「一次相続で配偶者に全部相続させれば相続税はゼロ――」その判断が、二次相続で数百万〜数千万円の追加負担を招くことをご存知でしょうか。
二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除も縮小し、累進税率が上がるため、同じ遺産額でも一次相続より税負担が重くなるのが一般的です。
一次相続で「とりあえず配偶者に多く渡しておこう」と安易に判断した結果、一次+二次のトータルで見ると数百万円も損をしていた、というケースは決して珍しくありません。
本記事では、二次相続で相続税が高くなる5つの理由を整理したうえで、遺産1億円・2億円・3億円の3パターンで「配偶者の取得割合を変えるとトータル税額がどう変わるか」を具体的にシミュレーションします。
さらに、一次相続の遺産分割時にできる対策から、一次相続後に配偶者が取り組める生前対策、二次相続発生後に使える相次相続控除まで、時間軸に沿ってすべての対策を網羅します。
この記事の要点
- 二次相続は配偶者控除なし・基礎控除縮小・累進税率アップの三重苦で税負担が重くなる
- 一次相続で配偶者の取得割合を最適化するだけで、トータル税額に数百万円の差が出る
- 一次相続時・一次相続後・二次相続発生後の3段階で、それぞれ打てる対策がある
二次相続とは?一次相続との違いをわかりやすく解説

まずは二次相続の基本的な仕組みと、一次相続との違いを整理します。
二次相続の定義――「2回目の相続」ではなく「配偶者の相続」
二次相続とは、一次相続で遺産を引き継いだ配偶者が亡くなったときに発生する相続のことです。
たとえば、父・母・子2人の4人家族で、まず父が亡くなり母と子2人が遺産を相続する場面が「一次相続」です。その後、母が亡くなり子2人が母の遺産を相続する場面が「二次相続」にあたります。
二次相続では、母が一次相続で引き継いだ財産に加え、母自身がもともと持っていた固有財産もまとめて子が相続することになります。
一次相続と二次相続の違いを比較表で整理
一次相続と二次相続では、相続人の構成や使える控除・特例に大きな違いがあります。
| 項目 | 一次相続 | 二次相続 |
|---|---|---|
| 被相続人 | 父(または母) | 母(または父) |
| 法定相続人 | 配偶者+子 | 子のみ |
| 配偶者の税額軽減 | 適用可(最大1億6,000万円) | 適用不可 |
| 基礎控除額(子2人の場合) | 4,800万円 | 4,200万円(600万円減) |
| 生命保険の非課税枠(子2人) | 1,500万円 | 1,000万円(500万円減) |
| 小規模宅地等の特例 | 配偶者は無条件で適用可 | 同居等の要件あり |
| 相続財産の範囲 | 被相続人の財産 | 一次相続で取得した財産+配偶者固有の財産 |
※基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算。参照:国税庁|No.4152 相続税の計算
このように、二次相続では控除や特例が大幅に縮小するため、一次相続と同じ感覚で遺産分割を行うと想定外の税負担が生じるリスクがあります。
二次相続と数次相続の違い
二次相続と似た用語に「数次相続」があります。両者は異なる概念です。
二次相続は、一次相続の手続きが完了した後に、配偶者が亡くなって発生する相続です。一方、数次相続は、一次相続の遺産分割協議や相続登記が完了する前に相続人の一人が亡くなり、次の相続が発生することをいいます。
数次相続では一次相続と二次相続の手続きを同時並行で進める必要があり、手続きが複雑になります。
二次相続で相続税が高くなる5つの理由

二次相続の相続税が一次相続より重くなる構造的な理由は、主に5つあります。これらを理解しておくことが、適切な対策を立てるための第一歩です。
理由①:配偶者の税額軽減(1億6,000万円の非課税)が使えない
一次相続では、配偶者が取得した財産について法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額まで相続税が非課税になる「配偶者の税額軽減」を利用できます(参照:国税庁|No.4158 配偶者の税額の軽減)。
この制度により、一次相続では配偶者の税負担をゼロまたは大幅に軽減できます。
しかし、二次相続ではすでに配偶者が亡くなっているため、この制度は一切適用できません。これが二次相続で税負担が重くなる最大の要因です。
