


相続税の申告を税理士に任せても、間違いが起きることがあります。相続税は一生に数回しか経験しない税金で、扱っている税理士の数も限られているためです。全国の税理士1人あたりの申告件数は年に2件ほどしかありません。
間違いには2つの向きがあります。本来より多く納めてしまった場合と、納め足りなかった場合です。
多く納めていた場合は、申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せます。納め足りなかった場合は、税務調査で指摘される前に修正申告すれば加算税がかかりません。
財産3億円の家庭で小規模宅地等の特例の適用が漏れていた場合、取り戻せる金額は545.8万円になります。
気づいたときに何をすべきかは、間違いの向きによって変わります。まず申告書を取り寄せて、どちらなのかを確かめてください。
この記事では、税理士がよく犯す6つの間違い、それが発覚するタイミング、気づいたときの行動フロー、更正の請求と修正申告の手続き、損害賠償を請求できる基準、セカンドオピニオンの使い方、税理士を変える手順、間違いを防ぐ選び方までを解説します。
▼ この記事の3行まとめ

間違いが起きやすいのは土地の評価と特例の適用の2つです。
相続税の計算そのものは決まった手順に従うため、計算式を間違えることはほとんどありません。差が出るのは、土地をいくらで評価するかという判断と、どの特例を誰に使うかという選択です。どちらも税理士の経験によって結論が変わる部分です。
同じ財産でも、依頼する相手によって税額が変わるということです。
6つのパターンは同じ家族・同じ財産で金額を比べます。
| 項目 | 内容 | 相続税評価額 |
|---|---|---|
| 自宅の土地 | 330平方メートル | 2億円 |
| 自宅の建物 | - | 2,000万円 |
| 預貯金 | - | 8,000万円 |
| 財産の合計 | - | 3億円 |
計算ロジック:正しく申告すると、土地は不整形地補正などで30%下がって1億4,000万円になり、そこに小規模宅地等の特例で80%の減額を受けて2,800万円になります。課税価格は1億2,800万円、相続税の総額は1,100.0万円です。
重要ポイント:配偶者の税額軽減を使うと、実際に納めるのは687.5万円になります。以下の6パターンは、この金額との差を見ています。
土地の評価は形や道路との関係で減額できる仕組みになっています。この減額を使っていないのが、件数としてもっとも多い間違いです。
土地の相続税評価額は路線価に面積を掛けて計算しますが、それだけで終わりではありません。形がいびつな土地、間口が狭い土地、奥行きが長い土地などは補正で評価額を下げられます。面積が大きい土地には地積規模の大きな宅地の評価という減額もあります。
いずれも要件に当てはまるかを一つずつ確認していく作業になります。
| 補正の種類 | 対象になる土地 | 減額の目安 |
|---|---|---|
| 不整形地補正 | 三角形など整形でない土地 | 最大40% |
| 間口狭小補正 | 道路に接する幅が狭い土地 | 最大10% |
| 奥行長大補正 | 間口に対して奥行きが長い土地 | 最大10% |
| 地積規模の大きな宅地の評価 | 三大都市圏で500平方メートル以上など | 20〜30% |
| がけ地補正 | 傾斜地を含む土地 | 最大47% |
計算ロジック:補正で30%下げられる土地なのに使わなかった場合、評価額は2億円のままです。小規模宅地等の特例で80%減額しても4,000万円で、正しい2,800万円より1,200万円高くなります。納める相続税は61.1万円多くなります。
注意点:補正は現地を見ないと判断できないものが多くあります。図面だけで評価している税理士では見落とされます。申告書に添付された土地の評価明細書に補正率が書かれているか確認してください。
土地の評価額の計算手順と減額補正は、下記の記事で解説しています。

適用が漏れると545.8万円を多く納めることになります。6つのなかで金額への影響がもっとも大きい間違いです。
自宅の土地を配偶者や同居していた子が相続する場合、330平方メートルまでの評価額を80%減らせます。2億円の土地なら4,000万円まで下がる強力な制度です。
適用を受けるには申告期限までに分割が終わっていることなどの要件があり、そこを満たしていないと判断されて使わないケースがあります。要件の判断が分かれやすいのは、同居していたといえるかという部分です。
| 申告の内容 | 土地の評価額 | 課税価格 | 実際に納める額 |
|---|---|---|---|
| 正しい申告(特例あり) | 2,800万円 | 1億2,800万円 | 687.5万円 |
| 特例が漏れた申告 | 1億4,000万円 | 2億4,000万円 | 1,233.3万円 |
表の見方:差は545.8万円です。土地の評価額が1億1,200万円変わるため、税額への影響が最も大きくなります。
重要ポイント:この特例は申告書に添付書類を付けて申告することが要件です。税額がゼロになる場合でも申告そのものが必要で、申告しなければ適用を受けられません。
参照元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例の要件と面積の枠は、下記の記事で解説しています。

