法人税は赤字なら払う必要がありません。法人税は課税所得に税率を掛けて計算するため、課税所得がゼロまたはマイナスであれば法人税額もゼロになります。
ただし、「赤字なら税金が一切かからない」と思うのは危険です。法人住民税の均等割は赤字でも最低年間約7万円が発生し、消費税も免税事業者を除き赤字に関係なく納付義務があります。
さらに、資本金1億円超の法人は外形標準課税(付加価値割・資本割)が赤字でも発生します。
また見落としがちなのが、「会計上の赤字」と「税務上の赤字」は異なるという点です。交際費の損金不算入や減価償却の超過額などにより、会計上は赤字でも税務上は黒字→法人税が発生するケースがあります。
一方、赤字には節税面のメリットもあります。欠損金の繰越控除(最大10年間)で将来の黒字と相殺でき、繰り戻し還付で前期に納付した法人税を取り戻すことも可能です。
本記事では、赤字決算で免除される税金・されない税金を全税目の一覧表で整理し、繰越控除と繰り戻し還付の判定フロー、赤字決算のメリット・デメリット、赤字決算時の仕訳方法まで網羅的に解説します。
この記事の要点
- 法人税は赤字ならゼロだが、法人住民税の均等割(最低年間約7万円)と消費税は赤字でも発生する
- 会計上の赤字でも税務上は黒字になるケースあり(損金不算入項目に注意)。税務上の赤字かどうかが法人税免除の判断基準
- 赤字の欠損金は最大10年間繰越可能。繰り戻し還付で前期の法人税を取り戻すことも可能
法人税は赤字なら払う必要がない|ただし「均等割」と「消費税」は発生する

法人税がゼロになる理由(課税所得×税率=ゼロ)
法人税の計算式は「課税所得×法人税率−税額控除=法人税額」です。赤字決算で課税所得がゼロまたはマイナスであれば、法人税額もゼロになります。
法人税だけでなく、法人税額を基準に計算される地方法人税(法人税額×10.3%)や法人住民税の法人税割もゼロになります。
赤字でも発生する税金がある(均等割・消費税・外形標準課税)
法人税がゼロでも、以下の税金は赤字に関係なく発生します。
- 法人住民税の均等割:資本金と従業員数に応じた定額(最低年間約7万円)。赤字でも毎年必ず発生
- 消費税:消費者から預かった税金であり、法人の損益とは無関係。免税事業者を除き納付義務あり
- 外形標準課税(資本金1億円超の法人):法人事業税の付加価値割・資本割は赤字でも発生
国税庁調査:国内法人の約6割が赤字決算
国税庁の統計によると、2022年度に決算を迎えた国内法人のうち約60%が赤字(欠損法人)でした(参照:国税庁|会社標本調査)。
赤字決算は決して珍しいことではなく、特に設立初年度や事業転換期には赤字になりやすい傾向があります。
【一覧表】赤字決算で免除される税金・されない税金を全税目で整理
全税目の「赤字で免除/免除されない」一覧表
| 税金の種類 | 赤字の場合 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人税 | 免除(ゼロ) | 課税所得がゼロなら法人税もゼロ |
| 地方法人税 | 免除(ゼロ) | 法人税額×10.3%のため、法人税がゼロなら地方法人税もゼロ |
| 法人住民税(法人税割) | 免除(ゼロ) | 法人税額を基準に計算するため、法人税がゼロなら法人税割もゼロ |
| 法人住民税(均等割) | 免除されない | 資本金・従業員数に応じた定額。最低年間約7万円 |
| 法人事業税(所得割) | 免除(ゼロ) | 課税所得がゼロなら所得割もゼロ。※資本金1億円以下の法人 |
| 法人事業税(付加価値割) | 条件付きで発生 | 資本金1億円超の法人のみ。付加価値がプラスなら赤字でも発生 |
| 法人事業税(資本割) | 条件付きで発生 | 資本金1億円超の法人のみ。赤字でも必ず発生 |
| 特別法人事業税 | 免除(ゼロ) | 法人事業税(所得割)を基準に計算するため連動してゼロ |
| 消費税 | 免除されない | 消費者から預かった税金であり損益とは無関係。免税事業者除く |
赤字で免除される税金
法人税・地方法人税・法人住民税の法人税割・法人事業税の所得割・特別法人事業税は、いずれも所得(利益)をベースに計算される税金です。
赤字で課税所得がゼロであれば、これらの税金はすべてゼロになります。
赤字でも免除されない税金
法人住民税の均等割は、所得に関係なく法人の規模(資本金・従業員数)に応じて定額で課されます。「行政サービスの利用に対する会費」のような性質であり、赤字でも毎年必ず納付しなければなりません。
消費税は、商品やサービスの販売時に消費者から預かった税金を国に納付するものであり、法人の損益とは無関係です。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者は納付義務がありません。
条件付きで発生する税金(外形標準課税:資本金1億円超の法人)
資本金1億円超の法人は、法人事業税に外形標準課税が適用されます。外形標準課税には「付加価値割」「資本割」「所得割」の3つがあり、このうち資本割は赤字でも必ず発生します。
付加価値割も、報酬給与額や支払利子などの合計がプラスであれば赤字でも発生します。資本金1億円以下の中小法人は外形標準課税の対象外です。
「会計上の赤字」と「税務上の赤字」は違う|法人税が発生するケースに注意

