相続税の計算でいちばん迷いやすいのが「土地の評価」です。土地は現金のように額面が決まっていないため、相続税では国が定める路線価を使って評価額を出します。
そのため、評価方法や利用の仕方によって税額が大きく変わり、どう評価するかが重要です。
ただ、路線価図の数字やアルファベットの意味、補正率の選び方など、はじめて見ると「どこをどう読めばいいの?」となりがちです。
本記事では、路線価の調べ方や読み方、評価額の計算手順、補正率などを一通り整理します。
そのうえで、つまづきやすいポイントや、税理士へ相談すべきケースについても紹介します。
相続税の路線価とは?
相続税の申告で最初に理解しておきたいのが、土地の評価に用いる「路線価」です。
路線価とは、道路(路線)に面する標準的な宅地について、1㎡あたりいくらで評価するかを示した金額です。路線価図では千円単位で表示され、たとえば「200」とあれば 200千円=20万円/㎡ を意味します。
相続税評価では、まず「その土地が面している道路の路線価」を確認し、次に土地の形状や条件に応じた補正率を反映させて最終評価額を計算します。
なぜ相続税評価で路線価を使うのか
土地の価格を「時価」で評価すると、市場環境や売買時期、取引条件によって金額が変動しやすく、相続人間でも評価が割れやすくなります。また、相続税は全国で公平に課税される必要があるため、税務上は誰が計算しても同じ結論になりやすい基準が求められます。
路線価を使うことで、
「地域ごとに一定の相場を反映しつつ、同じ前提なら同じ計算結果になり、納税者側でも計算・検証ができる」
というメリットが成り立ちます。
相続税の土地評価が「路線価ベース」である理由は、まさにここにあります。
路線価は税負担の公平性を保つためのもの
ポイントは、路線価が実際に売れる値段(実勢価格)そのものではないという点です。
路線価は、税負担の公平性を保つための「税務上のルールに基づく価格」であり、一般に公示地価のおおむね8割程度を目安として設定されるとされています。
つまり、同じ土地を「売ったらいくらか」という視点と、「相続税ではいくらと評価するか」という視点は必ずしも一致しません。この違いを押さえるだけでも、相続税の土地評価の見通しがかなり良くなります。
また、路線価は全国すべての土地に付いているわけではありません。市街地・住宅地など道路ごとに評価しやすい地域には路線価が設定されますが、路線価のない地域も存在します。その場合は「倍率方式」という別のルールで評価します(後述)。
つまり、相続税の土地評価は大きく 路線価方式/倍率方式 の2本立てであり、路線価が“あるかないか”の確認は出発点になります。
路線価の定義(1㎡あたり・千円単位・毎年7月公表)
路線価は国税庁が毎年公表する「相続税・贈与税用の土地評価の基準値」です。
基準日はその年の1月1日で、地価公示や取引事例などを踏まえて評価され、毎年7月頃に「路線価図・評価倍率表」として公開されます。相続税評価では、この路線価に地積(㎡)を掛ける前に、土地の条件を反映する補正率を適用するのが基本です。
路線価そのものは「その道路に面する標準的な宅地」の基準値なので、現実の土地が標準的でない場合は補正で調整する、という構造になっています。
路線価と公示地価・実勢価格・固定資産税評価額の違い
土地価格の指標は複数あり、似た言葉が多いため混同しがちです。ここは整理して理解しておくと、記事の後半がスムーズになります。
- 実勢価格(時価)
実際の売買で成立する価格です。駅距離、建築条件、周辺需要などにより大きく上下します。 - 公示地価
国土交通省が毎年3月頃に公表する標準地の価格で、土地取引の“目安”として広く使われます。 - 固定資産税評価額
市区町村が固定資産税の課税のために評価した価格です。3年ごとに評価替えされます。 - 路線価
相続税・贈与税のための評価額です。公示地価を基礎に、税の公平性の観点から調整された水準になっています。
相続税申告では、「実勢価格っぽいから」という理由で評価を動かすことはできません。あくまで路線価(または倍率方式)のルールに従って評価するのが原則で、ここを外すと税務上の評価とズレてしまうので注意が必要です。
路線価がある地域/ない地域の見分け方
路線価の有無は、国税庁サイトの「路線価図・評価倍率表」を見ると判断できます。
- 路線価図に数字が入っている道路がある地域
→ その道路に面する宅地は路線価方式 - 路線価図が表示されず倍率表のみの地域
→ 倍率方式
さらに、同じ市区町村でも「幹線道路沿いだけ路線価がある」「住宅地は路線価だが、外縁部は倍率方式」など、混在するケースがある点も覚えておくとよいでしょう。
評価方法を取り違えると根本から計算が変わるため、土地ごとに“路線価が付く道路に面しているか”をまず確認することが重要です。
路線価はいつの年のものを使う?
路線価は毎年変わるため、「いつの年の路線価を使うのか」は相続税評価の最重要ポイントのひとつです。
結論から言うと、相続税の土地評価で使うのは“相続が開始した年分の路線価”です。相続開始日とは被相続人が亡くなった日を指し、その日が属する年の路線価を採用します。
ここで注意したいのは、路線価の公表時期(毎年7月頃)と、相続開始日(死亡日)の前後は関係ないという点です。
たとえその年の路線価がまだ公表されていないタイミングで相続が発生しても、後日公表される「その年分」を使うのがルールです。前年分を使うわけではありません。
また、相続税の申告期限は「相続開始から10か月以内」です。2025年に相続が発生した場合、申告が2026年にずれ込むケースでも、評価に使う路線価は2025年分のまま固定になります。
申告する年ではなく、“亡くなった年”で決まると覚えてください。
使うのは「亡くなった年分」の路線価
相続税評価の根拠は、相続開始時点(死亡時点)の財産価値です。そのため、土地の評価も、相続開始年の路線価に基づいて算定します。
- 相続開始年=死亡日が属する年
- 採用路線価=相続開始年分の路線価
この対応関係は例外なく、評価の起点になります。
2025年に相続した場合の具体例
2025年の相続では、次のように考えます。
- 2025年1月10日に死亡 → 2025年分の路線価を使用
- 2025年6月30日に死亡(まだ2025年分の路線価が未公表) → 2025年分を使用
- 2025年12月25日に死亡 → 2025年分を使用
つまり、年内のどのタイミングで相続が発生しても同じ年分を使うということです。「7月以降だから新しい路線価」「7月前だから前年」などの区分はありません。
さらに、申告が翌年になる場合でも年分は変わりません。
例:2025年3月に死亡 → 申告期限は2026年1月頃
の場合でも 評価は2025年分の路線価で行います。
路線価の改定タイミングと注意点
路線価は「1月1日時点の地価」を基準に作成され、毎年7月頃に公表されます。この“基準日と公表日のズレ”が混乱の原因になりやすいところです。
- 基準日:その年の1月1日
- 公表日:その年の7月頃
- 相続税評価で使う年:死亡日が属する年(=基準日と同じ年)
7月より前に相続が発生した場合は、申告時点で路線価が出揃っているのを待って計算する流れになります。
実務上は、いったん概算で申告準備を進め、7月の公表後に正式計算に切り替えるケースも多いです。
例外・迷いやすいケース
ここからは、実務で質問が出やすい“境界ケース”を整理します。基本ルールは同じですが、判断の根拠をセットで理解しておくと安心です。
