相続税の計算方法をわかりやすく解説|仕組み・控除・申告の流れまで徹底解説

相続税_計算


相続税は、被相続人の財産を相続した際に課される税金です。

しかし、どの財産が対象となり、どのように計算するのかを正確に理解している方は多くありません。

本記事では、相続税の計算手順、控除制度、申告・納付のポイントまでを体系的に解説します。

相続税に関する知識を整理し、役立てていただければ幸いです。

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目次

相続税の計算手順と考え方

手順①:相続財産の総額を把握する

まず行うべきは、被相続人の財産の全容を正確に把握することです。銀行口座、不動産登記簿、証券口座、保険証券、貸金庫など、あらゆる資産を確認し、一覧にまとめましょう。

また、借金・未払い医療費・葬儀費用などの「債務」も同時に整理します。これらは「控除対象」として遺産総額から差し引けます。

財産評価は原則として相続発生日の時価で行われます。不動産であれば路線価方式や固定資産評価額などを用います。

手順②:課税遺産総額を求める

遺産総額が確定したら、そこから「基礎控除額」を引きます。残った金額が「課税遺産総額」となります。この金額がゼロ以下であれば、相続税は発生しません。

課税遺産総額はあくまで全体のベースであり、ここからさらに各相続人の取得分を仮に計算していきます。

手順③:相続税総額を算出する

課税遺産総額を法定相続分に従って仮に分割し、それぞれの取得額に税率を適用します。税率は以下のように段階的に設定されています。

課税価格税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

例えば、課税遺産総額が6,000万円で相続人が2人(妻と子1人)の場合、法定相続分に基づいて1人あたり3,000万円が基準となり、税率15%、控除額50万円が適用されます。仮税額を合計すると、相続税総額は約800万円となります。

相続税の税率と具体的な計算例

相続税は、相続人の構成や財産の内容によって税額が大きく変わります。

ここでは、よく見られる10のケースをもとに、相続税の計算例を具体的に紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら、相続税の仕組みや控除の考え方を確認してみてください。

No.ケース概要主な財産内容相続人構成遺産総額課税額の目安
基本ケース(配偶者+子2人)現金・預貯金など配偶者1人・子2人6,000万円約120万円
数次相続(短期間に2回の相続)現金・不動産など1回目:配偶者+子/2回目:子のみ1回目8,000万円
2回目4,000万円
相次相続控除適用後 約200万円前後
遺言による不均等分割現金・預貯金配偶者1人・子2人1億円約736万円
不動産を含む相続土地・建物・預貯金配偶者1人・子2人8,000万円特例適用でほぼ非課税~数十万円程度
株式を含む相続上場株式・預貯金配偶者1人・子1人5,000万円約160万円
不動産・動産・株式混合土地・建物・預貯金・株式・動産配偶者1人・子2人1億500万円約700万円
相続放棄あり現金・預貯金配偶者1人・子1人(放棄1人)5,000万円約20万円
代襲相続あり現金・不動産配偶者・次男・孫(代襲)6,000万円約120万円
海外居住の相続人あり現金・国内財産配偶者1人・海外在住の子1人7,000万円約920万円
二世帯住宅の相続土地・建物・預貯金配偶者1人・子1人1億円約860万円
(特例適用時は減額)

※本表の金額は概算の目安です。実際の相続税額は、特例や控除の適用状況、不動産評価額などによって異なります。

「累進課税制度」によって、相続税は所得税と同様に、所得(遺産額)が大きくなるほど税率が上がります。税率は10〜55%の範囲で段階的に上昇し、より高額の相続ほど税負担が増加します。

ただし、一定の控除や特例を適用することで、実際の負担額を軽減できるケースもあります。

① 基本ケース:配偶者と子ども2人の場合

遺産総額が6,000万円、相続人は配偶者と子ども2人の場合を想定します。

基礎控除は「3,000万円+600万円×3=4,800万円」で、課税遺産総額は6,000万円−4,800万円=1,200万円です。
法定相続分は配偶者が1/2(600万円)、子ども2人で1/2を等分(各300万円)とします。

税率10%・控除なしの場合、配偶者60万円、子ども各30万円で、合計税額は120万円です。

一般的な家庭で発生しやすい標準的なケースです。

参考:国税庁「No.4155 相続税の速算表」

② 数次相続(短期間で続けて相続が起きる場合)