理由②:法定相続人が1人減り基礎控除が600万円縮小する
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
一次相続では配偶者+子2人の3人で基礎控除は4,800万円ですが、二次相続では子2人のみとなり基礎控除は4,200万円に減ります。この600万円の差だけで、課税対象の遺産が600万円増えることになります。
理由③:生命保険・退職手当金の非課税枠が500万円ずつ減る
死亡保険金と死亡退職金にはそれぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが(参照:国税庁|No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金)、法定相続人が1人減ることで非課税枠もそれぞれ500万円ずつ縮小します。
合わせて最大1,000万円の非課税枠が失われる計算です。
理由④:配偶者の固有財産が加わり課税ベースが膨らむ
二次相続では、一次相続で配偶者が取得した財産だけでなく、配偶者自身がもともと保有していた固有財産(預貯金、不動産、有価証券など)も相続財産に含まれます。
そのため、一次相続より課税対象の遺産総額が大きくなるケースが多いのです。
特に、配偶者が独自の収入源(年金、家賃収入、退職金など)を持っている場合は、一次相続後に配偶者の財産がさらに増加し、二次相続の課税ベースが膨らみやすくなります。
理由⑤:課税遺産の増加と相続人減少で累進税率が上がる
相続税は超過累進課税であり、法定相続分に応じた取得金額が大きいほど高い税率が適用されます(参照:国税庁|No.4155 相続税の税率)。
二次相続では課税対象の遺産が増える一方で相続人の数が減るため、1人あたりの法定相続分が大きくなり、適用税率が一段階上がるケースが頻発します。
たとえば、一次相続では子1人あたりの法定相続分が税率15%の区分に収まっていても、二次相続では税率20〜30%の区分に上がるということが起こり得ます。
【シミュレーション】配偶者の取得割合で相続税はいくら変わる?

二次相続の税負担が重くなることは理解できても、「実際にどのくらい差が出るのか」が分からなければ対策の判断ができません。ここでは具体的な数字でシミュレーションを行います。
前提条件:家族構成・遺産額・配偶者固有財産の設定
すべてのシミュレーションで以下を共通の前提とします。
- 家族構成:父(被相続人)、母(配偶者)、子2人
- 一次相続の法定相続人:母+子2人(基礎控除4,800万円)
- 二次相続の法定相続人:子2人のみ(基礎控除4,200万円)
- 二次相続の遺産=一次相続で母が取得した金額+母の固有財産
- 配偶者の税額軽減は一次相続で適用、二次相続では適用なし
- 小規模宅地等の特例・相次相続控除は考慮しない(純粋な取得割合の影響を見るため)
ケース①:遺産1億円(配偶者の固有財産なし)
| 配偶者の取得割合 | 一次相続の税額 | 二次相続の税額 | 合計税額 |
|---|---|---|---|
| 100%(全額取得) | 0円 | 約1,220万円 | 約1,220万円 |
| 50%(法定相続分) | 約315万円 | 約80万円 | 約395万円 |
| 0%(全額を子が取得) | 約630万円 | 0円 | 約630万円 |
遺産1億円のケースでは、配偶者が法定相続分(50%)を取得する場合に合計税額が約395万円と最も少なくなります。
配偶者が全額取得すると一次相続はゼロですが、二次相続で約1,220万円が課税され、トータルでは約825万円も多くなります。
ケース②:遺産2億円(配偶者の固有財産なし)
| 配偶者の取得割合 | 一次相続の税額 | 二次相続の税額 | 合計税額 |
|---|---|---|---|
| 80%(1億6,000万円) | 約540万円 | 約2,140万円 | 約2,680万円 |
| 50%(法定相続分) | 約1,350万円 | 約770万円 | 約2,120万円 |
| 30% | 約1,670万円 | 約160万円 | 約1,830万円 |
遺産2億円のケースでは、配偶者の取得割合を30%程度に抑えた場合に合計税額が約1,830万円と最少になります。配偶者の税額軽減を最大限活用(80%取得)した場合と比べると、トータルで約850万円の差があります。
ケース③:遺産2億円(配偶者の固有財産5,000万円あり)