納め足りなくなる側の間違いです。孫や兄弟姉妹が財産を受け取ると税額が2割増えます。
配偶者と一親等の血族(子と父母)以外の人が財産を取得すると、その人の相続税額に20%が加算されます。孫に遺贈した場合や、兄弟姉妹が相続人になった場合が対象です。加算されるのは、その人の税額の20%に相当する金額です。
相続人であっても兄弟姉妹は対象になるという点が見落とされます。
計算ロジック:孫に1,000万円を遺贈した場合、孫の按分税額は1,100.0万円×1,000万円÷1億2,800万円=85.9万円です。この20%にあたる17.2万円が納め足りないことになります。
| 財産を受け取る人 | 2割加算 | 備考 |
|---|---|---|
| 配偶者・子・父母 | なし | 一親等の血族と配偶者は対象外 |
| 孫(遺贈で受け取った場合) | あり | 見落とされやすい |
| 孫(代襲相続人の場合) | なし | 亡くなった子の立場を引き継ぐため |
| 兄弟姉妹 | あり | 相続人であっても対象 |
| 甥・姪・内縁の配偶者・友人 | あり | - |
注意点:子が先に亡くなっていて孫が代襲相続人になっている場合は2割加算されません。同じ孫でも、遺贈で受け取ると対象になります。ここを混同した申告が起きます。
孫や兄弟姉妹が相続したときの2割加算は、下記の記事で解説しています。

相続で財産を取得した人が生前に贈与を受けていた場合、その贈与財産を相続財産に加算して計算します。これも納め足りなくなる側の間違いです。
加算する期間は改正で3年から7年へ段階的に延びており、贈与の時期によって扱いが変わります。税理士がこの改正を追えていないと、加算する範囲を誤ります。
加算するのは相続や遺贈で財産を取得した人が受けた贈与だけです。孫のように相続財産を取得しない人への贈与は、原則として加算しません。
計算ロジック:500万円の贈与の加算が漏れていた場合、課税価格は1億3,300万円になり、追加で納める本税は71.4万円です。これが3年後の税務調査で発覚すると、過少申告加算税7.1万円と延滞税約18.7万円が加わります。
注意点:贈与の事実は通帳の履歴から税務署に把握されます。贈与税の申告をしていれば記録も残っています。相続人が税理士に伝えていなかったために漏れることも多く、この場合は税理士の責任を問いにくくなります。
| 相続開始の時期 | 加算する期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日から2030年12月31日まで | 2024年1月1日以後の贈与 |
| 2031年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
表の見方:加算する期間は3年から7年へ段階的に延びます。延長された4年分については、合計100万円までは加算されません。
参照元:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
使い方を誤ると412.5万円の差になります。
配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし申告期限までに分割が確定していることが原則の要件で、分割が終わっていないと適用できません。
| 申告の内容 | 課税価格 | 相続税の総額 | 実際に納める額 |
|---|---|---|---|
| 正しい申告(軽減あり) | 1億2,800万円 | 1,100.0万円 | 687.5万円 |
| 軽減を使わなかった申告 | 1億2,800万円 | 1,100.0万円 | 1,100.0万円 |
表の見方:課税価格も総額も同じです。軽減を使ったかどうかだけで412.5万円変わります。
重要ポイント:分割が間に合わない場合でも、申告期限後3年以内の分割見込書を付けておけば後から適用できます。この書類を付け忘れると、分割が終わっても軽減を受けられません。
配偶者の税額軽減の上限と申告後に適用する方法は、下記の記事で解説しています。