最初に父が亡くなり、母と子が相続。その後まもなく母も亡くなり、同じ財産を子が再び相続する「数次相続」の例です。

父の相続:遺産8,000万円、基礎控除4,800万円、課税遺産3,200万円。税額はおよそ350万円。

その後、母が受け継いだ4,000万円を再度子が相続しますが、この場合「相次相続控除」が適用でき、2回目の相続税は大幅に軽減されます。「相次相続控除」は、短期間で複数回の相続が起きた場合の税負担を調整する制度です。

参考:国税庁「No.4168 相次相続控除」

③ 遺言書があり、法定相続分どおりに分けない場合

被相続人の遺言書により、「配偶者が全財産の8割、子ども2人が1割ずつ」と指定されているケースです。

遺産1億円、基礎控除4,800万円、課税遺産5,200万円。
配偶者4,160万円、子ども各520万円を取得したとすると、配偶者の税率は20%・控除200万円で632万円、子どもは各52万円。

合計736万円が目安です。

相続税は、遺言による分割内容に基づいて個別に課税されるため、配分次第で税額に差が生じます。

④ 相続財産に不動産が含まれている場合

自宅(土地4,000万円・建物2,000万円)と預貯金2,000万円、合計8,000万円のケースです。

相続人は配偶者と子ども2人。基礎控除4,800万円を差し引き、課税遺産総額は3,200万円。
配偶者が自宅を相続する場合、「小規模宅地等の特例」により自宅の土地評価額が最大80%減額されます(4,000万円→800万円)。

結果として、課税遺産総額は約1,000万円程度まで圧縮され、相続税はほぼ発生しない水準になります。

参考:国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」

⑤ 相続財産に株式が含まれている場合

上場株式2,000万円、預貯金3,000万円の合計5,000万円、相続人は配偶者と子1人のケースです。

基礎控除3,600万円、課税遺産1,400万円。相続時点での株価により評価額が変動するため、税額にも差が出ます。
株式の評価は「相続発生日の終値」「相続月の平均値」などから有利な価格を選択可能です。

税率15%・控除50万円の場合、総税額はおよそ160万円です。

参考:国税庁「No.4632 上場株式等の評価」

⑥ 不動産・動産・預貯金・株式が混在している場合

土地5,000万円、建物1,000万円、預貯金2,000万円、株式2,000万円、動産500万円の合計1億500万円。
相続人は配偶者と子ども2人、基礎控除4,800万円、課税遺産5,700万円。
配偶者1/2(2,850万円)、子ども2人で1/2(各1,425万円)と仮定します。

配偶者:税率20%・控除200万円→370万円。
子ども:税率15%・控除50万円→各165万円。

合計約700万円。

資産の種類ごとに評価方法が異なるため、専門的な確認が重要です。

参考:国税庁「No.01 財産評価」

⑦ 相続放棄がある場合

遺産5,000万円、相続人は配偶者と子ども2人のうち1人が相続放棄。

基礎控除は放棄前の相続人数(3人)で計算されるため4,800万円。
課税遺産は200万円。配偶者1/2、子ども1/2で分け、税率10%で税額は合計20万円。

相続放棄があっても、控除額は減らない点がポイントです。放棄手続きは家庭裁判所への申述が必要です。

⑧ 代襲相続がある場合

長男がすでに亡くなっており、その子(孫)が代わりに相続するケースです。

遺産6,000万円、相続人は配偶者・次男・孫の3人。
基礎控除4,800万円、課税遺産1,200万円。
配偶者1/2(600万円)、次男と孫で1/2を等分(各300万円)。

税率10%で総税額は120万円。

孫は長男の相続権を引き継ぐ形で「代襲相続人」となり、他の法定相続人と同様に課税されます。

⑨ 相続人が海外に住んでいる場合

遺産7,000万円、相続人は日本在住の配偶者と、海外在住の子1人。
基礎控除3,600万円、課税遺産3,400万円。
配偶者・子ともに1/2ずつ(各1,700万円)。

税率15%・控除50万円で計算すると、各460万円、合計920万円。

海外在住の相続人であっても、日本国内の財産を相続する場合は日本の相続税の対象となります。
国外財産を取得した場合は、税務署への届出が必要な場合もあります。

参考:国税庁「No.7456 国外財産調書の提出義務」

⑩ 二世帯住宅を相続する場合

親世帯と子世帯が同じ建物に住む「二世帯住宅」を相続するケースです。

建物評価額3,000万円、土地5,000万円、預貯金2,000万円の合計1億円。相続人は配偶者と子1人とします。
基礎控除は3,600万円、課税遺産総額は6,400万円です。