| 配偶者の取得割合 | 一次相続の税額 | 二次相続の税額 | 合計税額 |
|---|---|---|---|
| 80%(1億6,000万円) | 約540万円 | 約3,340万円 | 約3,880万円 |
| 50%(法定相続分) | 約1,350万円 | 約1,600万円 | 約2,950万円 |
| 10% | 約2,460万円 | 約160万円 | 約2,620万円 |
※上記シミュレーションは一定の前提条件に基づく概算です。実際の税額は財産構成・特例適用等により異なります。参照:国税庁|No.4152 相続税の計算、国税庁|No.4155 相続税の税率
配偶者に固有財産がある場合、最適な取得割合はさらに低くなります。
このケースでは配偶者の取得割合を10%程度まで下げた方が、トータル税額は約1,260万円も軽減されます。配偶者の固有財産の額は、最適な遺産分割を考えるうえで非常に重要な変数なのです。
シミュレーション結果の読み方|最適な取得割合は一律ではない
3つのシミュレーションから分かるとおり、最適な配偶者取得割合は「遺産総額」と「配偶者の固有財産額」の組み合わせによって大きく変わります。
一律に「法定相続分で分ければよい」「配偶者控除を最大限使えばよい」とはいえません。
一般的な傾向として、以下のことが言えます。
- 遺産総額が大きいほど、配偶者の取得割合は低い方がトータル税額は少なくなる
- 配偶者に固有財産があるほど、配偶者の取得割合はさらに低い方が有利になる
- 遺産総額が基礎控除額に近い水準(5,000万〜7,000万円程度)では、配偶者控除を最大限活用した方がトータルで有利になるケースもある
一次相続と二次相続の相続税額早見表
以下は、配偶者+子2人の家族を前提に、遺産総額と配偶者の取得割合ごとの一次+二次合計税額の目安を一覧にした早見表です(配偶者の固有財産はなしと仮定)。
遺産総額5,000万〜3億円×配偶者取得割合別の合計税額一覧
| 遺産総額 | 配偶者100%取得 | 配偶者50%取得 | 最適割合時の合計 | 差額(100%との比較) |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 約10万円 | 約40万円 | 約10万円(100%) | 0円 |
| 8,000万円 | 約235万円 | 約120万円 | 約120万円(50%) | 約115万円 |
| 1億円 | 約1,220万円 | 約395万円 | 約395万円(50%) | 約825万円 |
| 1.5億円 | 約1,840万円 | 約1,190万円 | 約1,020万円(30〜40%) | 約820万円 |
| 2億円 | 約2,680万円 | 約2,120万円 | 約1,830万円(30%) | 約850万円 |
| 3億円 | 約5,460万円 | 約3,960万円 | 約3,400万円(20〜30%) | 約2,060万円 |
※配偶者の固有財産なし、子2人、小規模宅地等の特例・相次相続控除は考慮しない概算。遺産額が大きいほど配偶者控除の最大活用は不利になる傾向がある。参照:国税庁|No.4152 相続税の計算
この早見表から、遺産5,000万円の水準では配偶者控除の最大活用が最も有利ですが、遺産8,000万円以上では配偶者の取得割合を抑えた方がトータル税額が少なくなることが分かります。
遺産3億円のケースでは、100%取得と最適割合では約2,060万円もの差が生じます。
【対策①】一次相続の遺産分割でできる5つの二次相続対策

二次相続対策の最大のチャンスは、一次相続の遺産分割のタイミングです。ここでの判断が、二次相続を含めたトータルの税負担を大きく左右します。
対策1-1:配偶者の取得割合をシミュレーションで最適化する
最も重要な対策は、前章のシミュレーションで示したとおり、一次+二次のトータル税額が最小になる配偶者の取得割合を算出することです。
配偶者の固有財産の額、子の人数、財産の構成(不動産の有無など)を踏まえ、税理士にシミュレーションを依頼してください。
多くの場合、配偶者の税額軽減を「限度いっぱいまで使う」のではなく、配偶者の取得割合を法定相続分以下に抑える方がトータルで有利になります。
対策1-2:収益物件・値上がりする資産は子が相続する
賃貸アパートなどの収益物件を配偶者が取得すると、一次相続後も家賃収入によって配偶者の財産が増え続け、二次相続の課税ベースが膨らみます。