亡くなった年と申告する年が違うとき
前述の通り、申告する年は関係ありません。例えば2025年の死亡なら、申告が2026年でも評価は2025年分です。
相続が複数年にまたがって発生する場合(連続相続など)
例えば、父が2025年、母が2026年に亡くなった場合は、
- 父の相続 → 2025年分路線価
- 母の相続 → 2026年分路線価
と、相続ごとに死亡年で路線価が分かれるのが原則です。
同じ土地を連続して相続した場合でも、評価年が変わるため、相続税評価額は当然変動し得ます。
同時死亡(同日死亡)の場合
同じ日に亡くなった場合は、法律上“同時に相続が開始した”扱いになります。
この場合も その日が属する年分の路線価を用います。(誰を先に相続したか、という順序がなく、年分の判断には影響しません)
失踪宣告が関係する場合
失踪宣告が出て相続が開始する場合、相続開始日は「失踪宣告で死亡とみなされた日」になります。
その日が属する年分の路線価を使うため、実際の失踪時期とはズレる点に注意が必要です。
申告後に路線価や評価に誤りが見つかった場合
路線価の年分は変わりませんが、
- 道路の取り違え
- 地番の誤り
- 補正率の適用漏れ
などにより評価誤りが判明した場合は、修正申告や更正の請求で対応します。
「翌年分に直す」ではなく、同じ年分で正しい計算に直すという扱いです。
相続税路線価の調べ方
路線価の調べ方自体は難しくありませんが、実際の相続現場では、「場所の特定」→「前面道路の確認」→「路線価の読み取り」のどこかでズレが起きやすく、評価額が大きく変わってしまうことがあります。
特に初心者の方がつまずきやすいのは次の3点です。
- 住所と地番が一致しない(地番違いで別の路線価を見てしまう)
- 前面道路を取り違える(道路1本違うだけで単価が変わる)
- 路線価がない地域に気づかない(倍率方式に切り替えるべきなのに路線価を探し続ける)
この3つを意識しながら、以下の手順で進めると迷いにくくなります。
国税庁「路線価図・評価倍率表」で調べる流れ
路線価の公式情報源は国税庁の「路線価図・評価倍率表」です。調査は次の順番で行います。
- STEP1:対象年分を選ぶ
まず、相続開始年(死亡年)を確認し、その年分の路線価図を開きます。
※同じ土地でも年分が違えば評価は変わるため、ここを最初に固定します。 - STEP2:都道府県→市区町村を選ぶ
国税庁サイトで都道府県を選択し、次に市区町村へ進みます。
市区町村の一覧には路線価図・評価倍率表のリンクが並ぶ形になっています。 - STEP3:路線価図を開き、該当地域の図面を選ぶ
路線価図は複数の図面に分割されていることが多く、「中心部」「北部」「南部」などに分かれていることがあります。
対象地が入っていそうな図面を選んで地図を表示します。 - STEP4:対象地の位置を特定して“前面道路”の路線価を読む
対象地の敷地が接している道路を確認し、その道路に書かれている数字(路線価)を採用します。
ここで重要なのが、“敷地の前面道路”を正しく選ぶことです。
近い道路や大きい道路ではなく、対象地が実際に接している道路(建物の出入り・利用の中心になる道路)を基準にします。
地番の調べ方(登記簿/固定資産税納税通知書/地図との突合)
路線価調査でいちばん多いミスが地番の取り違えです。
住所(住居表示)と地番は別物なので、「住所で検索したつもりが、場所が微妙にズレていた」というケースが起きやすいです。
▼地番を確認する主な資料
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
最も確実。地番・地目・地積が載っています。 - 固定資産税納税通知書(課税明細書)
地番が記載されています(複数筆ある場合は一覧で出ます)。 - 公図(法務局)/地積測量図
形状・隣接関係を確認するときに有効です。
▼地番確認のコツ
- 複数筆あるかどうかを必ず見る
1つの住所に複数の地番が紐づいていることは珍しくありません。
評価単位の切り分けにも関わるので、筆数は重要です。 - 地番と現地位置の突合をする
公図やブルーマップ、地番参考図があると確認しやすいです。
「地番→位置→道路」の順で突合していくと、取り違えがかなり減ります。
全国地価マップの使い方とメリット・注意点
「全国地価マップ(一般財団法人資産評価システム研究センターの地図)」は、住所検索や地図操作が直感的で、初心者でも場所を特定しやすいツールです。
▼メリット
- 住所検索で周辺地図に飛べる
- 路線価のある道路が視覚的にわかりやすい
- 公図的な位置関係を掴みやすい
▼注意点
- 最終判断は国税庁の路線価図で行う
地価マップは補助として非常に便利ですが、評価根拠としては国税庁の図面が正式です。 - 道路区間の境界に注意
1本の道路に複数の路線価がある場合、地価マップの表示だけで判断すると区間ズレが起きることがあります。
必ず路線価図で区間を確認するのが安全です。
路線価図が見つからない時のチェックポイント
「路線価がどこにも書いていない」「図面に到達できない」というときは、次の順で確認します。
- 図面の分割を確認する
同じ市区町村でも複数図面があるため、別図面に対象地が載っている可能性があります。 - 倍率方式の地域かどうかを疑う
路線価図ではなく倍率表だけが表示されている場合、その地域は倍率方式で評価するルールです。 - 「路線価がない道路に面している」ケースを確認する
市街地でも、細い私道や新設道路などには路線価が設定されないことがあります。 - その場合、下記の分岐になるため、状況整理が必要です。
- 近傍の路線価を使う補完ルール
- あるいは倍率方式
前面道路の決め方の実務ポイント
路線価を決めるときは「道路を1本選ぶだけ」に見えますが、前面道路の決定がズレると評価単価が根本から変わります。
▼よくある取り違え例
- 角地で“便利そうな道路”を正面にしてしまう
→ 正面路線価は「利用の中心になる側」 - 道路に接していないのに近い道路の路線価を採用する
→ 敷地が接していない道路の路線価は使えません - セットバックが必要な道路を普通に前面と扱う
→ セットバック部分の評価減を忘れがち
前面道路を決めたら、「角地加算や二方路線影響などが必要か」もセットで検討する流れになります。
ルート分岐の整理:路線価方式か倍率方式か
最後に、路線価を探す前に頭の中で整理しておくとラクな分岐です。
- 対象地が路線価のある道路に面している
→ 路線価方式 - 対象地が路線価のない地域・道路に面している
→ 倍率方式(固定資産税評価額×倍率)
ここを早めに見極めると、「路線価を探し続けて時間だけ過ぎる」という状態を防げます。
路線価図の読み方
路線価図は、相続税評価のために「道路ごとの宅地単価」と「評価の前提情報」を一枚にまとめた地図です。見た目はシンプルですが、数字だけ拾って終わりにすると高確率で評価がズレます。
なぜなら路線価図には、単価以外に下記のような“計算の土台になる情報”が埋め込まれているからです。
- 借地権割合(権利関係の前提)
- 地区区分(補正率表の選択の前提)
- 路線価の区間境界(採用単価の前提)
- 複数道路の影響(加算の前提)
したがって路線価図は、「①どの道路の値を使うか → ②値の読み取り → ③前提記号の確認」の順で読むのが鉄則です。
以下でその読み方を整理します。
数字(200など)の読み方=1㎡あたりいくら?