分割が間に合わないときの未分割申告のやり方は、下記の記事で解説しています。

税務調査でもっとも多く指摘されるのが名義が家族になっている預金の計上漏れです。
配偶者や子の名義になっていても、被相続人が入金して管理していた預金は被相続人の財産として扱われます。相続人が「自分の口座だ」と考えて申告に含めないことが多く、税務調査でもっとも多く指摘される項目です。
通帳や印鑑を誰が管理していたか、入金の原資が誰のものだったかで判断されます。名義人が自分で稼いだお金であれば、その人の財産として扱われます。
【計上が漏れやすい財産】
注意点:これは税理士のミスとは限りません。相続人が申告しなかった財産まで税理士が把握することはできないためです。資料を渡していたのに漏れた場合と、渡していなかった場合とでは責任の所在が変わります。
名義預金と判定される基準と税額への影響は、下記の記事で解説しています。

6つを並べると向きと金額がはっきりします。
| パターン | 向き | 金額への影響 | 取り戻せるか |
|---|---|---|---|
| ① 土地の補正の見落とし | 多く納めた | +61.1万円 | 更正の請求で戻る |
| ② 小規模宅地等の特例の漏れ | 多く納めた | +545.8万円 | 更正の請求で戻る |
| ③ 2割加算の漏れ | 納め足りない | 17.2万円 | 修正申告が必要 |
| ④ 生前贈与の加算漏れ | 納め足りない | 71.4万円 | 修正申告が必要 |
| ⑤ 配偶者の税額軽減の適用ミス | 多く納めた | +412.5万円 | 更正の請求で戻る |
| ⑥ 財産の計上漏れ | 納め足りない | 財産による | 修正申告が必要 |
表の見方:①②⑤は多く納めているので更正の請求をすれば戻ってきます。③④⑥は納め足りないので、修正申告が必要です。
重要ポイント:件数が多いのは①ですが、1件あたりの金額が最も大きいのは②です。自宅の土地がある相続では、まず特例が使われているかを確認してください。

間違いに気づくのは税務調査・別の税理士の指摘・不動産の売却・自分で調べたときの4つです。
どのタイミングで気づいたかによって、残された時間が変わります。更正の請求は申告期限から5年以内という期限があるため、発覚が遅いほど選択肢が減ります。納め足りない場合も、税務調査の通知が来る前かどうかでペナルティが変わります。
まず自分がどの段階にいるかを確かめてください。
相続税の税務調査は申告から1〜2年後に連絡が来ます。間違いに気づくきっかけとしてもっとも多いのがこれです。
相続税の税務調査は、申告書を提出してから1年から2年後に行われることが多くなっています。調査で指摘されるのは納め足りない部分で、多く納めていた部分を税務署が教えてくれることはありません。
調査の対象になるのは、財産が多い家庭や名義預金がありそうな家庭が中心です。事前に金融機関への照会が済んでいるため、指摘は具体的なものになります。
注意点:この段階では過少申告加算税を避けられません。調査の事前通知を受けた後に修正申告しても5%、調査を受けた後だと10%がかかります。
多く納めていた場合に気づけるのは実質的にこの方法だけです。
申告書を別の税理士に見てもらうと、土地の評価や特例の使い方が適切だったかを判断してもらえます。相続税を扱っている税理士なら、土地の評価明細書を見れば補正が使われているかがすぐに分かります。
申告書の控えさえあれば判断できるため、前の税理士に知らせずに進められます。見直しを依頼したことが相手に伝わることはありません。
重要ポイント:更正の請求ができるのは申告期限から5年以内です。相続開始から数えると5年10か月になります。この期間内に見直せば、多く納めた分が戻ります。
相続した土地を売るときに評価額と実際の価格の差に違和感を持つことがあります。
不動産会社の査定額が相続税評価額を大きく下回る場合、評価が高すぎた可能性があります。形がいびつな土地や道路付けの悪い土地では、市場価格と相続税評価額が乖離することがあるためです。売却を機に評価を見直したところ、多く納めていたと分かる例があります。
注意点:市場価格が低いことがそのまま評価誤りの証拠になるわけではありません。相続税評価額は路線価をもとに計算するもので、実際の取引価格とは別の基準です。補正が使われているかどうかで判断してください。
相続について調べるうちに使えるはずの特例に気づくことがあります。
小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、要件を満たしていれば使えるはずのものです。申告書を見て、これらが使われていなければ別の税理士に確認する価値があります。
とくに自宅の土地があるのに小規模宅地等の特例の記載がない場合は、要件を満たさなかったのか、検討そのものが漏れたのかを確認してください。
気づいた時期によってできることが変わります。
| タイミング | 時期の目安 | 分かる間違い | 残された手段 |
|---|---|---|---|
| ① 税務調査 | 申告から1〜2年後 | 納め足りない分だけ | 修正申告(加算税あり) |
| ② 別の税理士の指摘 | いつでも | 両方の向きが分かる | 更正の請求・修正申告 |
| ③ 不動産の売却時 | 数年後 | 土地の評価誤り | 更正の請求(5年以内なら) |
| ④ 自分で調べて気づく | いつでも | 特例の適用漏れ | 更正の請求(5年以内なら) |
表の見方:多く納めた分に気づけるのは②③④で、税務署が教えてくれることはありません。自分から動かないと戻ってこないお金です。
重要ポイント:納め足りない場合は①の前に気づくかどうかで負担が変わります。調査の事前通知が来る前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。