同様に、将来値上がりが見込まれる株式や開発予定地なども、配偶者ではなく子が取得した方が有利です。
配偶者には価値が変動しにくい現預金を中心に取得させ、収益性・成長性のある資産は子が相続するのが二次相続対策の鉄則です。
対策1-3:子が小規模宅地等の特例を使って自宅の土地を相続する
小規模宅地等の特例は、自宅の土地の評価額を最大80%減額できる強力な制度です(参照:国税庁|No.4124 小規模宅地等の特例)。
一次相続で配偶者が自宅を取得すれば無条件で特例が適用されますが、二次相続では子が同居しているなどの要件を満たす必要があり、適用のハードルが上がります。
もし子の中に被相続人と同居している人がいれば、一次相続の段階で同居の子がこの特例を使って自宅の土地を相続することで、一次・二次の双方で特例を有効活用できます。
対策1-4:配偶者居住権を活用して所有権は子に渡す
2020年4月に創設された配偶者居住権は、自宅の「住む権利(居住権)」と「所有する権利(所有権)」を分離し、配偶者が居住権を、子が所有権を取得する仕組みです。
配偶者居住権を設定することで、配偶者は住み慣れた自宅にそのまま住み続けられる一方、自宅の所有権は子に移転します。配偶者居住権は配偶者の死亡により消滅するため、二次相続の課税対象にはなりません。
結果として、自宅の価値のうち居住権に相当する部分が二次相続の課税ベースから外れ、節税効果が得られます。
ただし、配偶者居住権の設定が必ずしも有利になるとは限らないため、税理士のシミュレーションを受けたうえで慎重に判断してください。
対策1-5:生命保険の非課税枠を使い切る
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。一次相続で非課税枠が残っている場合は、被相続人を契約者・被保険者、子を受取人とする生命保険に加入しておくことで、非課税枠を最大限活用できます。
非課税枠を超える保険金は課税対象になりますが、保険料支払い分だけ被相続人の現金(相続財産)が減少するため、間接的な節税効果もあります。
【対策②】一次相続後〜二次相続前にできる配偶者の生前対策

一次相続が終わった後でも、二次相続に備えてできる対策は複数あります。配偶者が存命中に計画的に財産を移転・整理しておくことで、二次相続の課税ベースを縮小できます。
対策2-1:配偶者から子・孫への暦年贈与で財産を移転する
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません(参照:国税庁|No.4402 贈与税がかかる場合)。
配偶者が子や孫に毎年110万円ずつ贈与を続ければ、二次相続の課税ベースを着実に縮小できます。
ただし、2024年の税制改正により、暦年贈与の生前贈与加算期間が段階的に3年から最大7年に延長されています(参照:国税庁|No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。
一次相続後できるだけ早い段階から贈与を始めることが重要です。
対策2-2:相続時精算課税の年110万円基礎控除を活用する
2024年1月以降、相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除が新設されました(参照:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択)。
この110万円以下の贈与は相続財産への加算対象にもならないため、暦年贈与の7年加算を心配する必要がありません。
配偶者が高齢で二次相続までの期間が短いと見込まれる場合は、暦年贈与より相続時精算課税の基礎控除を活用する方が確実な節税効果を得られる可能性があります。
対策2-3:配偶者が不要な不動産を売却して現金化する
一次相続で配偶者が不動産を取得した場合、不要な不動産は売却して現金化しておくことが二次相続対策として有効です。
売却資金の一部を暦年贈与に充てることで二次相続の課税ベースを減らせるだけでなく、二次相続時の納税資金を確保する効果もあります。
相続税の納付は現金一括が原則です。不動産ばかりで現金が不足すると、子が納税に困窮するリスクがあるため、二次相続前に現金化しておくことは実務上も重要です。
対策2-4:配偶者が生命保険に加入して非課税枠を確保する
配偶者自身を被保険者、子を受取人とする生命保険に加入することで、二次相続時に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を活用できます。
