりません。
この制度は「被相続人の配偶者」が要件です。戸籍上の配偶者に限られるため、内縁では使えません。
7つの控除のなかで、金額の影響が最も大きいのがこれです。この記事の条件では、法律婚ならこれだけで税額が0円になります。
自宅の土地の評価額を330平方メートルまで80%下げる特例です。この記事の条件では土地4,000万円が800万円になり、3,200万円減ります。
使えるのは配偶者か、被相続人と同居していた親族などに限られます。内縁のパートナーは親族ではないため、同居していても使えません。
長年同じ家に住み、その家を遺贈で受け取っても、評価額は下がらないまま課税されます。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
死亡保険金には500万円×法定相続人の数まで非課税の枠があります。死亡退職金にも同じ枠があります。
この枠を使えるのは相続人が受け取った場合だけです。事実婚のパートナーが受取人だと、1円も控除されません。
保険は遺留分の対象から外れる利点がある一方で、税の面ではこの不利を抱えることになります。
参照元:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
ここからが、ほとんど語られていない部分です。相続税は財産から借金と葬式費用を引いた額に課税されます。これを債務控除といいます。
相続税法13条1項は、債務控除が使える人を「相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る)により財産を取得した者」と定めています。
つまり特定遺贈で財産を受け取った内縁のパートナーは、債務控除が使えません。住宅ローンが残っている自宅をもらっても、ローンを引けないまま課税されます。
【引けなくなるもの】
この記事の条件で債務1,200万円を引けるかどうかの差は、相続税で220万円です。
ただし逃げ道があります。条文が「包括遺贈」を対象に含めているためで、遺言を包括遺贈にすれば債務控除が使えます。この点は後で詳しく扱います。
参照元:e-Gov法令検索 相続税法(第13条・第18条・第19条の3・第19条の4・第20条)
10年以内に続けて相続が起きると、前の相続で納めた相続税の一部を差し引ける制度があります。相次相続控除といいます。
相続税法20条は対象を「相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む)により財産を取得した場合」としています。
内縁のパートナーは相続人ではないため、この控除も使えません。たとえば内縁の夫から財産を受け取った数年後にそのパートナー自身が亡くなっても、軽減はありません。
18歳未満の相続人には未成年者控除、障害のある相続人には障害者控除があります。
どちらも条文に「相続人に該当し」と書かれています(相続税法19条の3・19条の4)。遺贈で受け取る事実婚のパートナーは対象外です。
障害のあるパートナーに財産を残したい場合、この控除が使えない前提で税額を見積もる必要があります。
婚姻期間20年以上の夫婦なら、居住用の不動産やその購入資金を2,000万円まで贈与税なしで渡せます。
要件は「婚姻期間が20年以上の配偶者」です。20年一緒に暮らしていても、婚姻届がなければ使えません。
生前贈与で自宅を渡そうとする場合、この2,000万円の枠がない前提で計画することになります。
法律婚の配偶者と並べると、どこで差が開くかが一目で分かります。
| 控除・特例 | 法律婚の配偶者 | 内縁のパートナー | 条文の要件 |
|---|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | ○ | × | 被相続人の配偶者 |
| 小規模宅地等の特例 | ○ | × | 配偶者または同居の親族など |
| 生命保険・退職金の非課税枠 | ○ | × | 相続人 |
| 債務控除 | ○ | △(包括遺贈なら○) | 相続税法13条1項 |
| 相次相続控除 | ○ | × | 相続税法20条 |
| 未成年者控除 | ○ | × | 相続税法19条の3 |
| 障害者控除 | ○ | × | 相続税法19条の4 |
| 贈与税の配偶者控除 | ○ | × | 婚姻期間20年以上の配偶者 |
| 相続税の2割加算 | なし | あり | 相続税法18条1項 |
表の見方:赤い行が影響の大きいもの、黄色は遺言の書き方で変えられるものです。
重要ポイント:8つのうち、自分で動かせるのは債務控除だけです。残りは要件が戸籍や相続人資格で決まっており、遺言や保険の設計では変えられません。
計算ロジック:○×は条文の要件から整理しています。債務控除は相続税法13条1項が「包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る」と定めているため、包括遺贈なら使えます。