会計上の利益と税務上の所得が異なる理由(税務調整)
企業会計上の「税引前当期純利益」と、法人税法上の「課税所得」は一致しないことがあります。企業会計では費用として計上できても、法人税法では損金に算入できない項目(損金不算入項目)があるためです。
この差額を調整する手続きが「税務調整」です。
会計上は赤字でも法人税が発生する具体例
以下のケースでは、会計上は赤字(税引前当期純損失)でも、税務調整後の課税所得がプラスとなり、法人税が発生する可能性があります。
- 交際費の損金不算入:中小法人は年800万円超の交際費が損金不算入。会計上は費用でも税務上は所得に加算
- 減価償却の超過額:税法で定められた限度額を超える減価償却費は損金不算入
- 役員給与の損金不算入:定期同額給与の要件を満たさない役員給与は損金不算入
- 寄附金の損金算入限度超過額:限度額を超える寄附金は損金不算入
- 引当金の繰入超過額:税法で認められた限度を超える引当金は損金不算入
【具体例】会計上の税引前当期純損失が▲50万円でも、交際費の損金不算入額が100万円ある場合→税務上の課税所得は▲50万円+100万円=+50万円となり、法人税が発生します。
税務上の赤字を正しく判定するためのチェックポイント
法人税が免除されるかどうかは、会計上の損益ではなく税務上の課税所得で判断されます。
決算書の税引前当期純利益(損失)だけを見て「赤字だから法人税ゼロ」と判断するのは危険です。税務調整後の課税所得がゼロまたはマイナスかどうかを、必ず税理士と一緒に確認してください。
赤字でも払う「均等割」の金額|資本金・従業員数別の一覧表
法人住民税の均等割とは
法人住民税の均等割は、法人が所在する自治体の行政サービスを利用していることに対する「会費」のような性質の税金です。
所得の有無に関係なく、資本金等の額と従業員数に応じて定額で課されます(参照:総務省|法人住民税)。
【一覧表】均等割の金額(資本金×従業員数の区分別)
| 資本金等の額 | 従業員数50人以下 | 従業員数50人超 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 7万円 | 14万円 |
| 1,000万円超〜1億円以下 | 18万円 | 20万円 |
| 1億円超〜10億円以下 | 29万円 | 53万円 |
| 10億円超〜50億円以下 | 95万円 | 229万円 |
| 50億円超 | 121万円 | 300万円 |
※上記は道府県民税均等割+市町村民税均等割の標準税率の合計額。東京23区特例や超過課税により自治体ごとに異なる場合あり。
均等割を減額・免除できるケースはあるか?
原則として均等割の免除はありませんが、休眠届出(事業を休止していることを自治体に届け出る)を行えば、一部の自治体で均等割が免除される場合があります。
ただし、すべての自治体で免除されるわけではなく、自治体ごとに取扱いが異なるため、事前に確認が必要です。
欠損金の繰越控除|赤字を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺

欠損金の繰越控除の仕組み(青色申告が要件)
赤字決算で生じた欠損金(税務上のマイナス)は、翌期以降最大10年間にわたって繰り越し、将来の黒字の所得と相殺できます(参照:国税庁|No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)。
適用要件は青色申告であることです。
中小法人は所得の全額まで控除可能、大法人は50%が上限
中小法人(資本金1億円以下)は、繰越欠損金を当期の所得の全額まで控除できます。大法人(資本金1億円超)は、所得の50%が控除限度額です。
【シミュレーション】赤字500万円→翌年黒字800万円の場合の節税効果
| 項目 | 1年目(赤字) | 2年目(黒字) |
|---|---|---|
| 課税所得 | ▲500万円 | +800万円 |
| 繰越欠損金の控除 | — | ▲500万円 |
| 控除後の課税所得 | 0円 | 300万円 |
| 法人税額(中小法人15%) | 0円 | 45万円 |
| 繰越控除がなかった場合の法人税額 | 0円 | 120万円+46.4万円=166.4万円 |
| 節税効果 | 121.4万円 | |
赤字500万円を翌年に繰り越すことで、2年目の法人税が166.4万円→45万円に減少し、約121万円の節税になります。繰越控除を使わなければこの節税効果は失われるため、赤字の年も必ず確定申告を行うことが重要です。
欠損金の繰り戻し還付|前期の法人税を取り戻す

繰り戻し還付の仕組みと計算式
当期が赤字で前期が黒字だった場合、前期に納付した法人税の一部を取り戻す「欠損金の繰り戻し還付」を利用できます。計算式は以下のとおりです。
還付金額 = 前期の法人税額 ×(当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額)
繰り戻し還付を受けるための要件
- 前期・当期ともに青色申告であること
- 中小法人等(資本金1億円以下等)であること
- 確定申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出すること
【計算例】前期の法人税額100万円・当期の欠損金300万円の場合
前期の所得が500万円、法人税額が100万円で、当期の欠損金が300万円の場合:
還付金額 = 100万円 ×(300万円 ÷ 500万円)= 60万円
前期に納付した法人税100万円のうち、60万円が還付されます。手元資金が厳しい赤字時に現金が戻ってくるため、資金繰りの改善に大きく貢献します。
【判定フロー】繰越控除と繰り戻し還付、どちらを選ぶべきか?

繰越控除が有利なケース
翌期以降に高い利益が見込まれる場合は、繰越控除が有利です。欠損金を翌期以降の高い所得と相殺することで、高い税率が適用される部分の法人税を圧縮できます。
特に、翌期に所得800万円超が見込まれる中小法人は、23.2%の税率部分を圧縮できるため繰越控除の効果が大きくなります。
繰り戻し還付が有利なケース
手元資金をすぐに確保したい場合は、繰り戻し還付が有利です。前期に納付した法人税が現金で還付されるため、赤字で資金繰りが厳しい時期に即座にキャッシュを手にできます。
還付請求後、通常1〜2ヶ月程度で還付金が振り込まれます。
両方を組み合わせることも可能
繰り戻し還付と繰越控除は併用できます。たとえば、当期の欠損金500万円のうち300万円を繰り戻し還付に使い、残り200万円を翌期以降に繰り越すことが可能です。
資金繰りの状況と将来の業績見通しに応じて、最適な配分を税理士と相談してください。
判定フロー:
①手元資金が不足しており、前期に法人税を納付している→繰り戻し還付を優先
②手元資金に余裕があり、翌期以降に高い利益が見込まれる→繰越控除を優先
③両方の条件がある→一部を繰り戻し還付、残りを繰越控除に配分
赤字決算のメリットとデメリット

メリット:法人税ゼロ+繰越控除+繰り戻し還付
赤字決算には以下の税務上のメリットがあります。
- 法人税・地方法人税・法人税割・所得割がゼロ:所得ベースの税金がすべて免除されるため、税負担が大幅に軽減
- 欠損金の繰越控除(最大10年間):赤字を将来の黒字と相殺して節税に活用できる
- 欠損金の繰り戻し還付:前期の法人税を現金で取り戻せる(中小法人等に限る)
デメリット①:銀行融資で不利になるリスク
赤字決算は銀行の融資審査で不利に働く可能性があります。
銀行は決算書の利益をベースに返済能力を判断するため、赤字が続くと「融資を返済できるだけの収益力がない」と評価され、融資を受けにくくなります。
特に2期連続の赤字決算は融資審査で大きなマイナス要因です。
デメリット②:取引先からの信用低下の可能性
決算公告を行っている法人や、取引先から決算書の提出を求められる法人の場合、赤字決算は取引先からの信用低下につながる可能性があります。
特に大口取引先や公共工事の入札では、財務状況が評価基準の一つとなるため注意が必要です。
デメリット③:均等割・消費税は発生し続ける
前述のとおり、法人住民税の均等割(最低年間約7万円)と消費税は赤字でも発生します。赤字で資金繰りが厳しい中でもこれらの税金を納付する必要があるため、キャッシュフロー計画に組み込んでおくことが重要です。
赤字でも確定申告は必ず行うべき理由(繰越控除の適用に必要)
赤字で法人税がゼロでも、確定申告は必ず行ってください。欠損金の繰越控除を適用するためには、赤字の事業年度に青色申告書を提出し、翌期以降も連続して確定申告書を提出し続けることが要件です。
赤字だからと申告を怠ると、繰越控除の権利を失い、将来の節税メリットを逃すことになります。
赤字決算時の仕訳方法