間違いには多く納めた場合と納め足りない場合の2つの向きがあります。
どちらなのかで手続きも期限もまったく違います。多く納めていたなら更正の請求で取り戻す手続き、納め足りなかったなら修正申告で追加で納める手続きです。まず申告書を見て、どちらなのかを確かめることから始めます。
手続きの名前も期限もまったく別のものです。
| 項目 | 多く納めていた場合 | 納め足りなかった場合 |
|---|---|---|
| 手続きの名前 | 更正の請求 | 修正申告 |
| 期限 | 申告期限から5年以内 | 期限なし(早いほど有利) |
| お金の動き | 戻ってくる | 追加で納める |
| ペナルティ | なし | 加算税と延滞税 |
| 放置した場合 | 5年を過ぎると戻らない | 調査で指摘されて加算税が増える |
| 典型的な原因 | 特例の適用漏れ・土地の過大評価 | 財産の計上漏れ・加算の漏れ |
表の見方:多く納めた場合は5年を過ぎると1円も戻りません。納め足りない場合は期限そのものはありませんが、遅くなるほど延滞税が増えます。
重要ポイント:両方が同時に起きていることもあります。土地を過大に評価していて、かつ名義預金の計上が漏れていたという場合です。この場合は差引きして計算します。
申告書の土地の評価明細書と第11表を見れば分かります。
チェックリスト:申告書のどこを見るか
重要ポイント:上の4つが多く納めていないかの確認で、下の3つが納め足りていないかの確認です。書類の見方が分からなければ、申告書のコピーを持って別の税理士に見てもらってください。

やるべきことは申告書の入手から始まる5つの段階です。
順番には意味があります。事実を確かめないまま税理士に問い合わせると、説明を受けても正しいかどうかを判断できないためです。まず手元に資料をそろえてから動いてください。感情的に問い詰めても、事実は明らかになりません。
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重要ポイント:STEP2でやり取りの記録を残すことが後で効いてきます。損害賠償を検討する段階になると、どんな資料を渡してどう説明を受けたかが争点になります。
税理士が控えを渡してくれない場合でも税務署で内容を確認できます。
申告書等閲覧サービスという仕組みがあり、本人確認書類を持参すれば税務署で申告書を閲覧できます。写真撮影も認められているため、内容を持ち帰ることができます。相続人であれば、他の相続人の同意がなくても利用できます。
注意点:閲覧できるのは提出された申告書そのものです。税理士が計算に使った内部資料は含まれません。土地の評価の根拠を詳しく知りたい場合は、税理士に直接求める必要があります。
聞くべきなのは判断の理由であって、責任の追及ではありません。
最初から責任を問う姿勢で連絡すると、税理士も防御的になって説明が得られなくなります。土地の補正をどう検討したか、特例の要件をどう判断したかを、事実として確認してください。
【税理士に確認する質問】
重要ポイント:説明を受けたらその内容を書面かメールで残してもらってください。口頭のやり取りは後で証明できません。
ここで取り戻せる金額の見込みが分かります。
申告書と土地の資料があれば、相続税を扱っている税理士なら数日で判断できます。見直しの結果、間違いがなければそれで安心が得られますし、多く納めていれば更正の請求に進めます。
注意点:依頼する相手は最初の税理士と利害関係のない事務所を選んでください。同じ地域の知り合い同士だと、踏み込んだ指摘をしてもらえないことがあります。
重要ポイント:費用は見直しの結果に応じた成功報酬にしている事務所もあります。戻る金額の何%という形なら、戻らなければ費用が発生しません。依頼する前に報酬の決め方を確認してください。