子が2人であれば1,000万円までの死亡保険金が非課税になります。
保険料を支払うことで配偶者の現金(将来の相続財産)が減り、受け取った保険金の一部は非課税になるため、二重の節税効果が得られます。
対策2-5:墓石・仏壇を生前に購入して非課税財産に転換する
墓地、墓石、仏壇、仏具などの祭祀財産は相続税の非課税財産です(参照:国税庁|No.4108 相続税がかからない財産)。
一次相続後にこれらをまだ購入していなければ、配偶者が生前に購入しておくことで、現金を非課税財産に転換し、二次相続の課税ベースを縮小できます。
【対策③】二次相続が発生した後にできること

二次相続が発生してしまった後でも、いくつかの方法で税負担を軽減できます。
対策3-1:相次相続控除(10年以内の連続相続で税額を軽減)
一次相続から二次相続までの期間が10年以内の場合、二次相続の相続税額から一定額を控除できる「相次相続控除」が適用されます(参照:国税庁|No.4168 相次相続控除)。
相次相続控除は、一次相続で配偶者に課税された相続税額をもとに計算され、一次相続からの経過年数が短いほど控除額が大きくなります(1年につき10%ずつ逓減)。
たとえば、一次相続から4年後に二次相続が発生した場合は、一次相続で課された税額の60%程度が控除対象になります。
ただし、一次相続で配偶者の税額軽減を最大限活用して配偶者の相続税がゼロだった場合は、相次相続控除の計算の基礎となる税額がないため、控除額もゼロになります。
この点からも、一次相続で配偶者にあえて一定の税負担を残しておくことには合理性があります。
対策3-2:二次相続でも遺産分割の工夫で税額を最小化する
二次相続の相続人が子2人以上の場合、遺産分割の内容によって各相続人の税額は変わります。
たとえば、小規模宅地等の特例が適用可能な相続人に自宅の土地を取得させるなど、特例の適用を最大化する分割を検討しましょう。
対策3-3:相続税に強い税理士で土地評価を適正に下げる
二次相続でも、相続財産に土地が含まれている場合は、税理士の評価手法によって税額が大きく変わります。
不整形地の補正、セットバック、都市計画道路予定地の減額など、適用可能な減額要素を漏れなく反映できる相続専門の税理士に依頼することが、相続発生後にできる最も実効性の高い節税対策です。
二次相続対策の注意点|節税だけで判断してはいけない理由

二次相続対策を考える際、税額最小化だけを追求すると別のリスクが生じます。ここでは見落としがちな注意点を整理します。
配偶者の生活保障と節税のバランスをどう取るか
シミュレーション上は配偶者の取得割合をゼロに近づけるほどトータル税額は少なくなるケースが多いですが、配偶者の生活資金が不足してしまっては本末転倒です。
配偶者の年齢、健康状態、年金収入、住居の確保、生活費の見通しを総合的に考慮し、「生活に必要な最低限の財産は配偶者が確保したうえで、残りを子に渡す」というバランスで考えることが大切です。
配偶者居住権の活用や、生命保険による資金確保と組み合わせることで、節税と生活保障を両立できるケースもあります。
子が1人の場合は遺産分割の自由度が限られる
子が2人以上いる場合は遺産分割の自由度が高く、配偶者の取得割合を柔軟に調整できます。
しかし、子が1人しかいない場合は、配偶者と子の2人だけで遺産分割を行うことになり、配偶者の遺留分(法定相続分の1/2)を下回る分割は遺留分侵害の問題が生じます。
子が1人のケースでは、遺産分割の調整余地が限られるため、一次相続後の暦年贈与や生命保険の活用など、生前対策を組み合わせることで二次相続の税負担を軽減する必要があります。
二次相続までの期間が読めないリスクへの対処法
二次相続対策の最大の不確実性は、「配偶者がいつ亡くなるかわからない」という点です。一次相続の直後に二次相続が発生する可能性もあれば、10年以上先になる可能性もあります。
このリスクに対処するには、以下の考え方が有効です。
- 二次相続までの期間が短い場合に備え、配偶者の取得割合をある程度抑えておく
- 相次相続控除が使えるように、一次相続で配偶者にも一定の相続税を納めてもらう
- 一次相続後にできる生前対策(暦年贈与、生命保険)を早期に開始して時間を味方にする
- 二次相続までの期間が長くなった場合は、暦年贈与の効果が積み上がるためプラスに働く
よくある質問(FAQ)
Q1. 二次相続とは何ですか?