法人税がゼロの場合の仕訳(均等割のみ計上)
赤字決算で法人税がゼロの場合、法人住民税の均等割のみを計上します。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人の場合、均等割は7万円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 70,000 | 未払法人税等 | 70,000 |
繰越欠損金の税効果会計(繰延税金資産の計上)
繰越欠損金について将来の税金軽減効果が見込まれる場合、繰延税金資産を計上します。たとえば欠損金500万円、実効税率30%の場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 1,500,000 | 法人税等調整額 | 1,500,000 |
ただし、繰延税金資産の計上は将来の課税所得が十分に見込まれる場合に限られます。回収可能性の判断は税理士や公認会計士に相談してください。
中小企業会計基準を適用している法人では、税効果会計の適用は任意です。
繰り戻し還付を受けた場合の仕訳
繰り戻し還付の請求を行い、還付金60万円の入金が見込まれる場合の仕訳です。
還付請求時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収還付法人税等 | 600,000 | 法人税、住民税及び事業税 | 600,000 |
還付金入金時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 600,000 | 未収還付法人税等 | 600,000 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人税は赤字なら払わなくてよいですか?
税務上の課税所得がゼロまたはマイナスであれば、法人税は払う必要がありません。
ただし、会計上は赤字でも税務調整(損金不算入等)により課税所得がプラスになるケースがあるため、税務上の所得を正確に計算する必要があります。
Q2. 赤字でも払わなければならない税金はありますか?
あります。法人住民税の均等割(最低年間約7万円)は赤字でも必ず発生します。消費税も免税事業者を除き赤字に関係なく納付義務があります。
資本金1億円超の法人は外形標準課税(付加価値割・資本割)も赤字で発生します。
Q3. 会計上は赤字でも法人税がかかることはありますか?
あります。交際費の損金不算入、減価償却の超過額、役員給与の損金不算入などにより、会計上は赤字でも税務上の課税所得がプラスになるケースがあります。
法人税の免除は会計上ではなく「税務上の赤字」で判断されます。
Q4. 赤字の欠損金は何年間繰り越せますか?
最大10年間です。青色申告の法人が赤字の事業年度に確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出し続けることが要件です。
中小法人は所得の全額まで控除可能、大法人は所得の50%が控除限度です。
Q5. 繰り戻し還付で前期の法人税を取り戻せますか?
取り戻せます。前期が黒字で法人税を納付しており、当期が赤字の場合、「前期の法人税額×(当期の欠損金額÷前期の所得金額)」の計算式で還付金を受け取れます。
青色申告の中小法人等が対象で、確定申告と同時に還付請求書を提出する必要があります。
まとめ|赤字でも「均等割」と「消費税」は発生する。繰越控除・繰り戻し還付で赤字を最大限活用する
赤字決算の場合、法人税はゼロになりますが、法人住民税の均等割と消費税は赤字に関係なく発生します。また、会計上の赤字と税務上の赤字は異なるため、損金不算入項目の有無を必ず確認してください。
最後に、赤字決算時の行動指針を整理します。
1. 赤字でも確定申告は必ず行う
欠損金の繰越控除を適用するためには、赤字の年も確定申告が必須です。申告を怠ると将来の節税メリットを失うだけでなく、青色申告の取消しリスクもあります。
2. 繰越控除と繰り戻し還付を最大限活用する
手元資金が不足している場合は繰り戻し還付で前期の法人税を取り戻し、将来に高い利益が見込まれる場合は繰越控除で将来の法人税を圧縮してください。両方を組み合わせることも可能です。
3. 均等割と消費税の資金を確保しておく
赤字でも均等割(最低年間約7万円)と消費税は納付義務があります。資金繰りが厳しい中でもこれらの納税資金は事前に確保しておいてください。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。税制は毎年改正される可能性があるため、具体的な税務判断にあたっては最新の情報を確認し、税理士にご相談ください。