多く納めた相続税は申告期限から5年以内なら取り戻せます。
更正の請求という手続きで、税務署に対して「申告した税額が多すぎたので直してほしい」と求めるものです。認められれば納めすぎた分が還付されます。税理士のミスであっても、まずはこの手続きで取り戻すのが先です。
相続開始から数えると5年10か月です。
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。そこから5年なので、相続開始から5年10か月が実質的な期限になります。この期限を過ぎると、どれだけ多く納めていても取り戻せません。
| 相続開始からの期間 | 更正の請求 | 取り戻せるか |
|---|---|---|
| 5年10か月以内 | できる | 納めすぎた分が還付される |
| 5年10か月を過ぎた | できない | 税務署からは戻らない |
重要ポイント:期限を過ぎた場合、残された道は税理士への損害賠償請求だけになります。請求できる金額も、税務署から戻るはずだった分に限られます。気づいたら期限を確認して、すぐに動いてください。
参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
この記事の例では小規模宅地等の特例の漏れで545.8万円が戻ります。
| 間違いの内容 | 正しい税額 | 納めた税額 | 戻る金額 |
|---|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例の漏れ | 687.5万円 | 1,233.3万円 | 545.8万円 |
| 配偶者の税額軽減の適用ミス | 687.5万円 | 1,100.0万円 | 412.5万円 |
| 土地の補正の見落とし | 687.5万円 | 748.6万円 | 61.1万円 |
計算ロジック:いずれも財産3億円(自宅の土地2億円・建物2,000万円・預貯金8,000万円)で、相続人が配偶者と子2人という前提です。正しく申告していれば687.5万円で済んでいました。
注意点:還付されるのは納めすぎた本税と、それに対する還付加算金です。税理士に払った報酬までは戻りません。
提出するのは更正の請求書と、根拠を示す資料です。
更正の請求書に、当初の申告額と正しい税額、そして請求の理由を書いて提出します。土地の評価を直す場合は評価明細書を作り直し、特例を適用する場合は要件を満たすことを示す書類を添えます。税務署の審査には数か月かかることがあります。
認められれば還付の通知が届き、指定した口座に振り込まれます。
重要ポイント:更正の請求は請求すれば必ず認められるものではありません。税務署が内容を審査し、認められない場合もあります。根拠を示せる形で組み立てる必要があるため、税理士に依頼するのが現実的です。
払いすぎた相続税を取り戻す手続きと期限は、下記の記事で解説しています。

不動産の評価を見直して還付を受ける方法は、下記の記事で解説しています。


納め足りなかった場合は調査の通知が来る前に修正申告すれば加算税がかかりません。
気づいた時点で自主的に修正申告すれば、追加の本税と延滞税だけで済みます。税務署から調査の事前通知が来た後は5%、実際に調査を受けた後は10%の過少申告加算税が加わります。同じ間違いでも、動く時期で負担が変わるということです。
差が出るのは過少申告加算税の部分です。
| 動く時期 | 過少申告加算税 | この記事の例(本税71.4万円) |
|---|---|---|
| 調査の事前通知が来る前に自主的に修正申告 | 0% | 0円 |
| 事前通知の後、調査を受ける前 | 5%(一定額を超える部分は10%) | 約3.6万円 |
| 調査を受けた後 | 10%(一定額を超える部分は15%) | 約7.1万円 |
| 隠したと認定された場合 | 重加算税35% | 約25.0万円 |
計算ロジック:加算税の率は、新たに納める税金が当初の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超えるかで変わります。この例では本税71.4万円が当初の申告税額687.5万円を超えないため、超える部分の高い率は適用されません。
重要ポイント:隠したと認定されると重加算税35%になります。通帳を隠す、調査で事実と違う説明をするといった行為が対象です。単なる計上漏れとは扱いが変わります。過去5年以内に加算税を課されたことがあると、さらに10%が上乗せされます。
申告漏れに気づいたときの動き方とペナルティの全体像は、下記の記事で解説しています。