未成年者控除と障害者控除は、19条の3と19条の4がともに「相続人に該当し」を要件にしています。相次相続控除の20条も同じ作りです。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は下記の記事で解説しています。



使えない控除を数えたあとに、もうひとつ上乗せがあります。相続税の2割加算です。計算した税額に、そのまま20%が足されます。控除が使えないことと違って、これは金額の増加として直接効いてきます。仕組みと、避ける方法があるかを見ていきます。
相続税法18条1項は、「一親等の血族及び配偶者以外の者」が財産を取得した場合、税額に20%を加算すると定めています。
一親等の血族とは、子と親です。配偶者は戸籍上の配偶者を指します。内縁のパートナーはどちらにも当たらないため、加算の対象です。
| 受け取る人 | 2割加算 | 理由 |
|---|---|---|
| 配偶者(戸籍上) | なし | 18条1項の配偶者に当たる |
| 子・親 | なし | 一親等の血族 |
| 代襲相続の孫 | なし | 18条1項かっこ書きで除かれる |
| 事実婚のパートナー | あり | どちらにも当たらない |
| 兄弟姉妹・甥姪 | あり | 二親等以上 |
| 孫養子 | あり | 18条2項で除外されない |
| 内縁のパートナー(養子) | なし | 養子は一親等の血族 |
表の見方:最下行がこの記事の要点です。同じ人でも、養子縁組をしているかどうかで加算の有無が変わります。
重要ポイント:孫を養子にすると加算されるのに、内縁のパートナーを養子にすると加算されません。18条2項が除外しているのは「直系卑属が養子になっている場合」で、パートナーは直系卑属ではないためです。
加算は、按分したあとの税額に対してかかります。財産の額ではありません。
この記事の条件で事実婚のパートナーが2分の1を受け取ると、按分後の税額が240万円、そこに2割が乗って288万円になります。
増える分は48万円です。使えない控除に比べると小さく見えますが、財産が大きくなるほど比例して増えます。
【2割加算の計算】
養子縁組をすれば一親等の血族になるため、2割加算はなくなります。法定相続人が1人増えて基礎控除も600万円増えます。
この記事の条件では、包括遺贈のケースが308万円、養子縁組をすると160万円です。差は148万円になります。
ただし婚姻届を出せば税額は0円になります。この記事の条件では、養子縁組の160万円に対して法律婚は0円です。
2割加算の対象と計算方法は下記の記事で解説しています。


ここまでの話を、同じ財産・同じ渡し方でそろえて金額にします。変えるのは「戸籍上の関係」と「遺言の書き方」だけです。それだけで税額は0円から528万円まで開きます。どこで差がつくのかを、1つずつ確かめてください。
現実によくある形に寄せた条件でそろえています。自宅に住宅ローンが残っていて、前の結婚でできた子が1人いるケースです。この子が唯一の法定相続人になります。
【共通の前提】
子の遺留分は財産の2分の1、つまり3,500万円です。2分の1ずつに分ける形なら、遺留分を侵しません。
戸籍上の関係と遺言の書き方を変えた4通りです。
| ケース | 法定相続人 | 基礎控除 | 課税価格 | 相続税の合計 |
|---|---|---|---|---|
| ケース1|法律婚だった場合 | 2人 | 4,200万円 | 2,600万円 | 0万円 |
| ケース2|内縁のまま特定遺贈 | 1人 | 3,600万円 | 7,000万円 | 528万円 |
| ケース3|内縁のまま包括遺贈 | 1人 | 3,600万円 | 5,800万円 | 308万円 |
| ケース4|内縁+養子縁組 | 2人 | 4,200万円 | 5,800万円 | 160万円 |
表の見方:黄色が最も安い法律婚、赤が最も高い内縁の特定遺贈です。間の2つが、内縁のまま取れる手当てにあたります。
重要ポイント:法律婚なら0円、内縁のままなら528万円です。この差528万円が、婚姻届を出しているかどうかだけで生まれます。
計算ロジック:ケース1は債務控除1,200万円と小規模宅地等の特例3,200万円を引いて課税価格2,600万円、基礎控除4,200万円以下なので0円です。
ケース2は債務控除も特例も使えないため課税価格が7,000万円のまま残り、基礎控除も相続人1人分の3,600万円にとどまります。
4つのケースの差を、要素ごとに分解します。
| 差が生まれた要素 | 金額 | 動かせるか |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減+小規模宅地等の特例 | 368万円 | 婚姻届を出す以外にない |