路線価図の数字は、「道路に面する標準的な宅地の 1㎡あたりの価格(千円単位)」です。
- 表示が 200 → 200千円/㎡=20万円/㎡
- 表示が 325 → 325千円/㎡=32万5,000円/㎡
- 表示が 85 → 85千円/㎡=8万5,000円/㎡
ここで重要なのは、「道路に付いている値」という点です。
土地に付いているのではなく、道路に付いています。つまり、
土地評価の第一歩は「どの道路の路線価を採用するか」の特定
です。
▼採用する道路の数字
- 土地が接している道路の路線価を使う
近い道路・大きい道路・高い道路ではありません。 - 接している道路が複数ある場合は“正面道路”を決める
正面路線価を決めた後に、側方・背面の影響を加算します。 - 接していない道路の値は使えない
“道路越しに近いから”は不可です。
▼単位ミス防止のコツ
路線価は千円単位なので、計算表では必ず
- 「200千円/㎡」
- 「20万円/㎡」
- 「200,000円/㎡」
のどの単位で作業しているのか、横にメモしておくのが安全です。
“千円のまま面積を掛けてしまう”ミスは実務で非常に多いため、ここだけは注意してください。
アルファベット(A〜G)が示す借地権割合
数字の横に A〜G などのアルファベットがある場合、これは借地権割合の区分です。
借地権割合は「その道路に面する土地で借地権が設定されている場合、借地権が土地価額のうちどれくらいを占めるか」の目安で、相続税評価で次の場面に使います。
- 借地権の評価
- 貸宅地(底地)の評価
- 借地権付き建物の整理
- 貸家建付地の計算の前提
▼よくある見落とし例
- 土地が“自用地(更地)”だと思い込んでいたが、実は借地だった
→ 借地権割合の記号が評価に直結 - 底地の評価なのに記号を見ずに自用地単価で計算した
→ 基礎の時点で過大評価になり得る
つまり、借地かどうかが確定していない段階でも、「記号が付いているか」は必ず確認しておくべき前提情報です。
地区区分(普通住宅地区など)で補正率が変わる理由
路線価図には「地区区分」が書かれていることがあります。
例:普通住宅地区、併用住宅地区、商業地区、中小工場地区など。
これは何のためにあるかというと、補正率表の“種類の選択”に使うためです。
相続税評価は路線価に各種補正率を掛けますが、補正率表は地区ごとに分かれています。
同じ奥行距離でも、下記では率が違うケースがあるためです。
- 普通住宅地区の補正
- 商業地区の補正
▼地区区分確認の実務ポイント
- 対象地が属する地区区分をまず固定
- その地区区分に対応した補正表で率を拾う
- 別の地区の補正表を混ぜない
路線価が合っていても、補正表を取り違えると評価がズレます。
“路線価は正しいのに計算が違う”最大原因はここです。
1本に路線価が2つある場合の扱い
同じ道路でも、場所によって路線価が変わることは珍しくありません。この場合、道路の途中に「区間境界」があり、区間ごとに別の路線価が割り当てられています。
▼採用する路線価
- 対象地が接している区間の路線価を使う
- 境界付近の場合は、敷地の前面がどの区間に属するかを地図上で慎重に確認します。
▼よくある間違い例
- 少し先の“高い区間”を拾ってしまう
- 境界線を見落とし、道路全体が同じ単価だと思い込む
区間の境界は線や図の切れ目で示されることが多いので、拡大して「対象地の真正面の道路文字」を見る癖をつけると安全です。
路線価図で“ここまで読めると強い”補助情報
路線価図は単価地図ですが、実は道路形状や接道環境から補正の当たりもつけられます。
- 角地・二方路線っぽい形状が分かる
→ 側方路線影響加算/二方路線影響加算の検討へ - 細い道路・行き止まり・私道っぽい道路が見える
→ 私道評価やセットバックの検討へ - 敷地延長(旗竿地)になりそうな配置が見える
→ 敷地延長補正の検討へ
つまり路線価図は、「単価を読む地図」であると同時に「補正の予告編の地図」でもあります。
読み取りの段階で土地の“クセ”を見つけておくと、後工程が一気に楽になります。
土地の利用状況で評価が変わる(自用地/貸宅地/貸家建付地など)
土地の評価は、その利用状況によって大きく変動します。具体的には、土地が「自用地」なのか「貸宅地」なのか、あるいは「貸家建付地」なのか、などの利用状況が評価額に大きな影響を与えます。
土地の評価額を抑えたり、逆に増加させたりする要因として、この利用状況は非常に重要なポイントです。ここでは、土地の利用状況ごとの評価方法と、その影響について解説します。
自用地(自己使用地)
自用地とは、所有者自身が利用している土地を指します。例えば、自宅を建てるために使用している土地や、事業を行うために使用している土地が該当します。
自用地は、評価額を決定する際に最も一般的な基準となり、路線価が適用される地域では、接道する道路の路線価に基づいて評価されます。
▼自用地の特徴
- 土地を所有者が自分で利用している場合、賃貸収入やその他の収益を生むことはありません。
- 自用地には、特別な減額や補正が適用されることは少なく、標準的な評価方法が使われます。
▼自用地の評価方法
自用地の評価は、基本的に路線価方式または倍率方式を用いて行います。都市部や住宅地では路線価が適用され、地方や郊外の土地では倍率方式が適用されます。
▼対策方法
- 自用地に関しては特別な減額措置は少ないため、他の土地利用方法に変更しない限り評価額が高くなる可能性があります。
- 相続時に土地の用途を変えることで、評価額を低く抑える方法も検討できます。
貸宅地(貸家が建っている土地)
貸宅地とは、土地に賃貸用の住宅が建てられており、その住宅が賃貸契約で他人に貸し出されている土地を指します。
賃貸用の住宅が建っている土地では、賃貸収入があるため、評価額は自用地と比較して低くなることがあります。
▼貸宅地の特徴
- 土地に建物が建っており、賃貸収入を得ているため、土地の評価額には収益性が反映されます。
- 自用地に比べて、土地の評価額が低くなる傾向にあります。
▼貸宅地の評価方法
貸宅地の評価では、「貸家建付地」として評価されることが一般的です。この評価では、借地権割合や建物の評価額などが考慮され、土地の評価額はその収益性に基づいて算出されます。
評価額の算出方法
- 路線価または倍率方式を用いて基本評価額を決定します。
- 次に、借地権割合や借家権割合を考慮して、土地の評価額を減額します。
- 減額後の評価額が相続税評価額となります。
▼対策方法
- 貸宅地の場合、借地権割合や借家権割合を適切に適用することで、評価額を大きく抑えることができます。
- 賃貸契約や借地契約の内容を見直し、評価額を最大限減額する方法も検討できます。
貸家建付地(建物が賃貸用として使用されている土地)
貸家建付地とは、土地に賃貸用の建物が建てられており、その建物が他人に貸し出されている場合の土地です。この土地の評価は、建物の賃貸収入を考慮して行われます。
貸家建付地は、貸宅地と同様に、収益性に基づいて評価され、評価額は低くなることが一般的です。
▼貸家建付地の特徴
- 土地に建物が建っており、その建物が賃貸されているため、土地の評価額には賃貸収入の影響が反映されます。
- 賃貸用建物がある場合、通常の自用地よりも評価額が低くなりますが、建物の賃貸契約内容や借地権の有無によって調整が必要です。
▼貸家建付地の評価方法
貸家建付地の評価では、以下のポイントが考慮されます。
- 借地権割合: 土地が貸し出されている場合、借地権割合を考慮することで、土地の評価額が減額されます。
- 借家権割合: 貸家建付地の評価では、借家権割合を適用し、土地の評価額を減額します。
これにより、土地の評価額が通常の自用地と比べて低くなるため、相続税評価額を抑えることができます。
▼対策方法
- 貸家建付地の評価においては、借家権割合や借地権割合を適切に適用することで、相続税評価額を抑えることが可能です。
- 賃貸契約の内容や土地利用の実態を見直し、適正な評価額に調整することが重要です。
更地(建物のない土地)
更地とは、建物が何も建っていない土地のことを指します。更地の評価は、その土地の立地や面積に基づいて決定されます。
更地の評価額は、基本的に路線価や倍率方式で評価されますが、土地の利用が進んでいないため、他の土地利用方法に比べて相対的に高く評価されることがあります。
▼更地の特徴
- 建物がないため、評価額はその土地自体の価値に基づいて決まります。
- 更地は、市場価値に近い評価がされることが多いため、税額が高くなる可能性があります。
▼更地の評価方法
- 路線価方式: 住宅地や商業地などの都市部では、路線価を用いて評価が行われます。
- 倍率方式: 地方や郊外の土地では、倍率を用いて評価が行われます。
▼対策方法