延滞税は納期限の翌日から日割りで計算されます。
2026年の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。2か月を境に率が3倍以上に上がるため、発覚から納付までの期間が長いほど負担が増えます。
| 期間 | 2026年の割合 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月以内 | 年2.8% |
| 2か月を経過した日以後 | 年9.1% |
計算ロジック:本税71.4万円が3年後に発覚した場合、延滞税は約18.7万円です。過少申告加算税7.1万円と合わせると、本税以外に約25.9万円のペナルティがかかります。
注意点:延滞税の割合は毎年見直されます。過去の解説記事に書かれた率は古い可能性があります。実際の計算には、その期間ごとの割合を使ってください。
ここが誤解されやすい点です。本来納めるべきだった税金は自分で納めます。
税理士のミスで申告額が少なかったとしても、本来納めるべき税額は最初から決まっていたものです。正しく申告していれば納めていたはずの金額なので、それを税理士に請求することはできません。
重要ポイント:税理士に請求できるのは加算税と延滞税の部分です。これらは税理士が正しく申告していれば発生しなかった負担なので、損害として認められる余地があります。
注意点:相続人が資料を渡していなかった場合は、加算税や延滞税も請求しにくくなります。税理士は渡された資料をもとに申告するため、存在を知らされていない財産まで把握する義務はないためです。

請求できるかどうかは専門家として尽くすべき注意を尽くしたかで決まります。
税理士は依頼者から業務を委任されている立場です。民法644条は、委任を受けた人は委任の趣旨に従い善良な管理者の注意をもって業務を行う義務を負うと定めています。これを善管注意義務といい、税理士の責任を判断する基準になります。
問われるのは結果の良し悪しではなく、尽くすべき注意を尽くしたかです。
税額が高くなったという結果だけでは責任を問えません。専門家として当然に検討すべきことを検討したか、依頼者に説明すべきことを説明したかが判断の対象になります。見解が分かれる論点で片方を選んだ結果が不利だったという場合は、ミスとは扱われないのが通常です。
税務の世界には、解釈が固まっていない論点がいくつもあります。そこで慎重な判断をした結果、税額が高くなることもあります。
| 状況 | 責任を問えるか |
|---|---|
| 使えるはずの特例を検討もせずに見落とした | 問える可能性が高い |
| 申告期限を過ぎてしまった | 問える可能性が高い |
| 渡した資料を申告に反映しなかった | 問える可能性が高い |
| 見解が分かれる論点で不利な方を選んだ | 難しい |
| 依頼者が渡さなかった資料が漏れた | 難しい |
| 税務調査で否認されたが判断に合理性があった | 難しい |
表の見方:上の3つは検討していれば避けられたものです。下の3つは、税理士が注意を尽くしても起こり得るものなので責任を問いにくくなります。
重要ポイント:どちらに当たるかを判断するには、契約でどこまでを依頼していたかも関係します。申告書の作成だけを依頼していた場合と、節税の提案まで含めて依頼していた場合とでは、求められる範囲が変わります。契約書に業務の範囲が書かれているか確認してください。
本来納めるべきだった税金は損害には当たりません。
正しく申告していれば納めていたはずの税額は、税理士のミスがあってもなくても発生していたものです。そのため損害として請求することはできません。請求できるのは、ミスがなければ発生しなかった負担に限られます。
| 項目 | 請求できるか | 理由 |
|---|---|---|
| 本来納めるべきだった税金(本税) | できない | ミスがなくても納めていたため |
| 過少申告加算税・重加算税 | できる余地がある | 正しく申告していれば発生しなかった |
| 延滞税 | できる余地がある | 同上 |
| 5年を過ぎて取り戻せなくなった過大納税分 | できる余地がある | 更正の請求ができていれば戻っていた |
| 税理士に払った報酬 | ケースによる | 業務が果たされていない部分に限られる |
| やり直しにかかった別の税理士の報酬 | ケースによる | 因果関係を示す必要がある |
重要ポイント:更正の請求で取り戻せる分は先に税務署から取り戻すのが原則です。税務署から戻る分まで税理士に請求することはできません。賠償の対象になるのは、5年を過ぎるなどして取り戻せなくなった部分です。
実際に支払われるかは税理士が保険に加入しているかで変わります。
税理士が業務上のミスで損害賠償責任を負った場合に備える保険があります。税理士職業賠償責任保険といい、多くの税理士が加入しています。賠償が認められても、税理士個人に資力がなければ回収できないため、この保険の有無は実務上の大きな要素です。
個人で開業している税理士ほど、加入の確認が重要になります。
注意点:この保険はすべてのミスを対象にしているわけではありません。意図的な行為や、税額計算を誤ったことによる本税相当額などは対象外とされているのが一般的です。税理士から保険会社に事故報告をしてもらう必要もあります。
重要ポイント:契約の段階で保険に加入しているかを確認しておくと、万一のときの回収可能性が変わります。相続税の申告は金額が大きいため、補償の上限額まで確認する価値があります。
あまり知られていませんが税理士会に無料の紛争解決の窓口があります。
各地の税理士会は紛議調停という制度を設けています。税理士と依頼者の間で起きた紛争について、税理士会が間に入って話し合いをまとめる仕組みです。申立てに費用はかからず、弁護士に依頼して訴訟を起こすより負担がはるかに小さくなります。
申立先は、その税理士が所属している地域の税理士会です。
| 手段 | 費用 | 期間の目安 | 強制力 |
|---|---|---|---|
| 税理士会の紛議調停 | 無料 | 数か月 | 合意が必要 |
| 税理士との直接交渉 | 無料 | 数週間〜 | 合意が必要 |
| 弁護士に依頼して交渉 | 着手金・報酬 | 数か月 | 合意が必要 |
| 訴訟 | 弁護士費用と訴訟費用 | 1年以上 | 判決で決まる |
表の見方:紛議調停は費用をかけずに第三者に入ってもらえる唯一の方法です。ただし相手が合意しなければ解決しないため、まとまらなければ次の手段に進むことになります。
重要ポイント:いきなり訴訟を考える必要はありません。まず税理士会に相談するという順番で進めれば、費用をかけずに解決する可能性があります。申立先は、その税理士が所属する税理士会です。
進める順番は証拠の保全からです。
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注意点:損害賠償請求権には時効があります。損害と加害者を知ったときから5年が基本です。更正の請求の期限と並行して進むため、気づいた時点で期限を確認してください。