| 債務控除(特定遺贈→包括遺贈) | 220万円 | 遺言の書き方で変えられる |
| 養子縁組(2割加算と基礎控除) | 148万円 | 養子縁組をすれば変えられる |
| 2割加算そのもの | 48万円 | 養子縁組に含まれる |
表の見方:上から金額の大きい順です。右端が「自分で動かせるかどうか」を示します。
重要ポイント:婚姻を選ばない場合、いちばん効くのは遺言の書き方です。養子縁組は戸籍が変わり扶養義務も生じますが、包括遺贈にするのは遺言の文言を変えるだけで済みます。
計算ロジック:1行目はケース2528万円とケース4160万円の差から、2行目と3行目の効果を含めた合計として出しています。2行目はケース2とケース3の差、3行目はケース3とケース4の差です。
この記事の条件は財産7,000万円ですが、金額が上がると差も広がります。債務なし・2分の1を遺贈・相続人は子1人という条件でそろえた早見表です。
| 財産の合計 | 法律婚だった場合 | 内縁のまま遺贈 | 差 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 0万円 | 176万円 | 176万円 |
| 7,000万円 | 0万円 | 528万円 | 528万円 |
| 1億円 | 145万円 | 1,342万円 | 1,197万円 |
| 1億5,000万円 | 560万円 | 3,146万円 | 2,586万円 |
| 2億円 | 1,190万円 | 5,346万円 | 4,156万円 |
表の見方:黄色がこの記事の条件です。財産が増えるほど右端の差が大きくなります。
重要ポイント:2億円では差が4,156万円になります。基礎控除は法定相続人の数で決まり、事実婚のパートナーが何人分の役割を果たしても増えないためです。
計算ロジック:法律婚の列は配偶者が2分の1を取得し、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を使った場合です。内縁の列は債務控除も特例も使えず、2割加算を乗せています。基礎控除は法律婚が2人分、内縁が1人分で計算しています。
逆に財産が基礎控除以下なら、内縁でも相続税はかかりません。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円が目安です。
基礎控除といくらから相続税がかかるかは下記の記事で解説しています。



ここまでで、内縁のパートナーが自分で動かせる要素は1つだけだと分かりました。遺言を特定遺贈にするか包括遺贈にするかです。この記事の条件では220万円の差になります。ただし包括遺贈には引き受けるものもあります。両面を見ていきます。
2つの違いは「遺言で何を指定するか」にあります。財産を名指しするのが特定遺贈、財産全体に対する割合で示すのが包括遺贈です。
包括遺贈を受けた人は、民法990条により相続人と同一の権利義務を持つとされます。債務も割合に応じて引き継ぐ代わりに、相続税の計算では債務控除が使えます。
参照元:e-Gov法令検索 民法(第890条・第904条の2・第990条・第1050条)
債務控除の効果がいちばん大きく出るのが、住宅ローンの残った自宅を渡すケースです。
この記事の条件では、債務1,200万円を引けるかどうかで課税価格が7,000万円と5,800万円に分かれ、相続税は528万円と308万円になります。
| 特定遺贈 | 包括遺贈 | |
|---|---|---|
| 財産 | 7,000万円 | 7,000万円 |
| 債務控除 | 使えない | −1,200万円 |
| 課税価格 | 7,000万円 | 5,800万円 |
| 相続税の総額 | 480万円 | 280万円 |
| 相続税の合計 | 528万円 | 308万円 |
表の見方:変えたのは遺言の書き方だけです。財産も渡す割合も同じで、税額が220万円違います。
重要ポイント:団体信用生命保険に入っている住宅ローンは、この話の対象外です。死亡でローンが消えるため、そもそも債務として残りません。団信のないローンや事業の借入がある場合に効いてきます。
計算ロジック:包括遺贈では債務も割合に応じて承継するため、パートナーは財産3,500万円と債務600万円を引き継ぎます。課税価格の合計は7,000万円−1,200万円=5,800万円です。
債務控除が使える代わりに、相続人に近い立場になります。良いことばかりではありません。
【包括遺贈を選ぶと生じること】
特定遺贈ならこれらはありません。債務がほとんどない家庭では、特定遺贈のほうが手間もリスクも小さいです。
債務の額と、相続人との関係の2つで決まります。
| 債務の額 | 相続人との関係 | 選ぶべき形 |
|---|---|---|
| まとまった額がある | 良好 | 包括遺贈(債務控除が効く) |