- 更地の場合、土地の利用方法を見直して、評価額を抑える方法を検討します。例えば、賃貸用の建物を建てるなどして、貸家建付地としての評価を目指すことができます。
路線価方式による相続税評価額の計算ステップ
路線価方式の計算は、ざっくり言うと「道路の単価(路線価)を出発点に、土地の個別事情を補正して、面積を掛ける」という構造です。
ただし、実際の計算は “どの路線価を採用するか” と “どの補正をどこまで掛けるか” で金額が大きく変わるため、手順を固定して進めることが精度のカギになります。
最終的な基本式は次のとおりです。
相続税評価額 = 正面路線価 × 奥行価格補正率 × 各種補正率(該当分) × 地積(㎡)
この式を、実務の順番に沿って分解していきます。
計算の全体像(路線価 × 補正率 × 地積)
路線価方式のポイントは、「路線価は“標準的な宅地の単価”にすぎない」ことです。
標準から外れる部分は、補正率で上げ下げして調整します。
- 路線価(正面路線価)
→ 道路ごとの基準単価(千円/㎡) - 補正率
→ 形状・接道・利用制約などの個別事情の調整 - 地積
→ 評価対象となる面積(㎡)
①正面路線価 → ②奥行補正 → ③その他補正 → ④面積
という順に当てはめると、混乱が起きにくいです。
ステップ1:正面路線価の決め方(ここが一番重要)
まずは「どの道路の路線価を基準にするか」を決めます。土地の評価でいちばん差が出るのがこの工程です。
1)道路が1本だけ接している場合
その道路の路線価が正面路線価です。迷う余地はありません。
2)複数道路に接している場合(角地・二方路線など)
この場合は “正面道路”を先に決める必要があります。
正面道路の考え方はシンプルで、「敷地の利用の中心となる道路(出入り・建物の正面・接道条件の中心)」を正面とします。
※「路線価が高い道路を正面にする」ではありません。正面を決めたあとに、他の道路の影響を 側方路線影響加算/二方路線影響加算 として上乗せします。
3)路線価が付いていない道路に面している場合
市街地でも、細い私道や新設道路には路線価が付いていない場合があります。
このときは、下記のどちらになるか、道路・地域の扱いを整理して決めます。(ここを誤ると評価方式そのものが変わります)
- 近傍の路線価を使う補完ルール
- 倍率方式への切り替え
ステップ2:奥行価格補正率のかけ方(最初に掛ける補正)
正面路線価を決めたら、次に 奥行価格補正率を適用します。これは路線価方式の補正の中でも最優先の位置づけで、ほぼ必須で入る補正です。
▼奥行の測り方(重要)
奥行距離は一般に、
前面道路の境界線から敷地の最深部までの水平距離
で測ります。
「道路に沿った長さ」や「建物の奥の長さ」ではない点に注意です。
▼適用の流れ
- 路線価図で地区区分を確認
- 地区区分に対応する奥行価格補正率表を開く
- 奥行距離に該当する補正率を拾う
- 正面路線価 × 奥行価格補正率 を計算
奥行補正を忘れると、整形地でも評価ミスになります。
ステップ3:その他の補正率を適用する(形状・接道・利用制約)
奥行補正の後に、土地の個別事情に応じた補正を “該当するもの全部” 適用します。ここでのコツは、補正を 性質ごとに整理して漏れと重複を防ぐことです。
▼補正の分類(実務で漏れをなくすための整理)
- 形状系
間口狭小補正/奥行長大補正/不整形地補正/敷地延長補正 など - 接道・利便性系(加算/減算)
側方路線影響加算/二方路線影響加算/三方路線加算 など - 利用制約系
がけ地補正/私道補正/セットバック補正/土地区画整理地の調整 など
この順に“該当チェック”をすると、抜けにくくなります。
▼実務の注意点
- 同じ趣旨の補正は重複しないケースがある
例:形状の評価減が別補正に内包される場合など - 加算と減算が同時に起こり得る
例:角地(加算)+不整形(減算)
結論としては「該当する補正を全部列挙 → ルール上重複可否を確認 → まとめて掛ける」という流れが最も安全です。
ステップ4:評価単位の整理(ここを誤ると全部ずれる)
補正を掛ける前に、そもそも 土地をいくつの単位で評価するか を決めます。
原則は下記の通りです。
- 利用が同じ土地はまとめて1単位
- 利用が異なる土地は分けて評価
▼よくある分割例
- 同じ地番内でも一部が賃貸駐車場/一部が自宅敷地
→ 利用区分が違うので分ける - 複数筆でも一体で利用されている宅地
→ まとめて評価することがある
評価単位が違うと、補正の当て方・面積の掛け方が変わるため、計算前に必ず確定させます。
ステップ5:地積(㎡)を掛けて評価額を出す
最後に地積を掛けます。
評価額 =(補正後の1㎡単価)× 地積(㎡)
▼採用する地積
原則として 登記簿の地積が基準です。
ただし、現況と登記が大きく違う場合や、セットバック等で実質利用面積が変わる場合は、評価ルールに従って調整します。
かんたん土地評価・路線価計算ツール
路線価ベース相続税評価額 計算ツール
路線価 × 地積 + 補正率・面積区分をワンビューで試算できます。
ブラウザだけで完結する簡易シミュレーター
基準評価額(概算)
- 万円
正面路線価(万円/㎡)と地積(㎡)から基準評価額を算出し、代表的な補正率や私道・セットバック等の面積区分を加味した評価額をその場で確認できます。
① 基準評価額の算出 ベース評価
路線価 × 地積 で基準額を算出します。
正面路線価
地積
基準評価額
- 万円
計算式:正面路線価(万円/㎡) × 地積(㎡)
② 単純補正率の適用 倍率タイプ
間口狭小・奥行長大・不整形地・角地加算・がけ地補正などを想定。
基準評価額に対して乗じるタイプの補正率を入力すると、補正後評価額・差額・増減率を自動表示します。
補正率
補正後評価額
- 万円
差額:- 万円 / 増減率:-
例:基準ケース(路線価 50万円/㎡・地積 100㎡ → 5,000万円)に補正率 0.90 を掛けると、 5,000万円 × 0.90 = 4,500万円(▲500万円・10%減)となります。
③ 面積区分毎の評価(私道/セットバック等) 区分合計型
同一の路線価を前提に、面積ごとに評価割合が異なる場合(私道補正・セットバック部分など)を区分して集計します。
路線価(共通)
区分名
面積(㎡)
評価割合(0〜1)
合計評価額
- 万円
内訳:-
例(私道補正):総地積120㎡のうち、宅地100㎡(評価割合1.0)・私道20㎡(評価割合0.30)、路線価50万円/㎡の場合、 50×100×1.0 + 50×20×0.30 = 5,000 + 300 = 5,300万円。
例(セットバック):総地積100㎡のうち、利用可能部分90㎡(評価割合1.0)・後退部分10㎡(評価割合0.30)、路線価50万円/㎡の場合、 50×90×1.0 + 50×10×0.30 = 4,500 + 150 = 4,650万円。
補正率の種類と使い方
路線価は「標準的な宅地」を前提に付けられた1㎡単価です。
しかし現実の土地は、間口や奥行が極端だったり、形がいびつだったり、道路付けが複雑だったりします。こうした“標準からのズレ”を調整するために用いるのが補正率です。
補正率の理解で大切なのは、「なぜ補正が入るのか(市場性の上下)」「どの指標で補正対象になるのか(測り方)」「どの表を参照するのか(入口)」をセットで押さえることです。
補正は大きく下記に分けて考えると漏れにくくなります。
- 形状・寸法系(使いづらさを反映する減額補正)
- 接道・利便性系(複数道路などの加算)
- 利用制約系(安全性・公共性などの減額)
以下、相続で頻出する補正をケース別に整理します。
間口が狭い土地(間口狭小補正)
▼補正の理由
間口が狭い土地は、車の出入りや建物配置が制限され、利用効率が落ちやすいため、市場性が低い方向に働きます。
その“使いづらさ”を反映して評価を下げるのが間口狭小補正です。
▼対象になる土地
- 間口が標準より明らかに狭い整形地
- 接道はしているが、出入りがしにくい幅の土地
▼測り方のポイント
- 間口距離=前面道路に接する敷地の幅
- 角地の場合でも、まず正面道路側の間口で測ります
- くびれがある場合は、評価単位や想定整形地の取り方とセットで判断
▼参照する表
▼よくあるミス
- 角地で側方道路側の間口を使ってしまう
- 間口の一部がセットバック対象なのに全幅で測る
奥行が長すぎる土地(奥行長大補正)
▼補正の理由
奥行が極端に長い土地は、道路から遠い部分の利用価値が相対的に下がり、整形地より使いにくいことがあります。
そのため、標準より長大な奥行に対して評価減の補正が入ります。
▼対象になりやすい土地
- 間口に比べ奥行が非常に長い“細長い土地”
- 奥の部分が死に地になりやすい形状
▼測り方のポイント
- 奥行距離=道路境界から敷地最深部までの水平距離
- 道路に沿った距離や建物の深さではない点に注意