多く納めていたかどうかは別の税理士に見てもらわないと分かりません。
税務署は納め足りない部分は指摘しますが、納めすぎている部分を教えてくれることはありません。申告書を第三者の目で見直すことでしか、取り戻せるお金があるかどうかは分からないということです。
確認されるのは土地の評価と特例の適用の2点が中心です。
【セカンドオピニオンで確認されること】
重要ポイント:依頼するときは申告書一式と土地の資料を用意してください。申告書の控え、土地の評価明細書、公図や測量図があると判断が早くなります。
注意点:見直しの結果間違いがないこともあります。その場合は費用が無駄になったように感じられますが、正しく申告できていたという確認が得られます。税務調査への備えという意味もあります。
セカンドオピニオンの依頼方法と費用は、下記の記事で解説しています。


申告が終わる前なら残りの期間で判断が変わります。
申告期限までの残り時間によって、変更の現実性が変わります。早い段階なら引き継ぎに余裕がありますが、期限が迫っていると新しい税理士が引き受けてくれないこともあります。まず期限までの日数を確認してください。
目安になるのは申告期限まで3か月あるかどうかです。
| 申告期限までの残り | 変更のしやすさ | 判断 |
|---|---|---|
| 6か月以上 | 問題なくできる | 不安があるなら早めに変える |
| 3〜6か月 | できる | 引き継ぎ資料をそろえて依頼する |
| 3か月未満 | 引き受け先を探すのが難しい | まず現在の税理士に説明を求める |
| 1か月未満 | ほぼ不可能 | 期限内申告を優先し、後から見直す |
重要ポイント:期限が迫っている場合はいったん期限内に申告することを優先してください。期限を過ぎると小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えなくなります。申告してから見直して、更正の請求で直すほうが安全です。
見るべきなのは土地を見に行ったかと、特例の説明があったかです。
【注意したほうがよいサイン】
注意点:1つ当てはまるだけですぐに変えるべきとは限りません。まず質問して、説明に納得できるかで判断してください。説明を求めても要領を得ない場合が、変更を検討する段階です。
引き継ぎで必要なのは預けた資料の返却と、途中までの成果物です。
契約を解除する前に、預けた資料をすべて返してもらってください。戸籍謄本や不動産の資料は再取得に手間がかかります。途中まで作成された財産目録や評価の資料があれば、それも受け取っておくと新しい税理士の作業が早くなります。
重要ポイント:すでに払った報酬の返還は契約書の定めによります。着手金が返らない契約になっていることが多いため、契約書を確認してから解除を申し出てください。
申告の途中で税理士を変更する手続きと費用は、下記の記事で解説しています。