| まとまった額がある | 悪い・連絡が取れない | 特定遺贈(分割協議を避ける) |
| ほとんどない | 問わない | 特定遺贈(手間が少ない) |
| 財産より債務が多い | 問わない | どちらも避ける |
| 分からない | 問わない | 先に債務を調べる。信用情報の開示で確認できる |
表の見方:包括遺贈が有利なのは1行目だけです。債務が少なければ、わざわざ包括にする必要はありません。
重要ポイント:遺言を書く前に、被相続人となる側が債務を洗い出しておくことが前提になります。債務の額が分からないまま包括遺贈にすると、想定より重い負担を引き受けることになります。
参照元:e-Gov法令検索 相続税法(第13条・第18条・第19条の3・第19条の4・第20条)
遺留分と相続税の関係は下記の記事で解説しています。


相続権の場面では内縁の認定に意味がありません。それでも認定が効く場面はあります。遺族年金・賃借権の承継・特別縁故者の申立ての3つです。いざというときに証明できるかどうかで、受け取れる金額が変わることがあります。
「何年同居すれば内縁」という決まりはありません。判断されるのは、夫婦として生活する意思と、その実態です。
【認定の材料になるもの】
最も効くのは住民票の続柄です。市区町村の窓口で変更できるので、いま同棲中なら先に手を打てます。
逆に、同居していない場合は認められにくくなります。単身赴任のように理由がある別居は考慮されますが、生活の実態がないと判断されると対象から外れます。
同性のパートナーも、相続権がない点は内縁と同じです。遺言・生前贈与・生命保険という手段も同じように使えます。
違うのは、内縁に準じた扱いが受けられる範囲です。遺族年金は、現在の運用では同性パートナーに支給されません。
| 制度 | 異性の内縁 | 同性パートナー |
|---|---|---|
| 相続権 | なし | なし |
| 遺言による遺贈 | 使える | 使える |
| 生命保険の受取人 | 使える(保険会社の要件次第) | 使える(対応する会社が増えている) |
| 特別縁故者の申立て | できる | できる |
| 遺族年金 | 受け取れる | 現行の運用では受け取れない |
| 養子縁組 | できる | できる(年長者は養子にできない) |
表の見方:差が出るのは遺族年金だけです。相続税の扱いは異性の内縁とまったく同じになります。
重要ポイント:自治体のパートナーシップ制度は、相続税の扱いを変えません。証明の材料にはなりますが、法定相続人になれるわけではありません。
パートナーとの間に子がいて認知されていれば、その子は法定相続人です。税の扱いは婚姻中に生まれた子とまったく同じになります。
つまり2割加算もなく、基礎控除の人数にも入ります。未成年者控除や障害者控除も使えます。パートナー本人とは扱いが大きく違います。
| 内縁のパートナー | 認知された子 | |
|---|---|---|
| 法定相続人 | × | ○ |
| 基礎控除の人数 | 入らない | 入る |
| 2割加算 | あり | なし |
| 債務控除 | 特定遺贈なら× | ○ |
| 未成年者控除・障害者控除 | × | ○ |
| 小規模宅地等の特例 | × | 同居などの要件を満たせば○ |
表の見方:同じ家庭でも、パートナーと子で扱いが分かれます。子のほうは法律婚の家庭と変わりません。
重要ポイント:認知していれば、子を通じて基礎控除が600万円増えます。自宅に同居していれば小規模宅地等の特例も使えるため、子に自宅を渡す設計が有効になることがあります。
認知がまだなら、生前認知か遺言認知で相続人にできます。死後に子の側から訴える方法もありますが、父の死亡を知った日から3年という期限があります。
生前に関係を解消すると、財産分与を請求できる場合があります。判例上、内縁の解消にも婚姻の財産分与の規定が類推適用されるためです。
一方で死亡による関係の終了では、財産分与は認められません。最高裁が2000年に判断しています。
つまり生前の解消なら請求できて、死別なら請求できないという形になります。この不均衡があるからこそ、生前の準備が要ります。
相続人がいない場合と連れ子の相続は下記の記事で解説しています。



遺贈で財産を受け取った内縁のパートナーは、自分で相続税の申告をすることになります。期限は相続人と同じ10か月です。相続人と連絡が取りにくい家庭ほど、手続きで詰まりやすい部分です。何をいつまでにやるかを整理します。
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。
事実婚のパートナーが遺贈を受ける場合も同じです。ただし特別縁故者として分与を受けた場合だけは起算日が違います。分与を受けたことを知った日の翌日から10か月になります。
| 受け取り方 | 申告期限の起算日 |