- 不整形を伴う場合は、想定整形地を決めたうえで奥行を測る
▼参照表
▼よくあるミス
- すでに奥行価格補正率を掛けたのに、同趣旨の補正を二重適用する
(奥行補正と奥行長大補正の関係は状況次第で整理が必要)
いびつな形の土地(不整形地補正)
▼補正の理由
不整形地は、建築計画や区画利用が難しく、市場性が落ちる傾向があります。
整形地との差を評価減で調整するのが不整形地補正です。
▼対象になりやすい土地
- 三角形・台形・くびれ・曲線的な境界を持つ土地
- 高低差や道路形状の影響で整形に使えない部分がある土地
▼実務のポイント(ここが一番差が出る)
不整形地補正は「想定整形地(この土地を“整形だったら”どう取れるか)」をどこにどう置くかで補正率が変わります。
▼測り方のポイント
- 想定整形地(四角形ベース)を設定
- 想定整形地の面積と実地面積の差や形状差を判定
- 不整形の程度に応じた補正率を適用
▼参照表
- 国税庁「奥行価格補正率表内の不整形地補正率表」
- 形状判定のステップ図(税務上の定型)
▼よくあるミス
- 想定整形地の置き方が恣意的になりすぎる
- 敷地延長補正や間口補正と重複し得る領域を整理せずに全部掛ける
角地・準角地(側方路線影響加算/二方路線影響加算)
▼補正の理由
複数道路に面する土地は、出入りの自由度や用途の幅が増え、市場性が高い方向に働きます。
その利便性を反映して評価を上げるのが、側方路線影響加算/二方路線影響加算です。
▼対象になりやすい土地
- 角地(2道路が交わる地点に位置)
- 二方路線地(2つの道路に面する)
- 三方・四方路線地(3つ以上に面する)
▼適用の流れ(鉄則)
- 正面道路を決める
- 正面路線価で基礎単価を作る
- 側方・背面道路の影響を加算率で上乗せ
▼参照表
▼よくあるミス
- 高い道路を正面にしてしまい、加算の前提が崩れる
- 加算対象の道路と、単なる隣接道路を混同する
高低差・がけ地がある土地(がけ地補正)
▼補正の理由
がけ地や急斜面は、崩落リスクや利用制限が生じやすく、土地の市場性が下がる方向に働きます。
その安全性・利用面の制約を評価減として反映するのががけ地補正です。
▼対象
- 敷地内に一定割合以上のがけ・急傾斜がある土地
- 擁壁や法面が必要となるような地形
▼測り方のポイント
- がけ地の敷地面積に占める割合を確認
- 高低差の程度や利用可能部分の範囲を図面で整理
▼参照表
▼よくあるミス
- 高低差があるだけで自動的にがけ地補正と決めつける
- がけの範囲・割合の整理が曖昧
私道を含む土地(評価しない/一部評価など)
▼補正の理由
私道は公益性や利用制限が強く、所有者が自由に活用できないため、評価を下げる(または評価しない)扱いになります。
▼対象
- 公衆用道路として使われている私道
- 通行供用されている持分道路 等
▼実務の分岐ポイント
私道の評価は、下記で扱いが変わります。
- 道路の性格(通行供用の有無)
- 持分の形態(単独所有/共有)
- 利用の実態(専用か公衆か)
▼参照資料
- 登記簿・公図・現況写真
- 国税庁「私道の評価」ルールの定型
▼よくあるミス
- 私道部分まで全部宅地として面積を掛けてしまう
- 共有私道の持分整理が不十分
セットバック(道路後退)部分の評価
▼補正の理由
道路幅が不足する場合、将来の道路拡幅のため敷地の一部を後退させる必要があります。
セットバック部分は自由利用ができないため、評価減(実質評価しないに近い扱い)となります。
▼対象
- 建築基準法上の2項道路に接する土地
▼測り方のポイント
- 後退が必要な幅・面積を確定し
「利用可能部分」と「後退部分」を区分して評価します。
▼参照資料
- 道路種別の確認
- 役所の道路台帳/現況図
▼よくあるミス
- セットバック対象部分を控除せず、全地積に路線価を掛けてしまう
土地区画整理地・造成中の宅地の注意点
▼補正の理由/扱いの難しさ
区画整理地や造成中の土地は、
「どの段階の権利・利用状態を評価するか」
で価額が変わることがあります。
▼対象
- 仮換地指定がある土地
- 清算金が発生する土地
- 造成・開発中で現況が変動中の土地
▼実務で見る資料
- 仮換地指定通知
- 整理計画
- 清算金の見込み
- 工事進捗資料
▼よくあるミス
- 仮換地を無視して元の区画で評価してしまう
- 清算金の整理を後回しにして評価がズレる
ケース別|補正率を適用した相続税評価額の計算例
ここでは、代表的な補正率が相続税評価額にどのように反映されるかを、簡単な数値例で確認します。まずは共通の「基準ケース」を置き、そこから各補正が入った場合の増減を見ていきます。
基準ケースの例(補正なしの標準的な宅地)
- 正面路線価:500千円/㎡(=50万円/㎡)
- 地積:100㎡
- 奥行価格補正率など他の補正はないものとする
▼評価額(補正なし)
50万円/㎡ × 100㎡ = 5,000万円
以降の例では、この5,000万円を土台に、該当補正のみを適用した場合の影響を示します。
間口が狭い土地(間口狭小補正)の例
▼前提(仮)
- 間口が標準より狭い
- 間口狭小補正率:0.90
▼計算
5,000万円 × 0.90 = 4,500万円
▼補正の効果
標準ケースから ▲500万円(10%減)
※間口距離(前面道路に接する幅)で率が決まります。
奥行が長すぎる土地(奥行長大補正)の例
▼前提(仮)
- 奥行が極端に長い
- 奥行長大補正率:0.92
(奥行価格補正率はすでに適用済みとする)
▼計算
5,000万円 × 0.92 = 4,600万円
▼補正の効果
標準ケースから ▲400万円(8%減)
※奥行距離の測り方を誤ると率が変わります。
いびつな形の土地(不整形地補正)の例
▼前提(仮)
- 三角形やくびれ等で整形地より使いづらい
- 不整形地補正率:0.85
▼計算
5,000万円 × 0.85 = 4,250万円
▼補正の効果
標準ケースから ▲750万円(15%減)
※想定整形地の取り方で補正率が変わる点が実務の要所です。
角地・二方路線(側方/二方路線影響加算)の例
▼前提(仮)
- 2つの道路に面する角地
- 正面路線価は500千円/㎡を採用済み
- 二方路線影響加算率:+5%(=1.05)
▼計算
5,000万円 × 1.05 = 5,250万円
▼補正の効果
標準ケースから +250万円(5%増)
※必ず「正面道路を決めたあと」に加算します。
高低差・がけ地がある土地(がけ地補正)の例
▼前提(仮)
- 敷地の一部ががけ地で利用制約が大きい
- がけ地補正率:0.80
▼計算
5,000万円 × 0.80 = 4,000万円
▼補正の効果
標準ケースから ▲1,000万円(20%減)
※がけ地の「面積割合」により率が変わります。
私道を含む土地(私道補正)の例
▼前提(仮)
- 総地積:120㎡
- うち私道部分:20㎡
- 私道部分は30%評価(0.30)
- 路線価:50万円/㎡
▼計算
- 宅地部分: (120−20)=100㎡
50万円×100㎡=5,000万円 - 私道部分:20㎡
50万円×20㎡×0.30=300万円
合計評価額
5,000万円+300万円= 5,300万円
▼補正のポイント
私道部分は「宅地と同じ評価をしない」ため、面積を区分して計算します。
セットバック(道路後退)部分の例
▼前提(仮)
- 総地積:100㎡
- セットバック対象:10㎡
- 後退部分は30%評価(0.30)
- 路線価:50万円/㎡
▼計算
- 利用可能部分:90㎡
50万円×90㎡=4,500万円 - 後退部分:10㎡
50万円×10㎡×0.30=150万円
合計評価額
4,500万円+150万円= 4,650万円
▼補正のポイント
セットバック部分の面積を先に確定し、利用可能部分と区分して評価します。
土地区画整理地・造成中の宅地の例
▼前提(仮)
- 仮換地指定や造成途上で市場性がやや低い想定
- 調整率:0.95
▼計算
5,000万円 × 0.95 = 4,750万円
▼補正のポイント
仮換地指定・清算金・工事進捗などの資料に基づき、どの段階の評価を採るかを整理したうえで調整します。
ケース別|2つ以上の道路に面する土地の相続税評価の計算例
複数道路に面する土地や旗竿地などは、正面路線価の決定と影響加算の取り扱いがポイントになります。それぞれのケースに対する具体的な計算例を見ていきましょう。
二方路線に面する土地の例
二方路線(2つの道路に面する土地)は、まず主要道路を正面と定め、その路線価を基準にします。次に、もう一方の道路の影響を「二方路線影響加算」として上乗せします
▼計算ステップ
- 主要道路を正面として定める
- 正面路線の路線価を基準に計算します。
- もう一方の道路の影響加算
- もう一方の道路の路線価に基づいて、加算される金額を求めます。