二次相続とは、一次相続(最初の相続)で遺産を引き継いだ配偶者が亡くなったときに発生する相続のことです。たとえば、父が亡くなり母と子が遺産を相続した後(一次相続)、母が亡くなって子が母の遺産を相続する場面(二次相続)を指します。
Q2. なぜ二次相続では相続税が高くなるのですか?
主な理由は5つあります。配偶者の税額軽減(最大1億6,000万円)が使えないこと、法定相続人が1人減り基礎控除が600万円縮小すること、生命保険等の非課税枠が減ること、配偶者の固有財産が加わり課税ベースが膨らむこと、そして累進税率が上がることです。
Q3. 一次相続で配偶者に全部相続させるのは損ですか?
遺産総額が基礎控除額に近い水準(5,000万〜7,000万円程度)であれば、配偶者が全額取得してもトータルで不利にならないケースがあります。
しかし、遺産が8,000万円以上になると配偶者控除を最大限活用するよりも取得割合を抑えた方がトータル税額が少なくなる傾向があります。必ず一次+二次のトータルでシミュレーションしてください。
Q4. 二次相続の相続税を減らす最も効果的な方法は?
一次相続の遺産分割時に配偶者の取得割合を最適化することが最も効果的です。
これに加え、一次相続後の暦年贈与、生命保険の非課税枠活用、収益物件は子が相続するなどの対策を組み合わせることで、トータルの税負担を大幅に軽減できます。
Q5. 相次相続控除とは何ですか?
一次相続から二次相続までの期間が10年以内の場合に、二次相続の相続税額から一定額を控除できる制度です。
一次相続で配偶者に課税された相続税額をもとに計算され、経過年数が短いほど控除額が大きくなります(1年あたり10%ずつ逓減)。一次相続で配偶者の相続税がゼロの場合は控除額もゼロになる点に注意してください。
まとめ|二次相続を見据えた遺産分割が家族の負担を軽くする
二次相続で相続税が重くなる根本原因は、配偶者の税額軽減の喪失、基礎控除の縮小、累進税率の上昇という構造的なものです。これらは制度の仕組みである以上、避けることはできません。
しかし、一次相続の段階で適切な遺産分割を行い、一次相続後も計画的に対策を進めることで、トータルの税負担は大幅に軽減できます。
最後に、今すぐ取り組むべきアクションを3つに整理します。
1. 一次+二次のトータル税額をシミュレーションする
配偶者の取得割合を変えたときに、一次相続と二次相続の合計税額がどう変わるかを数字で把握してください。配偶者の固有財産の額も必ず考慮に入れましょう。税理士事務所が提供する二次相続シミュレーションツールを活用するのも有効です。
2. 「節税」と「配偶者の生活保障」のバランスを家族で話し合う
税額の最小化だけを追求すると、配偶者の生活が困窮するリスクがあります。配偶者の年齢、健康状態、生活費の見通しを踏まえ、家族全員が納得できる遺産分割を話し合いましょう。配偶者居住権の活用も選択肢の一つです。
3. 相続専門の税理士に相談する
二次相続を含めたトータルの税額最小化は、配偶者の固有財産、不動産の評価、小規模宅地の適用判断、相次相続控除の計算など、専門的な判断が多数求められます。相続に強い税理士に早い段階で相談することが、家族全体の税負担を軽くする最も確実な方法です。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。税制は改正される可能性があるため、具体的な対策にあたっては最新の情報を確認し、税理士にご相談ください。