配偶者と子がそれぞれ1/2ずつ相続する場合、1人あたり3,200万円。
税率15%・控除50万円で、各約430万円、合計税額は約860万円となります。

ただし、二世帯住宅の場合は「小規模宅地等の特例」の適用範囲が建物の構造や登記の内容によって異なります。
玄関やキッチンなどが完全に分かれている「完全分離型」の場合は、居住部分の一部しか特例の対象にならないことがあります。

一方で、内部で行き来できる「一体型二世帯住宅」であれば、建物全体が居住用宅地とみなされ、最大80%の評価減が適用できる可能性があります。

同じ二世帯住宅でも評価方法が変わるため、相続前に登記内容と利用実態を確認しておくことが大切です。

相続税が発生しないケース

実際には、基礎控除や特例を考慮すると、課税対象となる相続は全体の約1割程度です。不動産の評価減や配偶者控除などの制度を適用すれば、多くの場合、課税額はゼロまたは非常に少額に抑えられます。

相続税の主な控除・特例制度

配偶者控除

配偶者が相続する場合、「1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い方」までが非課税となります。

たとえ多額の遺産があっても、配偶者が相続する分には実質的に相続税がかからないケースも珍しくありません。高齢の配偶者を保護するために設けられた重要な制度です。

小規模宅地等の特例

被相続人が居住していた自宅の土地を相続する場合、一定の条件を満たせば最大80%の評価減が受けられます。同居していた家族や事業を継続する子どもが土地を引き継ぐ場合が対象です。

評価額の大幅な減少により、相続税を大きく軽減できる可能性があります。

生命保険金・退職金の非課税枠

生命保険金および死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。この制度により、生活資金や葬儀費用に充てる分が税金で減らされることを防ぎます。

相続税の節税対策

相続税は、あらかじめ準備や手続きをしておくことで、負担を大きく抑えられる場合があります。

ここでは、一般的に知られている主な節税方法と、それぞれの仕組みや注意点を解説します。
いずれの方法も要件や期限が定められているため、実際に行う際は専門家への相談が安心です。

1. 生前贈与を計画的に行う

生前のうちに少しずつ財産を贈与しておくことで、相続時の課税対象となる財産を減らすことができます。
贈与税の基礎控除により、1人あたり年間110万円までは非課税で贈与できます。

ただし、相続開始前3年以内の贈与は原則として相続財産に加算されるため、早めの対策が重要です。
贈与契約書の作成や振込記録など、後に証明できる形で贈与を行うことが望まれます。

参考: 国税庁「No.4402 贈与税の基礎控除 」

2. 生命保険の非課税枠を活用する

生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」までの非課税枠が設けられています。この枠を活用することで、相続人ごとの課税対象額を減らすことができます。

保険金は現金で受け取れるため、相続税の納付資金としても役立ちます。


参考: 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

3. 不動産の活用による評価減

現金をそのまま保有するよりも、不動産として保有したほうが評価額が下がる場合があります。特に賃貸用不動産は「貸家建付地」として評価額が減少することが多く、相続税を抑える手段として利用されています。

ただし、借入金を伴う場合は返済リスクを考慮し、長期的な計画を立てることが大切です。

4. 配偶者控除や小規模宅地等の特例を活用する

相続税の大きな控除制度として「配偶者控除」と「小規模宅地等の特例」があります。

配偶者控除では「1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額」まで非課税となります。

また、自宅の土地を相続する場合は「小規模宅地等の特例」により、最大80%の評価減が適用されます。

どちらも適用条件や申告時の書類が細かく定められているため、事前の確認が欠かせません。

参考:国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」

5. 遺言や家族信託で財産を整理する

相続が発生した後のトラブルや不公平を防ぐために、遺言書や家族信託を活用するのも有効です。遺言書を残しておくことで、法定相続分にとらわれず、希望に沿った財産の分け方を実現できます。

また、「家族信託」を利用すれば、生前から信頼できる家族に財産の管理・承継を託すことができます。

形式や手続きは法律上の要件があるため、専門家と相談して進めることが大切です。

6. 相続発生後でも可能な見直し対策

相続が発生した後でも、税額を見直せる場合があります。

たとえば、申告期限(相続開始から10か月以内)までに遺産分割が決まらない場合は、いったん仮申告を行い、後日分割が決まった段階で「更正の請求手続」によって税額の減額を申請できます。