- 合計評価額を算出
▼計算例
土地の面積は500㎡、接道部分は10mです。
- 正面道路Aの路線価:20,000円
- 影響道路Bの路線価:18,000円
- 二方路線影響加算率:1.2倍(道路B)
まず、正面道路Aに面する部分の評価額を算出します。
- 正面道路A評価額: 10m×20,000円=200,000円10m \times 20,000円 = 200,000円10m×20,000円=200,000円
次に、道路Bの影響加算分を計算します。
- 影響道路B評価額: 10m×18,000円×1.2=216,000円10m \times 18,000円 \times 1.2 = 216,000円10m×18,000円×1.2=216,000円
最終的な評価額は、正面道路Aと影響道路Bを合計します。
- 合計評価額: 200,000円+216,000円=416,000円200,000円 + 216,000円 = 416,000円200,000円+216,000円=416,000円
このように、二方路線に面する土地の評価額は、主要道路の路線価に影響道路の加算を加える形で計算されます。
三方・四方路線に面する土地の例
三方・四方の道路に面する土地は、利便性がさらに高いため、複数の加算率を適用します。正面、側方、背面道路を整理し、それぞれの加算率を順に適用します。
▼計算ステップ
- 正面、側面、背面道路を定める
- 各道路に面する部分を区別し、それぞれの評価を行います。
- 定められた加算率を適用
- 正面、側面、背面のそれぞれに適切な加算率を適用します。
▼計算例
土地の面積は800㎡、接道部分は正面20m、側面10m、背面5mです。
- 正面道路Aの路線価:22,000円
- 側面道路Bの路線価:20,000円
- 背面道路Cの路線価:18,000円
- 正面加算率:1.2倍
- 側面加算率:1.1倍
- 背面加算率:1.05倍
まず、各接道部分の評価額を算出します。
- 正面道路A評価額: 20m×22,000円=440,000円20m \times 22,000円 = 440,000円20m×22,000円=440,000円
- 側面道路B評価額: 10m×20,000円×1.1=220,000円10m \times 20,000円 \times 1.1 = 220,000円10m×20,000円×1.1=220,000円
- 背面道路C評価額: 5m×18,000円×1.05=94,500円5m \times 18,000円 \times 1.05 = 94,500円5m×18,000円×1.05=94,500円
最終的な評価額は、これらを合計します。
- 合計評価額: 440,000円+220,000円+94,500円=754,500円440,000円 + 220,000円 + 94,500円 = 754,500円440,000円+220,000円+94,500円=754,500円
このように、三方・四方路線に面する土地は、それぞれの接道に対して適切な加算率を適用し、評価額を算出します。
旗竿地(敷地延長)の例
敷地延長(旗竿地)は、道路に接する細い通路部分の影響で土地利用が制限されやすく、補正による減額が入ります。通路幅・延長長さなどを確認し、該当する補正率を適用します
▼計算ステップ
- 通路部分の幅と延長長さを確認
- 通路部分の幅や延長部分の長さが評価に影響します。
- 補正率を適用
- 通路部分に対する補正率を適用します。
▼計算例
土地の面積は600㎡、通路部分は幅3m、奥行き20mです。
- 接道部分(通路部分)の路線価:16,000円
- 補正率:0.8倍(旗竿地)
まず、通路部分の評価額を算出します。
- 通路部分評価額: 3m×20m×16,000円=960,000円3m \times 20m \times 16,000円 = 960,000円3m×20m×16,000円=960,000円
次に、旗竿地補正を適用します。
- 補正後の評価額: 960,000円×0.8=768,000円960,000円 \times 0.8 = 768,000円960,000円×0.8=768,000円
このように、旗竿地の場合は、通路部分の評価額に補正率を適用して最終的な評価額を算出します。
マンション隣接・変形地の例
細長い土地やくびれのある土地などは、不整形地補正や奥行補正の対象になります。評価例を通じて、補正率の組み合わせ方を確認していくと理解が深まります。
▼計算ステップ
- 土地の形状を確認
- 変形地の不整形部分や奥行きが評価に影響します。
- 補正率を適用
- 不整形地補正や奥行補正を適用します。
▼計算例
土地の面積は500㎡、幅が20m、奥行きが50mです。この土地は、隣接するマンションによって影響を受けているとします。
- 路線価:18,000円
- 不整形地補正率:0.9倍(形状不規則なため)
- 奥行補正率:0.95倍(奥行が長いため)
まず、通常の評価額を算出します。
- 通常の評価額: 20m×50m×18,000円=18,000,000円20m \times 50m \times 18,000円 = 18,000,000円20m×50m×18,000円=18,000,000円
次に、不整形地補正と奥行補正を適用します。
- 最終評価額: 18,000,000円×0.9×0.95=15,420,000円18,000,000円 \times 0.9 \times 0.95 = 15,420,000円18,000,000円×0.9×0.95=15,420,000円
このように、変形地の場合は形状や奥行に対する補正が適用され、評価額が減額されます。
相続税の路線価評価でつまずきやすいポイント
相続税の土地評価において、路線価を使用する方法は広く採用されていますが、実際に評価作業を進める中でいくつかの難しいポイントが存在します。
これらのポイントを理解し、適切に対処することで、より正確な評価が可能になります。ここでは、特に注意すべきつまずきやすいポイントを解説します。
路線価の適用範囲を間違える
▼つまずきポイント
路線価はすべての土地に適用されるわけではなく、主に都市部や商業地、住宅地に設定されています。
地方の農地や山林などには路線価が設定されていません。このため、どの土地に路線価が適用されるのかを間違えると評価額に誤りが生じます。
▼解説
路線価が設定されている土地でも、その土地全体に路線価が適用されるわけではありません。例えば、土地が複数の道路に面している場合、どの道路の路線価を適用すべきかの判断を誤ると、評価額が大きく変わることがあります。
また、都市部と郊外では路線価が異なるため、適切な地域の路線価を選ぶことが重要です。
▼対処法
- 路線価が適用される地域かどうかを確認する。
- 路線価がない地域であれば、「倍率方式」に切り替えて評価を行う。
複数の道路に面する土地の評価
▼つまずきポイント
2つ以上の道路に面する土地の場合、どの道路の路線価を使用するか、また二方路線の影響加算を適切に行わないと、評価額が誤ってしまうことがあります。
▼解説
複数の道路に面している土地の場合、どの道路が「正面道路」であるかをまず定め、その道路の路線価を基準に評価します。
その後、もう一方の道路の影響を加算する必要がありますが、この加算を誤ると評価額が不正確になります。
▼対処法
- まず、正面道路を決定し、その路線価を基準にする。
- 影響を与える道路の路線価を基に加算率を設定し、評価額を調整する。
旗竿地(敷地延長)の評価
▼つまずきポイント
旗竿地の場合、接道部分が狭く奥行きが長いため、その評価を誤ってしまうことがあります。接道部分の路線価をどのように適用するかが難しいポイントです。
▼解説
旗竿地は道路に接する部分が狭く、その形状が不規則なため、評価額が下がる傾向があります。特に、接道部分の評価額に補正率を適用する際、その適用方法を間違えると評価が不正確になります。
旗竿地の場合、補正率を0.8倍などで減額するケースが多いため、この補正率を正確に適用することが重要です。
▼対処法
- 旗竿地の接道部分を正確に計測し、補正率を適用する。
- 旗竿地に関する評価ガイドラインを確認し、正しい補正率を使用する。
不整形地・変形地の評価
▼つまずきポイント
不整形地や変形地(細長い土地、くびれた土地など)の評価は、通常の四角形や長方形の土地と異なるため、補正を加える際に誤った補正率を適用することがあります。
▼解説
不整形地や変形地は、評価額を算出する際に奥行き補正や不整形地補正が必要となります。
これらの土地は、市場での取引価格が通常の土地よりも低くなる傾向があるため、補正が必要ですが、補正率をどのように適用するかは非常に慎重に行う必要があります。
▼対処法
- 土地の形状に合わせた補正率を適用する。