選ぶときに確認すべきなのは相続税の申告件数と、土地の評価をどう進めるかです。
税理士の数は全国で8万人を超えますが、相続税の申告件数は年間15万件ほどです。単純に割ると、税理士1人あたり年に2件程度しか扱わない計算になります。相続税を専門的に扱っている事務所とそうでない事務所の差が大きい分野です。
この5つを聞けば経験の差が見えます。
チェックリスト:依頼する前に確認すること
重要ポイント:もっとも差が出るのは土地の評価を誰がどう行うかです。現地を見ずに図面だけで評価する事務所では、この記事のパターン①の見落としが起きます。
注意点:税理士職業賠償責任保険への加入は、万一のときの回収可能性に直結します。聞きにくい質問ですが、金額の大きい相続税では確認する価値があります。
税理士の選び方と依頼前の準備は、下記の記事で解説しています。


申告書の見直しは依頼する税理士によって結果が変わります。複数の事務所から見積りを取り、提案の中身を比べてください。
見直しで金額が動くのは土地の評価と特例の適用の2点です。どちらも相続税を扱い慣れていないと判断できません。
【相続税の対応実績がある税理士に相談すべき理由】
たとえば自宅の土地2億円・建物2,000万円・預貯金8,000万円で、相続人が配偶者と子2人という家庭を考えます。
A税理士は小規模宅地等の特例の要件を満たさないと判断して申告しました。納めた相続税は1,233.3万円です。
B税理士が申告書を見直したところ、特例を適用できると判断しました。正しい税額は687.5万円で、545.8万円が戻ることになります。
比べるべきなのは土地を見に行くかどうかです。申告書だけを見て判断する事務所と、現地を確認する事務所があります。
判定ポイント1:現地を見に行くかを確認する「土地は現地を確認していただけますか」と聞いてみてください。→ 図面だけで判断する事務所では、補正の見落としを見つけられません。
判定ポイント2:戻る金額の見込みを出せるか申告書を見た段階で、おおよその金額を示せるかどうかです。→ 見込みを出せない事務所は、見直しの経験が少ない可能性があります。
判定ポイント3:報酬の決め方を確認する戻った金額に対する成功報酬か、定額かを確認します。→ 成功報酬なら戻らなければ費用が発生しない形にできます。
多く納めた分は自分から動かないと戻ってきません。税務署が教えてくれることはないためです。
【相談しないまま放置した場合のリスク】
更正の請求ができるのは申告期限から5年以内で、相続開始から数えると5年10か月です。複数の事務所から見積りを取っていれば、判断の違いはその時点で見えます。
参照元:国税庁 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
見積りはフォームの記入5分から始められます。
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重要ポイント:申告してから何年経っているかを最初に確認してください。5年10か月まで残りわずかなら、見積りを待たずに1社に依頼するほうが確実です。
別の税理士に申告書を見てもらってください。多く納めていたのか納め足りなかったのかで、その後の手続きがまったく変わるためです。
弁護士に相談するのは、損害賠償を検討する段階になってからで足ります。まず税務署から取り戻せるかどうかを確かめるのが先です。
取り戻せます。更正の請求ができるのは申告期限から5年以内で、相続開始から数えると5年10か月です。
ただし書類の作成に時間がかかるため、期限の直前に依頼すると間に合わないことがあります。残り1年を切っているなら、すぐに動いてください。
本来納めるべきだった税額は、ミスがあってもなくても発生していたものだからです。正しく申告していれば納めていたはずの金額なので、損害として請求することはできません。
請求できるのは、ミスがなければ発生しなかった加算税や延滞税、そして5年を過ぎて取り戻せなくなった過大納税分です。
税理士会の紛議調停という制度があります。各地の税理士会が設けている紛争解決の窓口で、申立てに費用はかかりません。
税理士会が間に入って話し合いをまとめる仕組みなので、相手が合意しなければ解決しません。まとまらなければ弁護士への相談に進むことになります。
見直しの依頼は前の税理士に知らせずに進められます。申告書の控えがあれば、それだけで判断できるためです。
更正の請求をする段階になれば税務署への提出が必要になりますが、前の税理士の同意は要りません。多く納めていた分を取り戻すのは相続人の権利です。
相続税の申告に間違いがあっても、期限内なら手を打てます。多く納めていたなら更正の請求、納め足りなかったなら修正申告です。どちらも早く動くほど有利になります。
この記事の要点をまとめます。
今すぐ取るべき行動
※本記事は2026年9月時点の法令等に基づいて作成しています。相続税法の改正により取り扱いが変わる場合があります。最新の制度については国税庁のホームページや税理士にご確認ください。