|---|---|
| 遺贈(特定・包括) | 相続の開始を知った日の翌日 |
| 生命保険金 | 同上 |
| 特別縁故者としての分与 | 分与を受けたことを知った日の翌日 |
表の見方:特別縁故者だけ起算日が後ろにずれます。相続人を捜す公告を経るため、死亡から1年以上あとになることもあります。
重要ポイント:財産の合計が基礎控除以下なら申告は要りません。この記事の条件では、法定相続人が1人なので3,600万円が目安です。
相続税の申告書は、財産を取得した人ごとに税額を計算しますが、用紙は1つにまとめるのが原則です。
つまり相続人と同じ申告書に、内縁のパートナーも名前を並べることになります。相続人との関係が良くない場合、ここで手が止まります。
連名で出せない事情があるときは、別々に提出することもできます。その場合でも、財産の評価や税額の計算は同じ前提でそろえる必要があります。
【相続人と話せないときに起きること】
遺言執行者を決めておくと、この多くが避けられます。執行者は相続人の同意なしに財産の調査と名義変更を進められます。
相続人でないぶん、書類集めでつまずきやすくなります。戸籍をたどる立場にないためです。
| 書類 | 誰が取れるか | 内縁パートナーが取れるか |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍(出生から死亡まで) | 相続人・代理人 | ×(遺言執行者か専門家を通す) |
| 固定資産評価証明書 | 相続人・受遺者 | ○(遺言書を示せば取れる) |
| 預貯金の残高証明 | 相続人 | ×(包括受遺者なら○) |
| 不動産の名義変更 | — | 相続人全員の協力が要る(遺言執行者がいれば不要) |
表の見方:戸籍と残高証明は自分では取れません。最下行のとおり、名義変更も相続人の協力が前提になります。
重要ポイント:遺言執行者を決めておけば、この3つがすべて解消します。執行者は戸籍も残高証明も取れ、相続人の同意なしに名義変更を申請できます。
遺贈による不動産の名義変更は、登録免許税が固定資産税評価額の2%です。相続人が相続する場合の0.4%より高くなります。ここでも内縁のパートナーは不利になります。
相続税は現金で納めるのが原則です。自宅だけを遺贈で受け取ると、納税資金が手元にないことがあります。
この記事の条件では、事実婚のパートナーの税額は288万円(特定遺贈の場合)です。自宅を受け取っただけなら、この現金を別に用意する必要があります。
保険金を納税資金に充てる設計が、最も確実です。遺産分割協議を待たずに受け取れるためです。
納付の方法と納税資金が足りない場合は下記の記事で解説しています。



内縁・事実婚の相続は、亡くなったあとにできることがほとんどありません。相続人でない以上、分割協議で取り分を主張することもできないためです。打てる手はすべて生前に集中しています。費用のかからないものから順に並べます。
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この3つはどれも費用がかかりません。それでも内縁の証明と、税額の見込みという2つの土台ができます。
最も重要なのが遺言です。これがなければ、財産は1円も渡りません。
【遺言を作るときに決める4つ】
内縁のパートナーに渡す遺言では、執行者の指定がとくに効きます。相続人が協力しない場合でも、執行者が名義変更を進められるためです。
時間と費用に余裕があるなら、次の3つを検討します。
| 手段 | 効果 | 負担 |
|---|---|---|
| 婚姻届を出す | この記事の条件で税額が0円になる | 姓・戸籍が変わる |
| 養子縁組 | 2割加算がなくなり基礎控除も増える。差は148万円 | 戸籍に養子と記載・扶養義務 |
| 生前贈与を始める | 年110万円まで非課税で少しずつ移せる | 時間がかかる |
| 生命保険に加入する | 納税資金を確保できる。遺留分の対象外 | 保険料・健康状態の制約 |
表の見方:上に行くほど効果が大きく、負担も大きくなります。
重要ポイント:税額だけで見れば、婚姻届が他の手段を大きく引き離します。それを選ばない理由があるかどうかが、最初の分かれ道です。
生前にできる対策の全体像は下記の記事で解説しています。



内縁の相続は、条文の要件を1つずつ確かめる作業になります。控除が使えるかどうかが「相続人かどうか」で決まるためです。遺言の書き方ひとつで税額が220万円変わります。扱った経験のある税理士かどうかが、ここで出ます。
相続税は、税理士なら誰でも同じ結果になる税目ではありません。土地の評価と特例の使い方で納税額が変わるため、相続税の対応実績がある税理士に依頼する必要があります。
【相続税の対応実績がある税理士が必要な理由】