- 不整形地や変形地に関する評価ガイドラインをしっかりと理解する。
路線価図の読み方
▼つまずきポイント
路線価図を読み違えると、正確な路線価を選べず、誤った評価をする可能性があります。特に、道路が複数交差している場合や、異なる区域が隣接している場合、どのエリアの路線価を適用すべきかがわかりにくいことがあります。
▼解説
路線価図には、複数の道路が交差していたり、エリアごとに異なる路線価が設定されている場合があります。
そのため、どのエリアの路線価を使用するか、またどの道路を「正面道路」として評価するかの判断を間違えると、大きな誤差が生じます。
▼対処法
- 路線価図をよく確認し、土地がどのエリアに該当するのかを明確にする。
- 複数の道路に面する場合、正面道路をしっかりと決定し、その後の評価を行う。
路線価の変更に注意
▼つまずきポイント
路線価は毎年見直されるため、年ごとの変動に注意しないと、古い情報を基に評価を行ってしまう可能性があります。
▼解説
路線価は毎年調整されるため、前年の路線価をそのまま使用してしまうと、評価額が実際の市場価格とかけ離れることがあります。
特に土地の取引相場や周辺の開発状況が変わった場合、路線価の変更が影響することがあります。
▼対処法
- 毎年、最新の路線価を確認して評価を行う。
- 最新の路線価を確認するために、国税庁のウェブサイトや最新の路線価図を使用する。
土地の形状や利用目的に対する配慮不足
▼つまずきポイント
土地の形状や利用目的に応じた評価調整を行わないと、実際の市場価値と乖離した評価額になってしまうことがあります。
▼解説
土地の形状や用途によって、評価方法が変わることがあります。例えば、商業地と住宅地では路線価が異なるだけでなく、同じ形状の土地でも、隣接する建物や周辺環境が評価に影響を与えることがあります。
▼対処法
- 土地の用途や形状に合わせた評価方法を選ぶ。
- 土地の周辺環境や利用状況を考慮して、評価を行う。
路線価がない地域は「倍率方式」で評価する
相続税の土地評価において、路線価が適用される地域と、路線価が存在しない地域があります。路線価がない地域では、土地評価のために「倍率方式」を使用します。
倍率方式は、土地が位置する地域に対して、定められた「倍率」を使って評価額を算出する方法です。ここでは、この倍率方式について、基本的な考え方から計算方法まで詳しく解説します。
路線価がない地域
路線価は、主に都市部や商業地、住宅地などで採用されるため、地方や郊外の農地などの評価には適用されません。
このような地域では、路線価を直接参照することができないため、代わりに「倍率方式」を用いて土地評価を行います。
▼路線価がない地域に該当する土地
- 農地や山林など、都市部や商業地以外の土地
- 郊外や地方の住宅地など、発展途上の地域
- 一部の特殊用途の土地(例えば工業地や公園など)
これらの土地は、路線価が設定されていないため、評価額を算出するためには、倍率方式を適用することになります。
倍率方式の基本的な考え方
倍率方式は、土地の評価額をその土地が位置する地域の「固定資産税評価額」に、所定の「倍率」を掛け算することで評価額を算出する方法です。この倍率は、国税庁が定めたものを使用します。
▼固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額は、各土地の所在地の地方自治体が決定する土地の評価額で、通常、土地の市町村の役所で確認できます。固定資産税評価額は、一般的に実勢価格の70%程度に設定されています。
▼倍率とは?
倍率は、地域ごとに異なり、その地域の地価や相場状況に基づいて定められます。倍率は国税庁のウェブサイトで公表されており、地域ごとの倍率を適用することで、土地の評価額を算出できます。
倍率方式の計算方法・例
倍率方式で評価を行う際には、以下の3つのステップで計算を行います。
▼計算ステップ
- 土地の固定資産税評価額を確認する
- まず、土地の所在する自治体から、その土地の固定資産税評価額を確認します。これにより、土地の基本評価額を把握します。
- 適用倍率を確認する
- 次に、土地が位置する地域の倍率を調べます。倍率は、国税庁の公示などを参照することができます。
- 評価額を算出する
- 固定資産税評価額に倍率を掛け算して、土地の相続税評価額を算出します。
▼計算例
例えば、地方の住宅地で、次のような条件を仮定します。
- 固定資産税評価額:1,000,000円(土地)
- 倍率:1.5倍(地域による)
評価額の計算は以下の通りです。
- 相続税評価額: 1,000,000円×1.5=1,500,000円1,000,000円 \times 1.5 = 1,500,000円1,000,000円×1.5=1,500,000円
このように、倍率方式では、固定資産税評価額に適用倍率を掛けることで、土地の相続税評価額を求めることができます。
倍率方式の特徴と注意点
倍率方式は、路線価が設定されていない地域の土地評価を行うための重要な手段です。しかし、いくつかの注意点もあります。
注意点 1: 地域ごとの倍率が異なる
倍率は、地域ごとに異なります。そのため、同じような土地でも、位置する地域によって評価額が大きく変わることがあります。
また、倍率は毎年見直されることがあり、変動することもあるため、最新の倍率を確認することが重要です。
注意点 2: 固定資産税評価額の精度
固定資産税評価額は、土地の実際の売買価格とは異なり、一般的にはその70%程度に設定されています。
そのため、倍率方式で算出された評価額は、実際の市場価格と大きく異なる場合があることに注意が必要です。
注意点 3: 他の評価方法との比較
倍率方式は、路線価が存在しない地域に対して使用されますが、場合によっては、他の評価方法(例えば、地価調査結果や類似の土地価格を元にした価格評価)を併用することもあります。
これにより、相続税評価額の精度を高めることができます。
相続税評価額を抑えるポイント
相続税を計算する際、土地や財産の評価額が大きなポイントとなります。
そのため、相続税評価額を抑えるためには、どのように土地や財産を評価するか、どの方法を採るかを正しく理解することが非常に重要です。
ここでは、相続税評価額を抑えるために役立つ考え方や戦略を紹介します。
不動産の評価方法を理解し、適切に選択する
相続税の評価額を抑えるための第一歩は、不動産の評価方法を理解し、最適な方法を選択することです。
相続税評価額を決める際、主に「路線価方式」と「倍率方式」が使われますが、それぞれに特性があり、選び方次第で評価額が変動します。
▼路線価方式
路線価方式は、都市部や商業地、住宅地に適用されます。土地の評価額は、土地が接する道路の路線価に基づいて決まります。路線価が設定されている地域では、正面道路に面している土地の評価が主に行われます。
▼倍率方式
路線価が設定されていない地域では、倍率方式が用いられます。倍率方式では、土地の固定資産税評価額に所定の倍率を掛けることで評価額を算出します。
倍率方式が適用される土地は、農地や山林などの地方の土地です。倍率を上手に活用することで、相続税評価額を抑えることが可能です。
▼対策方法
- 事前に土地が路線価の対象か倍率方式の対象かを確認する
- 倍率方式を利用できる場合、倍率を利用して評価額を抑える
土地の形状や利用目的に合わせて適切な評価調整を行う
土地の評価額を抑えるためには、土地の形状や利用目的に応じて評価調整を行うことが重要です。
例えば、不整形地や旗竿地、変形地などは、通常の土地に比べて取引価格が低くなることが多いため、評価額を減額するための補正が適用されます。
▼旗竿地(敷地延長地)の評価
旗竿地の場合、道路に接する部分が狭く、奥行きが長いため、土地利用に制約が多くなります。
そのため、評価額を下げるためには、接道部分に補正を加えることができます。旗竿地の補正率は一般的に0.8倍などであり、この補正を適用することで、相続税評価額を抑えることが可能です。
▼不整形地や変形地の評価
不整形地や変形地(細長い土地やくびれた土地)は、一般的な正方形や長方形の土地と比較して取引価値が低くなるため、不整形地補正や奥行補正が適用されます。
これらの補正を活用することで、相続税評価額を抑えることができます。
▼対策方法
- 土地が旗竿地や不整形地、変形地である場合、補正率を適切に適用する
- 土地の形状に基づいて評価調整を行い、相続税評価額を減額する
相続税の評価減額を利用した節税対策
相続税には、一定の条件を満たすと評価額が減額される制度があります。これらの減額措置を上手に利用することで、相続税評価額を抑えることができます。
以下の減額措置を活用しましょう。