相続税の計算は申告後も修正が可能な場合があるため、慌てず正確な手続きを心がけましょう。

また、節税対策を行う際は、贈与や契約の証拠書類を適切に保管しておくことが重要です。誤った判断を防ぐため、税理士などの専門家と相談しながら、計画的に進めていきましょう。

参考:国税庁「No.B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続」

相続税の計算ミス・漏れによるリスクと注意点

相続税は、財産の評価方法や控除の適用条件が細かく定められており、わずかな誤りでも税額に大きな差が出ることがあります。

ここでは、計算ミスや申告漏れが起きた場合に考えられるリスクと、未然に防ぐための対策を解説します。

1. 過少申告による追徴課税のリスク

申告した相続税額が実際より少なかった場合、税務署の調査によって修正が求められることがあります。このとき、「過少申告加算税」や「延滞税」が課され、追徴課税となるケースがあります。

加算税は原則として不足税額の10%(重加算税の場合は35〜40%)で、延滞期間が長いほど利息にあたる延滞税も増えます。

特に、故意に財産を申告しなかった場合は「重加算税」の対象となり、悪質と判断されるおそれがあります。

2. 無申告の場合のリスク

相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)を過ぎても申告をしていない場合、「無申告加算税」が課されます。

税務署から指摘を受ける前に自主的に申告した場合は5%程度で済みますが、指摘を受けた後では最大15%まで加算されることもあります。

また、納付が遅れた分には延滞税も加算されます。

3. 財産評価の誤りによるトラブル

相続財産の評価は、不動産や株式など資産の種類によって算定方法が異なります。

誤って高く評価してしまうと不要な納税をしてしまい、逆に低く評価してしまうと税務調査で追徴されるリスクがあります。

特に、不動産の路線価や借地権割合などの誤りは多く、金額差が大きくなりやすい点に注意が必要です。

4. 控除や特例の適用漏れ

控除や特例を正しく適用しないと、本来より多く税金を支払ってしまうことがあります。
たとえば、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」を適用し忘れると、数百万円単位で税額が変わることもあります。

これらは申告後であっても、更正の請求を行うことで税額の見直しが可能です。

5. 税務調査への対応負担

申告内容に不自然な点があると、税務署からの「相続税調査」が入ることがあります。

調査では、通帳の入出金履歴や不動産の評価根拠、贈与の記録などを詳細に確認されます。
正しく申告していれば問題ありませんが、記録や証拠が不足していると説明に時間がかかり、精神的な負担も大きくなります。

税務調査に対応する際は、税理士の同席を依頼するとスムーズです。

6. ミスを防ぐための実務的なポイント

相続税の計算ミスを防ぐためには、次のような点を意識しておくことが有効です。

  • 財産目録を作成し、漏れのないよう一覧化する
  • 不動産や株式などの評価は必ず根拠資料を保存する
  • 控除・特例の条件を国税庁のサイトで確認する
  • 申告期限の10か月を意識して早めに準備を進める
  • 不明点は税理士や専門家に相談する

こうした基本的な管理を徹底することで、申告後の修正や追徴課税のリスクを大きく減らすことができます。

相続税は一度の申告で終わるものではなく、内容に誤りがあれば後から修正されることもあります。
正確な財産把握と専門家の助言を得ることで、安心して申告を進めることができます。

相続税申告は自分ですべき?税理士に依頼すべき?

相続税の申告は、自分で行うことも可能ですが、専門家である税理士に依頼する方法もあります。どちらを選ぶかは、相続財産の内容や相続人の状況によって判断が分かれます。

ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較して解説します。

1. 自分で申告する場合


相続税の計算方法や控除制度は、国税庁のサイトで公開されており、一般の方でも一定の知識があれば申告は可能です。

たとえば、国税庁「No.4152 相続税の計算」「相続税の申告手続」を参照しながら、書類を準備することができます。

メリット

  • 税理士報酬が不要なため、費用を抑えられる
  • 財産内容を自分で把握できる
  • 比較的シンプルな相続(現金・預金中心)であれば手続きが容易

デメリット

  • 不動産や株式などの評価計算が複雑で、誤りが生じやすい
  • 控除・特例の適用漏れが起きる可能性がある
  • 申告書類の作成や資料集めに多くの時間がかかる
  • 税務調査が入った際の対応に不安が残る

財産の種類が少なく、相続人が少数であれば自分での申告も現実的です。
ただし、正確性よりも「負担の軽さ」を重視する場合は、専門家に依頼する選択肢も検討するとよいでしょう。