金額で言えば、この記事の条件で法律婚なら0円、内縁のままなら528万円です。財産2億円なら差は4,156万円まで開きます。
同じ条件で複数の事務所に当たると、報酬と提案の両方を並べられます。1つの事務所だけでは、その提案が妥当かどうかを確かめる手がかりがありません。
見積りが揃ったら、金額だけを見比べないでください。次の3点を比べると実務力が見えます。
判定ポイント1:遺言の書き方に触れるか
「債務があるので包括遺贈を検討しましょう」のように、遺言の形まで踏み込んだ話があるか。
→ 触れる事務所のほうが、内縁の相続を実際に扱っていると判定できます。
判定ポイント2:使えない控除を挙げられるか
配偶者の税額軽減と小規模宅地だけでなく、債務控除・相次相続控除まで挙げられるか。
→ 条文の要件から判断している事務所のほうが、見落としが少ないと判定できます。
判定ポイント3:相続人との関係を聞くか
「相続人の方と連絡は取れますか」と確認してくるか。
→ 聞いてくる事務所のほうが、申告書の提出や書類集めでつまずく場面を知っていると判定できます。
比較せずに1つの事務所だけで進めた場合、あとから取り返せない損失が出ます。
【相談しないまま進めるリスク】
金額にすると次のとおりです。この記事の条件では、遺言の書き方で220万円、養子縁組の有無で148万円、遺留分を侵せば3,500万円です。
合わせて最大で3,868万円が、フォーム入力5分をかけるかどうかで決まります。
一括見積りサービスを利用した依頼の流れは次の4段階です。
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初回相談は報酬を聞く場ではありません。次の7点をその場で確認してください。
【初回相談で確認すること】
見積りは総額だけを見ないでください。内訳が書面になっているかが分かれ目です。
【見積りで確認すること】
税理士の探し方と相談窓口は下記の記事で解説しています。


できません。民法890条の配偶者は戸籍上の配偶者を指すため、内縁のパートナーは法定相続人に入りません。何年同居していても変わりません。
例外は、相続人が1人もいない場合です。その場合は特別縁故者として家庭裁判所に財産分与を申し立てられます。ただし相続人を捜す公告を経るため、死亡から1年以上かかります。
かかります。相続税法18条1項が「一親等の血族及び配偶者以外」を対象としており、事実婚のパートナーはどちらにも当たらないためです。
避ける方法は養子縁組です。養子は一親等の血族になるため加算がなくなります。この記事の条件では148万円の差になります。
使えません。制度の要件が「被相続人の配偶者」で、戸籍上の配偶者に限られるためです。
この記事の条件では、法律婚なら税額0円のところ、内縁のままだと528万円になります。使えない控除のなかで、金額の影響が最も大きいのがこれです。
遺言が特定遺贈なら引けません。相続税法13条1項が債務控除の対象を「包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈」に限っているためです。
包括遺贈にすれば引けます。この記事の条件では528万円が308万円になり、220万円下がります。ただし債務も割合に応じて引き継ぐことになります。
特定遺贈で財産を受け取る場合は引けません。葬式費用も債務控除の一部なので、扱いは住宅ローンと同じです。
喪主として費用を負担しても、税の計算では考慮されません。これも包括遺贈にすれば引けるようになります。
年数の決まりはありません。判断されるのは夫婦として生活する意思と、その実態です。
住民票の続柄を「妻(未届)」にする、健康保険の被扶養者にする、生活費を共通の口座から出すといった積み重ねが材料になります。ただし相続税の計算では、認定されても扱いは変わりません。
相続税の扱いは同じです。相続権がなく、遺言・生前贈与・生命保険・養子縁組という手段も同じように使えます。
違うのは遺族年金です。現行の運用では同性パートナーには支給されません。自治体のパートナーシップ制度も、相続税の扱いを変えるものではありません。
財産を取得した人ごとに税額を計算しますが、申告書は1つにまとめて相続人と連名で出すのが原則です。
相続人と連絡が取れない場合は、別々に提出することもできます。遺言執行者を決めておくと、戸籍や残高証明の取得も含めて手続きを進めやすくなります。
内縁の妻・事実婚のパートナーに相続権はありません。遺言を書けば財産は渡せますが、渡ったあとの相続税は法律婚とまったく違う計算になります。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令・税率に基づいて作成しています。税制改正や個別の事情により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きについては税理士または税務署にご相談ください。