▼小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続税評価額を最大80%減額できる特例です。この特例は、相続する土地が「住宅用地」や「事業用地」であり、相続する人がその土地を引き続き使用する場合に適用されます。
- 住宅用地の場合:最大80%の評価減が適用される
- 事業用地の場合:最大80%の評価減が適用される
▼対策方法
- 住宅用地や事業用地に該当する土地があれば、小規模宅地等の特例を申請する
- 特例が適用される要件を満たすように土地の利用状況を確認し、計画的に相続を進める
参照:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
評価額を抑えるための贈与戦略
相続税評価額を抑えるためには、生前贈与を活用することも有効です。
特に、一定の基礎控除額を利用した贈与や、贈与税がかからない範囲内での贈与を積極的に行うことで、相続税評価額を低くすることができます。
▼贈与税の非課税枠を活用する
贈与税には、年間110万円まで非課税で贈与できる基礎控除額があります。この枠を上手に使うことで、生前に少しずつ土地や財産を移転し、相続時に課税される財産額を減らすことができます。
▼対策方法
- 年間110万円以内の贈与を計画的に行い、相続財産を減らす
- 住宅取得等資金の贈与税非課税制度を利用して、贈与を行う
土地の評価額を抑えるためのタイミング
相続税評価額は、相続開始時の評価額が基準となりますが、タイミングによって評価額が大きく変わることがあります。
特に土地の評価額は市場の動向や周辺の開発状況によって影響を受けるため、相続前に土地の売却や譲渡を検討することで、相続税評価額を抑えることができる場合があります。
▼市場の変動を考慮したタイミング
土地が値上がりしている場合や、周辺の開発が進んでいる場合は、相続時の評価額が高くなる可能性があります。
逆に、値下がりしている場合や、開発が進んでいない場合は、相続時の評価額が低くなることがあります。相続税評価額を抑えるためには、タイミングを見計らって土地の譲渡を検討することも一つの方法です。
▼対策方法
- 相続開始前に土地の売却や譲渡を検討し、相続時の評価額を調整する
- 市場動向をよく観察し、適切なタイミングで評価額を抑える戦略を立てる
相続税評価額の計算で税理士に相談すべきケース
相続税の評価方法として、路線価方式と倍率方式がありますが、これらの計算には複雑な要素が絡んでくることが多いため、税理士に相談することが有益な場合があります。
特に、土地の評価額が大きく影響を及ぼす相続税では、評価の基準を誤ると、納める税額に大きな差が生じることがあります。
ここでは、路線価方式や倍率方式で相続税評価額を計算する際に税理士に相談すべき具体的なケースを解説します。
複数の土地を相続する場合
相続財産に複数の土地が含まれている場合、それぞれの土地について異なる評価方法を適用する必要があります。
特に、路線価が設定されている土地と倍率方式が適用される土地が混在する場合、評価方法を誤ると相続税額に大きな差が生じる可能性があります。
複数の土地がある場合、各土地に適用される評価方法を正確に把握し、適切に計算する必要があります。路線価方式が適用される土地と倍率方式が適用される土地を区別し、それぞれの評価方法に従って計算することが求められます。税理士は、土地ごとの評価額を正確に算出し、最適な相続税額を導き出してくれます。
対策方法
- 複数の土地に関して、評価方法を適切に選定するため、税理士に相談し、間違いなく計算を進める。
2. 路線価の解釈が難しい場合
路線価が設定されている地域でも、土地の形状や道路の向きによって評価が変動することがあります。
特に、複数の道路に面している場合や、交差点近くの土地では、どの道路の路線価を適用すべきかや、影響加算をどう行うべきかが判断しづらいことがあります。
路線価は通常、道路ごとに設定されていますが、接道する道路が複数ある場合、どの道路を「正面道路」として評価するかが重要です。また、道路の向きや通行量、交通量によって影響加算が必要となることもあります。これを適切に判断するためには、税理士の専門的な知識が必要です。
複数の道路に面している場合や、特殊な形状の土地がある場合には、路線価の適用方法や影響加算について税理士に相談し、適切な評価方法を確定する。
倍率方式の適用が難しい場合
倍率方式が適用される地域では、土地の固定資産税評価額に倍率を掛けて相続税評価額を計算しますが、倍率が変動する可能性や、特殊な土地評価の際に、倍率の適用方法に迷うことがあります。
倍率方式では、土地の評価額が固定資産税評価額をもとに決まりますが、倍率が適用される地域や土地によって異なる倍率を適用することがあります。
また、固定資産税評価額が正確かどうかを確認する必要もあります。評価方法や倍率の適用に誤りがあれば、相続税額が大きく異なるため、税理士に相談して適切な倍率を確認することが重要です。
土地の固定資産税評価額や適用倍率について不安がある場合、税理士に相談し、正確な評価額を算出するためのサポートを受ける。
高額な不動産を相続する場合
高額な不動産を相続する場合、評価額が非常に高くなるため、税理士に相談して最適な評価方法を選定することが重要です。
特に、商業地や高級住宅地の不動産など、土地の評価額が大きい場合、路線価や倍率方式だけでは評価が不十分なことがあります。高額な不動産の場合、相続税評価額を抑えるためには、より細かい評価基準を適用する必要があります。
例えば、特定の方法で土地の評価を減額することができる場合や、特別な評価方法を適用することで税負担を軽減することが可能です。
税理士は、このような場合に、土地評価における専門的なアドバイスを提供します。高額な不動産が含まれる場合、その土地の評価額を抑えるための減額措置や特例を活用できるか、税理士に相談して最適な評価方法を選ぶと良いでしょう。
複雑な土地の評価が必要な場合(特殊な土地)
土地の形状や利用状況が特殊な場合、例えば、旗竿地、不整形地、または商業用地など、標準的な評価方法を適用するだけでは適切な評価ができない場合があります。
このような土地の評価については、税理士に相談することが重要です。特殊な形状を持つ土地の場合、標準的な路線価や倍率方式では評価額を適切に算出できないことがあります。例えば、不整形地や旗竿地は、通常の長方形の土地よりも評価額が低くなるため、特別な補正が必要となります。
また、商業用地や事業用地の場合、税理士はその用途に応じた評価方法を提案し、適切に評価を行います。
相続税申告期限に間に合わない恐れがある場合
相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内に行わなければなりません。特に、土地の評価が難しい場合や、不動産の評価額が高い場合には、計算や書類作成に時間がかかるため、税理士に相談して申告期限に間に合うように進めることが必要です。
相続税申告の期限内に申告を終わらせるためには、早急に税理士に相談し、計算や必要書類の準備を進めることが重要です。税理士は、相続税申告を期限内にスムーズに進めるためのサポートを提供し、遅れが生じないように調整を行います。
よくある質問(FAQ)
路線価は毎年どれくらい変わる?
路線価の変動幅は地域や年度によって異なります。都市部では上昇傾向、人口減少地域では横ばい〜下落傾向となることもあります。
同じ道路でも場所で路線価が違うのはなぜ?
路線価は道路の区間ごとに標準的な宅地の価格を設定するため、同じ道路でも区間により差が出ます。
土地が広すぎる/狭すぎると評価はどうなる?
奥行や間口の補正などにより、標準的な土地と比べて評価額が調整される場合があります。形状や条件次第で適用補正が異なります。
自分で計算しても申告できる?
可能です。ただし補正率の選択や評価単位の判断は難しい場合があるため、資料を整理したうえで確認しながら進めることが大切です。
評価に不安があるときの相談先は?
税務署の相談窓口や、相続税申告の経験がある税理士、不動産鑑定士などへ相談する方法があります。「どの資料をどう見ればよいか」「補正や特例の判断が妥当か」といった点を中心に確認するとよいでしょう。
まとめ
路線価は、相続税における土地評価の基準となる重要な指標です。
路線価図の数字や記号は慣れないと難しそうに見えますが、下記の流れを押さえれば、評価額の全体像は整理できます。
- 相続開始年の路線価を確認
- 正面路線価を決める
- 奥行・間口・形状などの補正率を適用
- 利用状況(借地・賃貸など)を反映
- 必要なら特例で評価減
一方で、補正率の適用漏れや道路の取り違え、評価単位の切り分けミスは起こりやすいポイントです。判断に迷う場合は早めに税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。