2. 税理士に依頼する場合

税理士は相続税の計算・評価・書類作成を専門的に行う国家資格者です。依頼すれば、複雑な財産評価や控除の適用判断をすべて任せることができます。

また、税務調査が入った場合の対応も代行してもらえるため、安心感が大きい点が特徴です。

メリット

  • 評価や控除の漏れがなく、正確な申告ができる
  • 節税対策や特例の適用可能性を専門的に判断してもらえる
  • 税務署からの問い合わせや調査にも対応してもらえる
  • 書類作成や提出の手間を大幅に省ける

デメリット

  • 報酬(通常20万〜80万円程度)が発生する
  • 依頼から申告完了まで一定の時間が必要
  • 相続内容を第三者に共有する必要がある

相続財産が多い、土地や非上場株式など評価が難しい資産を含む場合、税理士への依頼が推奨されます。

依頼先を選ぶ際は、「相続税が得意な税理士」を選ぶことが重要です。
税理士ごとに報酬体系が異なるため、複数の事務所に見積もりを取るとよいでしょう。

3. 判断の目安と選び方

以下のような基準で判断すると、どちらが適しているかが見えてきます。

判断項目自分で申告税理士に依頼
財産の種類現金・預貯金が中心不動産・株式・事業用資産などを含む
相続人の人数2〜3人程度4人以上、または関係が複雑
相続財産の総額基礎控除内または近い金額基礎控除を超える可能性が高い
書類作成・調査への時間自分で対応・確保できる不慣れ・時間をかけられない
税務調査への対応自分で対応できる対応に不安がある

相続税の申告は一度きりの重要な手続きです。

節税効果や安心感を重視するなら税理士への依頼が現実的です。一方で、費用を抑えて自分で手続きを進めたい場合は、国税庁の情報を活用して慎重に対応するのがよいでしょう。

相続税申告と納付の流れ

相続税の申告・納付は、原則として「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」に行う必要があります。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課される可能性があるため、早めに準備を進めることが重要です。

ここでは、申告までの具体的な流れと注意すべきポイントを順を追って説明します。

1. 財産と債務の調査・整理

まず行うべきは、被相続人が残した財産と負債を正確に把握することです。銀行口座、不動産登記簿、証券口座、保険証券などを確認し、一覧表を作成します。

借入金や未払医療費、葬儀費用などは「債務控除」として差し引けるため、領収書や契約書を保存しておきましょう。

2. 遺産分割協議と相続人の確定

相続人を確定した上で、財産をどのように分けるかを話し合います。すべての相続人の合意に基づいて「遺産分割協議書」を作成し、署名・押印を行います。

協議がまとまらない場合でも、申告期限内に仮申告をしておくことが大切です。

参考:国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」

3. 相続税の計算と申告書の作成

財産総額から債務・葬式費用・基礎控除・各種控除を差し引き、課税遺産総額を算出します。

計算にあたっては、国税庁が提供する 「財産評価基準書」「 No.4152 相続税の計算 」に基づく速算表を利用すると正確に計算できます。

申告書は 国税庁の公式ページ から様式をダウンロード可能です。

4. 税務署への提出方法と提出先

相続税の申告書は、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。

提出方法は、窓口持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)による提出が可能です。e-Taxを利用する場合は、電子署名・マイナンバーカードなどの準備が必要です。

提出先は、 国税庁「税務署所在地・案内」 から確認できます。

5. 納付の方法と延納・物納制度

原則として、相続税は申告期限までに現金で一括納付します。

ただし、納税額が高額で一度に支払うことが難しい場合は、「延納」または「物納」が認められることがあります。

延納とは分割払いのことを指し、最大20年までの分割が可能です。物納は、不動産や株式など現金以外の財産で納める方法です。

参考: 国税庁「No.4211 相続税の延納」 「No.4214 相続税の物納」

6. 申告後の修正・更正の請求

相続税の申告後に誤りや分割内容の変更があった場合は、「更正の請求」により税額を修正できます。たとえば、申告時点で未分割だった遺産を後日分割した場合や、控除を適用し忘れた場合などが該当します。

申告期限から5年以内であれば請求可能です。

参考:国税庁「No.B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続」

まとめ

相続税の計算は一見難解に見えますが、基本の流れを理解すれば全体像を把握できます。基礎控除を確認し、課税遺産総額を求め、控除や特例を正しく適用することが重要です。

不安な場合は早めに税理士などの専門家へ相談し、円滑かつ公正な相続手続きを進めましょう。

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この記事を書いた人

本記事は相続税理士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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